08 4人で笑おうぜ!
ソラの仕事と言えば…
その頃、ソラとキラリンの家では、こんな言い争いが勃発していた。
「ねぇソラ。最近、残業増えてない?大丈夫?」
「あぁ、ここのところ立て続けに退職希望者が出て、
人手不足なんだよ。
忙しくて、家の事はキララに任せっきりだよな。
ごめんな。まだキティも小さいのに。」
「まぁ、家の方は何とかなってるけど…
あのね?怒らないで聞いて欲しいんだけど…
ソラも転職したらどうかな?まだ若いし、仕事は他にも
たくさんあるでしょ?」
「え?今、人手不足って言ったの、聞こえてなかった?
これ以上人が減ったら、出動に支障をきたすレベルなんだよ。
それがどういうことか…人の命に関わるかも?って知ってるよね?
それに、消防士は俺の天職なんだ。」
「でも!人手不足で残業って…!それこそ消防士は命懸けの仕事なんでしょ?
ソラに何かあったら、どうするのよ?
それに…世の中もっと楽して稼いでいる人もいるんだよ?」
「なぁ…楽してって…それ、もしかして“ニコ活”ってこと?俺の仕事だと、加点がないから転職をすすめてんの???」
「…ウチはっ!今仕事に行けないし…
だから“ニコ活”を頑張ってる。色々工夫して、加点を増やして、貰った“マイカポイント”を生活費に充ててるんだよ。
ウチらのマイホームの夢のために、そうしてんの。
コスモと二人分でもそれなりに収入になって…」
「コスモ?まさかコスモにも“ニコ活”させてるの?まだ子供なのに?」
「だって!子供の方が周りの反応がいいって、テレビの特集でやってたし。
実際ウチとコスモだと、コスモの方が加点ポイントが全然高いのよ?」
「キララ!!!
“ニコ活”のためにコスモに笑顔を作らせるって…
それは自然な感情をねじ曲げてるのと変わらないよ?
まだ分別のつかない子供に、周りの空気を読め!感情に蓋をしろ!って言ってるようなものだ。
キララはコスモが大人の顔色をうかがう子供にしたいの?そうじゃないだろう?」
「ウチはただ…コスモは体がそんなに丈夫じゃなかったから、保育園に預けて働くとかもできなかったし…
頼れる人、ソラしかいないし。
コスモと2人、家にばっかり居て…それは嫌ではないけど、キティも生まれて…
ウチでも出来ることなんかないかなって…
ソラは忙しいし、心配だし、だから、だから…」
「キララ…」
カラランコロロン…
「あぶぶぶぅ〜」
「ん?あぁ、キティ、おっきしたのか。ご機嫌だな。」
「あ…そろそろミルクの時間だわ…
準備しないと…」
「あ、いや…ちょっと待って!
キララ、こっちきて。静かに、そーっと。」
「え…?なに…??」
見るとキティは、ベビージムに付いている人形を短いあんよで蹴飛ばして、音を出していた。
そして音がでると満足そうにバタバタして…
「あぶぶぅ〜」って声を出して……笑った。
「「なにこれ!超エモい…!!!」」
「ソラ…ごめん…。
コスモにも、こーゆう時があったよね。
嬉しくて尊くて…毎日めっちゃ幸せで!」
「そうだな。ほんの2年前なのに、毎日の生活に追われてて、忘れてたな。
キララ!俺の方こそごめん!!!
でも“ニコ活”はもう…」
「しないよ。約束する!ウチらの可愛いコスモとキティの笑顔は、むやみに見せびらかさない!
まぁ、見せても減らないけどさ?もったいないもん!
それに、2人には、いつも笑ってて欲しいよ。」
「ん?2人だけか??
どうせならさ、家族4人で笑おうぜ!」