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スマイル独占禁止法なんてクソ喰らえ!  作者: 高朋(こうほう)
第一章『シブヤ事変・前日譚』
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01 悩める人々

時の政府は頭を抱えていた。


ここ数年の急激な気候変動のせいで、この国の美しかった四季の移ろいは、うだるような暑い夏と激寒の冬、その間に申し訳程度に一瞬の春と秋があるだけになってしまった。

最早この国は四季と言うよりも、二季と言った方が正しいのでは?と、誰もが感じていた。


そのせいなのか、気温の急激な変化に自律神経をやられる人が激増し、人々のモチベは下がりに下がり、その結果…

国の生産性が急激に低下するという、なんともいかんしがたい負のループに陥っていたからである。


⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆


この国の首相もまた、頭を抱えていた。


私は国のトップとして、この由々しき事態をこのまま放っておくわけにはいかない!

って言うか、早急に何とかしないと首相解任も時間の問題だよ!

頑張ってるのにさ!私。


歴代最年少の首相になったのはいいけどさ。

これって、体のいい押し付けじゃないの??って、

実は密かに疑っている。


みんなやりたくないからってさーー!

こんな激ヤバな時期に、なんで若輩者の私なのさーー!


まぁ、そんなことを言っても、既に後の祭りなので、

私は私の職務を全うしなければ!!


う〜ん……

一体全体、この日ノ本の国民のモチベーションは、

どうやったら上がるのさ???

考えすぎて、私自慢のフサフサの黒髪の頭には、

10円ハゲが30円分くらいできちゃったし。


「ヤバい……詰んでるわコレ。このままじゃ、この国に未来はないじゃん!

あぁ〜もう!どうしたらいいんだよぉ!」


そんな時、傍らでつけっぱなしにしていたテレビの中から、よく通る声が聞こえてきた。


「この子の笑顔に元気を貰えるんです……!」


……ん?なんだ?なんだ?元気を貰えるだと??

こんなに小さな子供の笑顔で??


気になった私は、早速、個人的に使っているエージェントを呼び出してこう尋ねた。


「なぁ、笑顔って、そんなにパワーになるの?」


「え?あの、ニコってする、あの笑顔……ですか?

ん〜〜なるっちゃーなりますかね?

仕事終わりでクタクタの時、うちのハナちゃんの愛くるしい笑顔を見ると、疲れは吹っ飛びますね!

なんせ、ハナちゃんは激カワなんで。


あ、写真見ます???」


「いや、いい、遠慮しとくよ。お前の大事なハナちゃんは大切にしまっとけ。」


笑顔のパワーか……

おぃおい、もしかしたらこれは、すごい発見かもしれんぞ!何せ元手はタダだし!!

うん……これは正しく天啓!!

イケるっ!!


思えばこの時、あの写真を見るべきだった。

もしあれを見ていたら、こんなことには……


国中が、いつ涼しくなるんだ〜?!と残暑にうんざりし、テレビに流れる有名人の不祥事だの、アイドルの恋愛事情などに目を奪われている中、ひっそりとこの法案は可決されたのだった。


『スマイル独占禁止法』


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