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第8話/決意を新たに

 何度目かの決心をして立ち上がると、イオスとグリムも一緒に立ち上がる。

「もう一回、行く?」

「ああ、そうしよう!」

 グリムの尻尾が嬉しそうにフサフサと揺れ、ケモ耳がピンと立ち上がる。

 今まで虫のことで頭がいっぱいだったが、ようやく仲間の様子を見ることもできるようになってきた。

 相変わらずイケメンみたいな顔をした頼もしいイオスが焚き火を消し、木に立てかけていた盾を拾う。

「今回も無理はせず、確実に行こう」

「うん!!」

 僕のせいでかなり遅いペースでの攻略になっているのだが、二人は一度も文句を言うことなく、当たり前のようにサッと前に歩み出た。

 

 小型の盾とショートソードを装備したイオスは盾役であるタンク兼アタッカー。手脚を獣化して戦うグリムは前衛アタッカー。僕は後衛アタッカー兼ヒーラーだ。

 少人数のパーティーとしては割と理想的な組み合わせだと思う。

 探索を始める前は調子に乗って魔法剣士に憧れたりもしていたが、今では絶対に無理だと分かる。

 後ろの方から魔法を打つのですら辛いのに、剣で叩き切るなんて絶対に考えられない。

 そして魔法剣士はイオスと若干被ってしまうのだ。

 半魔族で半獣人のイオスは多少の魔法とバフが使える。虫と相性がいい炎を剣にエンチャントしてはぶった斬っている姿を見ると、隣で同じことをしたところで足手纏いにしかならないだろう。

 結局あらゆる意味で僕には魔術しかないのだ。


「フィールドサーチ」

 心配しすぎだと言われつつも、ダンジョンに踏み込んだ瞬間に反射的にサーチを唱えてしまう。

 入り口付近は先ほど片付けたから生体反応はないが、少し奥に行けばポツポツと反応がある。

「右の道の方がモンスターが少ないけど、道が狭いから左の道にしようかな」

「はーい」

 最初のうちは数が少ない方を優先して選んだせいで、虫の体液を浴びたり手脚が飛んできたり等大変な目に合った。

 なので多少数が多かろうが、少しでも広い道を選ぶのが正解なのだ。


「アースアント3匹、グリーンキャタピラー1匹」

「分かった」

「はーい!」

 こちらに気付いたのか雄叫びを上げながら襲いかかってくる虫達の足元に杖を向ける。

「アーススラッジ」

 一瞬で泥沼と化した地面に足を取られ、虫達の足が止まる。

「エンチャント・フレイム」

 ショートソードに炎を纏わせ、イオスがアースアントの首を切り上げる。そのままの勢いで隣にいたアースアントの首を切り落とし、打ち上げるようにして三匹目の首も叩き切る。

 その横でグリムがグリーンキャタピラーの顔にザクザクと何度も何度も大きな爪痕を刻みこむ。

「もう死んでいるぞ」

 ピエエエエ、と最後の声を上げた芋虫がごろりと地面に転がり、イオスに止められたグリムはつまらなさそうに爪を引っ込めた。

「じゃー解体しよ、解体!」

 腰に取り付けたナイフを取り出すと、グリムは嬉々としてグリーンキャタピラーの胴体に突き刺した。

 大体のモンスターの魔石は心臓の中にあるのだが、虫の臓器はどうなっているのかよく分からない。

 野生の勘というものでもあるのか、グリムだけはどの虫でも一発で魔石を掘り当てることができるのだが。僕とイオスはなかなか見つけられずに臓腑をほじくることになる。

 相変わらず生臭さと腐ったような湿った土の匂いには慣れないが、もうそろそろ鼻から息を吸うのをやめて無心で対処することができるようになってきていた。


 モンスターの体内から小さな魔石を取り出すと、遺体を道の端に避け、さらに奥へと進んでいく。

 この階層のモンスターにも慣れてきたし、もうそろそろダンジョンコアを探したい。

 まだ出来立ての小さいダンジョンなので、下への階層もなくボスもそこまで強くないだろう。というのが元ダンジョンマスターである母の見立てだった。

「フィールドサーチ」

 ダンジョンに入ってから何度目かのサーチを行うと、ついに不自然な扉らしきものを発見した。

「うう……」

 これさえ終われば一旦街に戻ってゆっくり休むことも許される。

 しかし今のところ虫系のモンスターしか出て来ていないダンジョンのボスといえば、十中八九デカすぎる虫だろう。

 今までのモンスターは辛うじて見慣れたとはいえ、新たなデカい虫をお出しされたら自分がどうなってしまうのか、想像もつかない。

「ボス部屋の扉を見つけたかも……」

 ボソリと呟くと、グリムとイオスの瞳がギラリと光る。

 もうすでに想像だけで吐きそうになってる僕をよそに、二人の歩調が早まる。


「この先でいいのか? どこか休憩できるところを見つけて一旦準備を整えなくてはな」

「扉の前がちょうどいい広さになってるかも」

「そうか、それならそこで一旦休憩にしよう」

 気合に満ちた二人の後に続いて扉の前までなんとか重い足を引きずり、少し開けた場所に腰を下ろした。

 早速鞘から剣を抜き手入れを始めたイオスの真似をして、グリムも爪の手入れをしだす。

 僕はといえば、いざというときに使うためのマジックアイテムやスクロールをチェックする。

 使い捨ての割にかなり高価なアイテムではあるのだが、命には変えられない。

 金銭的な意味で探索しに来た意味がなくなってしまうとしても、これで煙幕を焚いたり回復したりしてでも命を繋ぐのだ。

 緊張を和らげるために飴を口に放り込み、何が出て来てもいいようにイメージトレーニングをする。

 魔力には余裕があるし、今更デカいだけの虫に遅れをとることはないだろう。

 イオスとグリムの準備が終わったのを見計らい、震えそうになりながら声をかける。

「そろそろボスに挑もうか」

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