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スマイル独占禁止法なんてクソ喰らえ!  作者: 高朋(こうほう)
第一章『シブヤ事変・前日譚』
3/32

02 彼ピの笑顔はウチのモン!

ここはシブヤ。そしてウチは、ショップ店員兼インフルエンサーのギャル、アユミ。


今日もSNS用の動画を撮る為にスクランブル交差点に来たんだけど、大好きな彼ピはまだみたい。

目を向けると、巨大ビジョンに映し出されたのは政府の広報CM。


【スマイルは資源です。

独占禁止法により、特定の人物への過剰な微笑みは禁止されます。

笑顔は、みんなでシェアしよう!】


「はぁぁぁぁ?!?!?え、何?

マジ、何言っちゃってんの?

いやいやいや、無理でしょ!


ってかさ〜何よ?『過剰な微笑み』って!

全く訳わかんないし!

彼ピの笑顔はウチだけのモンって決まってんのよ?

未来永劫、地球がひっくり返っても、それは変わんないんだから。

そもそもさ、誰が、いつ、どこで笑おうが、勝手じゃん?

シェアってなによ!冗談じゃないつーの!」


思わず大声で叫んじゃった……

通りすがりの人がジロジロ見てくるけど、そんなの関係ないし!

持ってたスマホで、ソッコー彼ピに“Lime”した。


【ねね、彼ピの笑顔はウチだけのモンだよね?】

【あーうん。気持ちはそうだよ?】

【気持ちって??】

【……アユ話がある。今から俺ん家きて】


「ちょっとー!気持ちはそうって何?どーゆう事?それと話って?」


「アユ!声が大きいって!今説明するから、ちょっと落ち着いて!」


「これのどこが落ち着けんの?さっきシブヤで変なお知らせ?を見たんだよ?!


えっと……ほら見て!写メとってきた!」


「あぁ〜やっぱそれか。それは『スマイル独占禁止法』ってやつだわ。最近テレビのニュースでやってんの見てない?」


「ウチ、あんましテレビ観ないからな〜

その、『スマイルなんちゃら』って、何?」


「あぁ、それはね……」


『スマイル独占禁止法』とは……

笑顔は、国家の“共有資源”です。

個人の独占は禁止!

公共の場でバランスよくスマイルしましょう。


「これに違反すると減点される。車の運転と同じ感じ。で、累積減点ポイントが50で注意、100とかになっちゃうと罰金。悪質と見なされたら逮捕されることもあるんだって。」


彼ピが色々説明してくれたけど、正直、何言ってんだか全く訳わかんない!!


「ねね、“笑顔が共有資源”って何?

まず、そこから謎なんだけど?!

彼ピの笑顔も資源だから共有すんの?誰と?

そんなん、ぜーーーーったい嫌なんだけど!」


「ちょっ!アユ!声デカい!!あのね、この法律にはまだ続きがあるんだよ。


笑顔を独占したり、独占するために強要したら、減点。もちろんその逆もダメで、誰か一人の為に笑いかけても減点。


その代わり、加点もあるんだ。

不特定多数への笑顔や、社会全体に振りまく笑顔には加点。

これはね……例えば、アイドルのファンサの笑顔は加点対象で、選挙の立候補者が振りまく笑顔も、胡散臭いけど加点。

スーパーやコンビニとかの接客業も、みんなへ対してニコニコしてたら加点だってさ。


それと…これは、個人でも同じなんだ。

最近、あちこちで笑いながら手を振ってる人を見た事ない?シブヤには結構居ると思うけど、気が付かなかった?

あれ“ニコ活”っていって、加点ポイントを貯めてるわけ。

注目を浴びれば浴びるだけポイントが増えるから、手を振ってアピールしてんのさ。

減点がかさむと罰金があるように、加点は累積で“マイカポイント”が付与されるんだって。

国民全員が持ってる“マイカ”。アユも持ってるでしょ?

人が集まるとこで“ニコ活”すると、下手したらバイトするより効率よく稼げるって噂だよ。」


「ちょっと待ってよ……そんな……嘘でしょう?

お金のために誰彼構わずヘラヘラ笑いかけてんの?」


「まぁ、そういうことになるね。」


「信じらんないんだけど!

ウチは、意味無く笑えない!笑いたくない!

彼ピとか家族とか友人を思えば笑える。

嬉しいし、楽しいし、幸せだから。

動画の時はさ、見てくれてる人にありがとう!って思ってるから笑ってる。

笑顔の理由は他にもあるけど、全部、自然に出ちゃうものだよ?

それが普通じゃない??」


「アユの言いたいことはわかる。

“ニコ活”はね、俺も確かにやりすぎだとは思う。

でも外でそれを言っちゃダメだ!

僕らは……僕ら全国民は、“スマイル監視審査会”に監視されてるんだから。

街中にある監視カメラや、宇宙空間にある衛星のカメラから一人一人を顔認識して、表情を見てるんだ。目をつけられたら、今度はカメラじゃなく、人やドローンによる監視になるらしい。」


「は?何それ!わけわかんなーい!」


そうこうしているうちに、彼ピが仕事の時間になったので、とりあえず二人してシブヤまで戻ってきた。

彼ピの言ってた『スマイル独占禁止法』ってやつ、

最初は信じらんなかったけど……

彼ピんちの最寄り駅や電車の中にもいた!ニコニコ笑ってるヤツ。……これが噂の“ニコ活”か。

ちょ!待って?!目が合ったら手を振って笑いかけてきたんだけど!?

ヤダ、なにこれ?

元気が出るどころか、めっちゃキモいて!


笑顔が資源……??

確かにさぁ、仕事上がりでダルダルでも、彼ピの笑顔で元気チャージ!は、ある。

彼ピの笑顔はマジでヤバいからね?!ホント宇宙一優しくて、ステキで、輝いてて!

私なんか密かに“スマイル王子”って呼んでるもん!

その、貴重な、笑顔を、ウチだけじゃなく、知らない女達にばら撒けと?

代わりに“マイカポイント”をやるからいいだろ?ってことだよね??

冗談じゃないわ!

スクランブル交差点の歩行者信号が青になって、一斉に人が動き出した瞬間、思わず叫んじゃった!


「そんなのおかしいって気付けよーーー!!!」


⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆


アユから“スマ法”について聞かれた。

掻い摘んで説明したけど、まぁ、思ってた通りの反応だった。

真っ直ぐなアイツらしいな。


俺自身は“スマ法”について、今の時点ではそんなに悪くないかも?って感じてる。は

ほらさ、街中で笑顔が増えれば、犯罪とか減りそうじゃん?

それに、笑顔がお金になるんなら、貧困層とかホームレス対策とかになるかもじゃん。

実は俺、結構あちこちに笑いかけちゃうんだよね。

これはクセというか性分なんだろうな、たぶん。

飲食系の接客業ってこともあるけど。

アユはすぐ「他所の女に笑いかけんな〜!このタラシめ〜〜!」って言うけど、意図してやってないかんな?不可抗力だぜ?全く……


まぁ、でも、実はもう、俺の笑顔は収益化されてたんだよね、勝手に。アユには言えないけどさ。

ちょっといい店でアユとメシが食えるくらい、“マイカポイント”が付与されててびっくりしたわ!


アユはカリスマショップ店員で接客業だけど、

どちらかといえばクールビューティな雰囲気がウリ。そして決して媚びない!

でも時々、ショップにファンの子とかがくると、ハグして一緒にチェキとか撮ってるんだよな。

そん時のアユはホント、可愛い笑顔をしてて……

あ、これ、もしかしてヤバいやつ?

こーゆー時の笑顔は衆人環視だから、

ギリセーフ???


アユ…大丈夫かな?

めっちゃプリプリ怒りながら帰って行ったけど、なんかしでかしてないかな?


アユに限って加点とか考えらんないなー

せめて、減点は減らしたいもんだ。

もし罰金になっても、収益化された俺の“ニコ活”

で払ってやるけどさ。

逮捕されたらどーするよ?


アユ、くれぐれも気をつけろ。

どこで見られてるかわからないんだぞ。


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