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第28話/ダンスパーティー

 地下一階に入って以降、蜘蛛型モンスターの割合が増えてきた。

 その割には幼体に近い小さな個体も多く、ユーツの足取りはどんどんと重くなっていった。

「これって確実にボスは蜘蛛型モンスターだよね……」

「おそらくそうだろうね。クイーンスラッジスパイダーかクイーンパラライズスパイダーかのどちらかだろう。さすがに地下一階ならば両方ということはないはずだが」

「うええ……」

 余計なフラグを立てないでくれ……と叫びそうになるが、ユーツはなんとか言葉を飲み込んだ。

 そんな冗談で笑える段階はとうに過ぎた。

 通路を先に進むに連れて、心なしか天井に張られた蜘蛛の巣が増えていく。

 サーチをするまでもなく進む道が見えている状態はまるで蜘蛛の巣に誘い込まれているようで、四人の緊張感が高まっていく。

「聖属性で毒を無効にするよりも、炎属性で焼き切る方が有効かもしれないな」

 地下一階ならそこまで警戒することもないと思っていただけに、ギルバートが悔しそうに呟く。

「かと言って炎魔法使ったら全部燃えそうだよね……」

「室内だし、あまり良くはないだろうな」

 ボス部屋に入るなりユーツの最大火力で焼き尽くしてしまいたくなってしまうが、もしも部屋が燃えてしまったら奥にあるはずのダンジョンコアには辿り着けなくなってしまう。その場合は結局ボス部屋が再生するまで待つことになるが、そのときには当然新しいボスが鎮座しているだろう。


「諦めたまえ、ダンジョンとはそういうものなのだ。結局は大人しく正攻法で挑むしかない」

「大丈夫だよ、ユーツのことはグリムが守ってあげるから」

「……あはは、ありがとう。でも大丈夫だよ、今回は僕にも盾があるしね」

 完全にお守りと化している盾を掲げながら、ユーツはグリムの頭を撫でる。

「グリムだけではなく私もギルバートもいるし、残念だがユーツの盾の出番はないだろうな」

「そうだといいな」

 自分で言っていて嫌なフラグを立ててしまったなと思いながら、ユーツは手が震えないように盾をしっかりと握り締める。

「カオスカース!」

 天井を無音で這ってきた小さな蜘蛛型モンスターに向けてユーツが反射的に呪文を唱えた。

「エンチャント・フレイム」

 びくりと体を硬直させて落下してきたスラッジスパイダーの幼体をイオスの剣が薙ぎ払う。

 照らされた天井にはうじゃうじゃと幼体がひしめいていたが、炎を恐れたのかギイギイと声を上げながら波のように引いていった。


「いよいよって感じだね……」

「思ったよりもこの階は狭かったな」

「まだ出来てからそう経っていないからね」

 扉を覆い尽くしていた蜘蛛の巣をイオスが剣で焼き切ると、紫色の扉が見えてくる。

「準備はいいか?」

「す、少し待って……」

 バクバクとうるさい心臓を落ち着けるように、ユーツが全身を使ってゆっくりと深呼吸する。

「ふっ……」

 マイペースな弟に笑みをこぼしたギルバートに釣られて、イオスとグリムも少しだけ緊張が解れる。

「今のうちに付与しておこう。……エンチャント・フレイム」

 ショートソードを握るギルバートの右手の甲に同じくショートソードを握った自分の右手を当て、イオスが呪文を唱える。

「なるほど、その手があったか。では私は盾に付与しよう。エンチャント・ホーリー」

 今度はギルバートの方からイオスの盾に自分の盾を当て、呪文を唱える。

「準備はいいか、ユーツ」

 若干血の気が失せた表情で頷いた弟に頷きを返し、ギルバートは剣を握り締めながら扉を押し開いた。



 扉の先は実家にある大広間とあまりにもそっくりで、ユーツは引き攣った笑みを浮かべた。

「来るぞ!」

 ボワ、ボッ、ボッ、と音を立てて部屋の明かりが次々と点っていく。

「うわうわうわうわ……」

 薄暗くて見えにくいが大広間の天井は大きな蜘蛛の巣で完全に覆われており、そこには巨大な蜘蛛が逆さに張り付いていた。うっすらと紫がかった黒い体に、背中から尻へ向けて入っている白い模様。

「クイーンスラッジスパイダーだったか……」

 ギルバートがそう呟くとほぼ同時、こちらの姿が明かりに照らされた瞬間に、ものすごい速さでヘドロ状の毒を吐いてくる。


「うわッ!」

 二手に分かれたイオス達とは別方向に、宣言通りグリムがユーツを抱きかかえて飛び退いた。

「ちゃんと掴まってて」

 幼女に抱きかかえられるのは自分でもどうかと思ったが、自分一人では避けられる気がせずユーツは無言でしがみつく。


 大楯を構えたギルバートがクイーンスラッジスパイダーを挑発するようにショートソードで盾を叩いて音を鳴らす。

「ほら、敵はここだ! かかってきたまえ!」

 挑発されたクイーンはギイイイイ!! と大きな叫び声を上げながらギルバートに襲いかかる。

 ガツン!! と大きな音を立ててぶつかってきたクイーンをいなし、大楯の横から脚を切り付ける。

 その隙に周囲を観察していたイオスが、蜘蛛の巣を部屋に張るための要である「けい留糸」を一本ぶつりと切り落とす。

 途端に巣のバランスが崩れ、怒り狂ったクイーンが奇声を上げながらぐるりと方向を変えてイオスへと飛び掛かった。

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