29 ケンゴの覚悟
季節は短い秋をぴょんっ!と飛び越え、冬となった。あと数日経ったら、街はクリスマス一色の装いになる。
今からちょっと楽しみだ。
シブヤ駅前の巨大ビジョンでは、政府広報の動画が連日流されている。
その内容は『スマイル独占禁止法』廃止の宣言と、今後の補償の流れについて……だった。
【『スマイル独占禁止法』は12月〇〇日をもちまして完全廃止となります……】
動画の中では、フサフサだった黒髪を丸刈りにした首相自ら、平身低頭の体で謝罪の言葉を述べていた。
「ちょ!ケンゴ、なんで丸刈り?
つーか、これ、スキンヘッドじゃん!!イメチェン?
ヤバっ!何度観てもウケるんだけどwww」
「あぁ、あれは、土下座とかと同じで、ショーワ時代の反省を表す儀式らしいよ?
ネットニュースでやってた。」
「ふぅん……ケンゴ、反省してるんだ?!
でもさ、整形しちゃった人とか、仕事を辞めちゃった人の補償……だっけ?それはどうなるの?
ケンゴが自腹で払うの?」
「ぷっ!そんなことしたら、首相、破産しちゃうじゃん!
それはちゃんと国がやるってさ。」
「あはは!そうなんだ!ケンゴ良かったねぇ。
自慢の髪もお金も無くなったら、ちょっと立ち直れないもんね〜!」
「えっとね……
国が、元の顔に手術をし直したい人には、全額無料で再手術をするってさ。
あと、“ニコ法”が理由で離職や転職をした人に関しては、再雇用の受け入れ相談窓口ができたって。」
「へぇ〜ちゃんと考えてるんだねー
そういえば、ソラの職場も人が戻ってきてるよ〜って、
キラリンからLimeきてたわ!」
「マジか!それは良かったな。キラリンも一安心だろ。
あ〜そうそう、あとはね……
生活困難から“ニコ活”をしていた人も多かったって、今回のことで判明したから、社会保障制度の大幅見直しをするって言ってるよ。」
【私は、自らの失敗を糧に、今後は、国民の皆様のお声をしっかり聞いて、全ての国民が幸せになれる社会を作ることをお約束します!
どうか、皆様の忌憚なきご意見を、こちらの方にお寄せ下さい!】
ケンゴ、もとい首相は、そう言うと深々とツルピカの頭を下げた。
そしてその画面の下の方には……
【『首相に一言!』のメールアドレス、Lime ID、
XXアカウント、住所、電話番号とFAX番号】
などが表示されていた。
この『首相に一言!』は、新しく設置された首相直轄の機関の名前だ。
「ケンゴ、頑張ってるねぇ。」
「そうだな。大人になると、過ちを認めるとか、そうそう出来るもんじゃないからな……
ましてや日ノ本の首相だし。
でもさ、首相の真摯な姿に心を打たれたのか、あれだけやらかしたのに、首相と今の内閣の支持率は爆上がりしてるんだよな。」
「そうなんだ!ケンゴ、その調子で頑張れよっ!」




