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第29話/エンチャント

「……デッドリーポイズン。あ、ファイアボール」

 二人が派手な立ち回りをしている隙に、ユーツがいつもの呪文を唱える。が、毒属性のクイーンスラッジスパイダーの糸には毒が効かず、慌てて炎属性の呪文を唱えた。

「ファイアボール。……ヒィッ!?」

 こっそりとけい留系を焼いているのがバレて、ユーツの元にも次々とヘドロ状の毒が飛んでくる。

 べちゃべちゃと地面に重たい毒が撒き散らされ、グリムは踊るようなステップでクイーンから距離を取った。

「炎属性そんなに得意じゃないから、離れるとキツいかも」

「えー?」

 そうは言われても毒のせいで近寄れず、グリムは困ったように大広間を走り回る。

「……あ! アースフォール、アースフォール、アースフォール!」

 ようやく存在を思い出したように作り出した土壁の後ろに隠れ、グリムがふうふうと苦しそうに息を吐きながらユーツを降ろす。

「ごめん、ありがとう」

 グリムは体からは考えられないほどのパワーがあるものの、持久力はそんなに高くない。

「いいよ、約束したもん」

 ふう、と大きく息を吐き、グリムは再びユーツを抱き上げてその場を飛び退く。

 その瞬間バチャバチャとクイーンの毒が降り注ぐ。

「何個か壁を作るから、隠れて休憩しながら移動しよう」

「うんっ!」



「よそ見とは随分と余裕そうだ!」

 ユーツ達に向けてヘドロ状の毒を飛ばしているクイーンにギルバートが大楯ごと体当たりを食らわせ、怯んだ隙にイオスが体重を乗せて脚に切り掛かる。


 ギイイイイ!!


 三本目の脚を切り落とされたクイーンはバランスを崩したようにフラつくと、糸を飛ばして巣の上へと戻った。

 土壁の後ろからユーツ達がちまちまとけい留糸を焼いていたおかげで巣はかなり小さくなっており、クイーンは慌てて糸を張り直す。

「そんなことさせるわけないでしょ。ファイアボール!」

「よそ見をするな! ホーリーライト!」

 新たな糸をユーツが焼き払い、視線をそちらへ向けたクイーンの目にギルバートが圧縮した光線状の光を飛ばす。

「ええ? ライト系の魔法ってあんな使い方もできるんだ……」


 ギィイイイイ!!! と凄まじい声を上げながらクイーンがのたうち回り、巣から転がり落ちる。

 落下してくるのを下で待ち受けていたイオスが両手で剣を持ち、眉間を狙って切り上げる。

 そのまま後ろに下がって盾を持ち直したイオスと入れ替わるようにギルバートが飛び上がり、両手で握ったショートソードを眉間の傷口に向けて勢いよく振り下ろした。


 ドズン!! と鈍い音を立てて食い込んだ剣は顔を半分にぶった斬ったものの、クイーンはそれでも止まらない。

 狂ったように頭を振り回してギルバートを振り払い、残った脚で叩き潰すように地面を乱打する。


「兄さん!! カオスカース!!」

 大型には効き目が悪いと分かっていたのでいつもよりも魔力を込めて呪文を唱える。

 案の定完全に動きを止めることは出来なかったものの、一瞬できた隙をついてイオスがギルバートを引き摺り出す。

「アーススラッジ! アーススラッジ! アーススラッジ!」

 視界が回復する前に地面を泥沼に変え、クイーンが二人を追えないように足止めする。

「うわ!!」

 泥濘に脚を取られてもがきつつも声を頼りに毒を撒き散らされ、グリムと共に慌てて土壁に隠れる。

「やばいやばいやばい、どうしよう。何かしら攻撃し続けて気を引かないと……!」

「殴る?」

「殴らないよ! ええっと、アースフォール! ウォーターフォール!」

 念のため盾を構えながら土壁から飛び出し、呪文を唱える。

 ギルバート達との間に土壁を作り、クイーンを押し潰すように水の滝をぶつける。

 もちろんそんなもので倒せるとは思えないが、地面の泥沼に水分が増えてクイーンが脚を滑らせた。

 バシャンッ!! と泥沼に倒れつつも、クイーンはユーツの方を目掛けて毒を飛ばしてくる。

「ギャッ!!」

 慌てて隠れようとしたものの間に合わず、盾にヘドロ毒を受けたユーツが吹き飛ばされる。

「ユーツ!!」

 慌てて土壁から飛び出したグリムがユーツを拾い、別の土壁へと走り出す。

 ようやく視界が回復してきたクイーンが必死でユーツ達を狙ってる背後で、ポツリと呪文が唱えられた。


「……エンチャント・ホーリー」


 剣に付与していた炎を聖属性に塗り替え、イオスが土壁から飛び上がる。


 慌てて振り向いたクイーンの眉間に深々とショートソードが突き刺さり、勢い良く紫色の体液が吹き出た。

 原液の毒を浴びつつもイオスは剣を手放さず、さらに体重を乗せてずぶりと根元まで突き刺す。

 途端にビクンとクイーンの体が震え、バシャンと大きな水飛沫を上げながらその場にひっくり返った。


「やった……?」

 グリムが土壁からひょこりと顔を出し、ユーツに確認する。

「やった、と、思う……!」

 急いで解毒と回復はしたものの、体中が痛くて立っているだけで精一杯のユーツが何度も頷く。

「やった、な……」

「あ!!」

 今まで必死に剣を握っていたイオスがふっと声を漏らすと同時に意識を失い、そのままクイーンの体液で紫色に染まった毒沼にバシャリと落下する。

「うわー!! まずいまずいまずい!! ヒール!! いや、解毒もしなきゃだっけ!? あ、兄さんもまずいかも!!」

「ど、どっちから助けるの!?」

 混乱しながら魔法を唱えているユーツに釣られて、グリムも慌てながらイオスを毒沼から引き摺り出す。

「ええ!? どっちって、えーーーっと、まずは洗浄魔法からかも!?」

 気付けば毒状態に陥っている三人にさらにパニックを起こしたユーツはとりあえず解毒魔法と回復魔法を乱打したのだった。


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