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第13話/初めての一角兎狩り

 狩りをする上で、イオスは若干の不安を抱えていた。

 またユーツが嘔吐をしまくって戦闘不能になってしまうのではないかと。

 何も考えていないグリムのおかげでパーティーの雰囲気は悪くないが、ユーツもそれなりに緊張しているように見える。

「今回は一角兎の駆除だ。かなり素早い相手だが、私やグリムならなんとか相手をすることができるだろう」

「そんな状態で魔法を放って味方に当たったらどうしようもないから、僕は今回罠に徹する。追い込まれた先に泥沼を設置して、呪いで動きを止めているうちにグリム達にトドメを刺してもらう……。って感じでいいかな」

「いーーーよーーー!」

 故郷にいた頃はこうやって狩りをして食物を得ていたらしい二人はやる気満々だった。それと同時にユーツも虫モンスターよりは兎の方が絶対にマシだと決めつけ、珍しくやる気を出していた。


 まずはグリムが気配を殺し、斥候としてサッと森の中へと消えてゆく。

 しばらくして戻ってきたグリムは、二人に静かにするように唇の前でシィーと指を立て、姿勢を低くする。

「結構近くにいたし、一つの群れにはもうこっちを若干警戒されてるっぽい。そっちだけ誘き出すのがいいかも」

「フィールドサーチ」

 ユーツは念のためサーチをかけ、グリムの報告に付け足しをする。

「近くにいる群れは三匹。親子連れかな? もう少し離れたところに七匹。そっちはこっちに気付いてないかも」

「それではグリムを警戒している方の親子連れから片付けていくか」

 納品数、もとい駆除数は5だが、もちろんそれを越えても魔石は受け取ってもらえるし監禁してもらえる。

 お財布的に出来れば全部仕留めておきたいイオスは、二人にそっと目配せをする。

「この三匹はなるべく静かに始末したいので、少し戦法を変えよう」

「分かった」

 草むらからそっと獲物の方を覗き見ると、警戒しているのは一角兎の親だけで、子供は呑気に草を食べていた。

「うーん、こんなかわいいのにモンスターなんだもんなぁ…」

 多少目つきが鋭く頭には人間の骨すら砕きかねない立派な角が付いてるとはいえ。兎というだけあってふわふわでかわいらしい。

 表情が弛んだユーツに呆れるように腕を小突き、イオスは合図を送った。

「はいはい。カオスカース、カオスカース、カオスカース」

 ユーツの持つ禍々しい杖から禍々しい黒い光が風に乗る砂粒のように現れ、一角兎の親子の動きを止める。

 ここで毒殺するのが得意のパターンではあるのだが、一角兎の肉や毛皮を汚染させるわけにはいかない。

 モンスターが声を上げられないのを確認したイオスとグリムは、サッと近寄ると一角兎達の首をキュッと締め上げ、ボキリと首の骨を折った。

「うわっ……」

 反射でバダバダバダと手脚が痙攣するが、それもすぐに収まり、だらりと体が弛緩した。


「出来ればこのまま血抜きといきたいが、近くにいる群れを逃すのも勿体無い。そちらも駆除してから処理をしよう」

 珍しく積極的なイオスに従い、一角兎の死体を一旦茂みに隠す。

「相手は七匹もいるとなれば、おそらく逃げずに追いかけてくるだろう。そこで今度こそユーツの罠の出番だな」

「上手くいけばいいけど、少し数が多いのがどう出るかだな」

 もちろん相手も馬鹿ではないので見え見えの罠には飛び込んでくれないだろう。

 なるべく背の高い草で隠して泥沼を設置する予定だが、それでも確実とはいえない。

 念のため重要な臓器を守るためにユーツも腹部と腕に革鎧を着けているが、それで一角兎の攻撃に耐えられるかというと微妙なところのだが。体力的に鉄の重い鎧を身につけて動くことはできないため、苦肉の策だった。

 二手に分かれてそっと一角兎達を追い込みに行ったイオス達を見送り、背の高い草に隠れるように泥沼を敷く。

「アーススラッジ」

 じっくりと魔力を込めて大きな泥沼を作り、体を屈めて草むらに隠れる。

 姿を見られたら警戒して方向転換されてしまうかもしれない。

 身を隠してすぐに、ダンダンと大きく地面を踏み荒らす音や、ヴァッ、ヴゥッ、と警戒する一角兎の声が聞こえてきた。

 二人に追い込まれて草むらから飛び出してきた一角兎達は、身を隠すためにさらに背の高い草むら、もとい泥沼の中にボチャボチャとハマっていく。

「カオスカース、カオスカース、カオスカース……」

 念のため動けないように呪いをかけていると、後ろから追いついてきた二人の手が伸びて来て一角兎達を素早く絞めた。

「もしも道をそれた一角兎が出たらどうしようかと心配していたが、大丈夫そうだな」

 追い込んできた一角兎の数を数え、イオスは安心したように肩の力を抜いた。

「さて、先程隠した三匹も一緒に川の近くで血抜きをしよう」

「はぁーい!」

 ロープで後ろ足を縛った一角兎の死体を木に吊るし、毛並みに沿って解体用の小型ナイフで頸動脈に切れ目を入れる。

「血の匂いでモンスターが寄ってこないか、気をつけながら作業するんだぞ」

「はい……。フィールドサーチ……」

 すでに大量の血を目にして気分が悪くなっているユーツは、吐き気を堪えながら集中する。

「今のところは大丈夫そうかな」

「そうか。ここからが少し大変だが、ユーツも覚えておく必要があるだろう」

「そうだよね……」

 これから探索者として生きていく以上、モンスターくらい捌けなくては話にならない。

 最悪でも食料の自給自足や保存食の確保ができれば、それだけで何日か過ごすことができるのだ。

よろしければ評価・感想等いただけるとものすごく嬉しいです!!

更新時間に悩んでいます。朝6時か夜12時辺りが良さそう…?

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