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第12話/上位ランクの初心者

 小さなダンジョンのそばにあった田舎のギルドの民度は酷いものだった。

 母の名前すら知らないチンピラの探索者達が常にたむろしており、毎日のようにからかいを受けていた。

 泣き腫らした顔でげっそりしているユーツや生真面目なイオス、まだ子供のグリムに至るまでくだらない言葉を毎日掛けられた。

 そんな奴らからのヤジを受け流しながら、ギルドのカウンターに破壊したダンジョンコアを置いた瞬間は忘れられない。

 暇そうに騒いでいた探索者達が一瞬で静まり返り、視線がダンジョンコアへと集まる。

 そしてギルドの職員がダンジョンコアを確認し、懸賞金を机にドサリと置いてからはもう誰もユーツ達にヤジを飛ばすことはなかった。


 ルーキーであるブロンズランクの探索者が三人でダンジョンを踏破するというのは、なかなか出来ることではないらしく。

 本来は薬草取りなどの簡単な採取で経験を積み、人里周辺に出没する程度の野生のモンスターを余裕で狩れるようになってようやく低層のダンジョンに挑むかどうかを考え始めるものらしい。

 ユーツ達が挑んだのはまだ出来てそんなに日が経っていないような比較的小さなダンジョンではあったのだが。本来は逆にそういう未知のダンジョンこそ初心者が挑むものではないとされている。

 と、別室で微妙そうな表情をしたギルド職員から説明を受けながら、ユーツ達は下位のブロンズランクの探索者から上位のシルバーランクへと昇格したのだった。



 そして数日後、ようやく体調が万全になったユーツ達は、依頼をこなす前に装備や持ち物の見直しをすることにした。

「そうは言っても、私達の装備はヴィオレッタ様と共に見繕ったものだし、整備に出すだけで十分なのではないか?」

「言われてみればそうかも……」

 ユーツが寝込んでいる間に防具や武器をまとめて鍛冶屋に預けていたイオスは、予備の剣に触れながら苦笑いする。

「まだ探索者になったばかりだし、最初のうちはなるべく堅実にやっていこう」

「うっ、ま、まあそうだよね……」

 体調を崩して寝込んでしまったユーツは罪悪感で苦しくなりながら返事を搾り出す。

 それに今までは実家暮らしだから気にしたことはなかったが、グリムは体型からは考えられないくらいの大食いだったのだ。

 食の細いユーツの三倍は確実に食べている。

 イオスの鎧や剣などの装備も初心者が使用するにはかなり良いものを選んでもらったので、修繕費もそれなりに良いお値段になっていた。

 今のところ普通の金銭感覚を持ち合わせているのがイオスだけなので二人はのんびり構えているが、パーティーのお財布は思いの外薄くなりつつあった。

「装備はしばらくこのままでいいが、持ち物はもう少し考えてもいいかもしれないな。万が一があるかもしれないし、保存食の備蓄はもう少し増やしておくべきだ」

「最後の方野草とかまで食べてたもんね……」

 思った以上に探索が長引いたせいでもあるのだが、イオスは優しいのでそこには触れない。

「もう少し調理に関する知識があれば幅も広がるのだろうが、それはもっと余裕のあるときだな」

「僕も少しは勉強します……」

「それはそれで助かるが、ユーツはユーツにしかできないことがあるから無理はしなくてもいいんだぞ」

「いや、それだとイオスが動けないときに詰んじゃうから」

「それもそうか」

 まだ小さいグリムがいる以上、ユーツもある程度は面倒を見れるようになっておくに越したことはない。

 と言ってもまだ先の話ではあるのが。


「そろそろ装備品の修繕も出来ているだろうし、簡単な採取や狩猟であれば日帰りできるし問題ないだろう。しばらくはそういうのを受けてみようか」

「そうだな。グリムも張り切っていたしな」

「ああ、一角兎だな。虫と違って綺麗な状態で狩猟できれば値は上がる。すばしっこくて動きが早いのだけが難点だが、ユーツの呪いの魔法とは相性がいいだろうな」

「泥沼にドボンで呪いなら多分肉質にも問題は出なさそうだし、結構いいかも」



 翌日、装備一式を受け取り改めて準備万端になったユーツ達は、揃ってギルドへと繰り出した。

「一角兎の駆除……。五匹か。囲まれなければ余裕だろう。これにするか?」

 掲示板に張り出された依頼を一通り眺めたイオスの選択に、ユーツとグリムは一も二もなく頷いた。

 正直報奨金は大したことはないのだが、討伐した証の魔石を提出してしまっても一角兎の体にはまだまだ価値がある。

 綺麗に血抜きをして皮を剥ぎ毛皮は鞣して、肉はそのまま焼いて食べるなり干して保存食にするなりして利用することもできる。

 それに角を無傷で手に入れることができれば、加工品としてそれなりに売れる。

 そんなお得なモンスターが全滅していないのは、繁殖力の高さもあるが、単純に手強いからであった。

 グリム達は獣人族であり狩りの獲物としてメジャーだったからこそ余裕な態度だが、一角兎に脚を突かれた隙に取り逃してしまう探索者はかなり多い。

 特にユーツのような機動力のない魔術士とは相性が良くない。

 魔術士が一角兎のような素早いモンスターに挑むには、グリム達のような素早い種族の力を借りるか、入念に罠を張るかしかないのだ。

 このパーティーであればユーツが罠を張り、二人でそこへ一角兎を追い込むようなやり方が一番合っている。

 もちろん三人はその方法で挑むべく、しっかりと準備をしてきた。

 掲示板に貼られた依頼書を手に取り、初めての公募依頼に挑戦することにした。

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