11 すれ違う2人のキモチ
とりあえず駅の方に向かいながら、さっきの話の続きをする。
「アユさ〜ななっちを見てわかったっしょ?
俺はアユのポリシーを理解してるけど、外では少し自重したら?“ニコ法”は確かにやりすぎだけど、一応法律だからさ?
アユ、減点ヤバいんじゃない?」
「どうかな?まぁ、結構累積してるかも?
あ、そうだ、昨日実家にこんなの届いた〜って、ママから写メきてたわ。」
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【警告書】
アユミ 様
あなたの行動に関し、以下の違反が確認されました:
•スマイル不履行
(無表情、無愛想、微笑み拒否 など)
•スマイル独占禁止法への不敬行為
(限定的笑顔の乱用、周囲へのスマイル
未提供)
これらは、現在のスマイル共有義務に著しく反する行為と判断されます。
このまま改善が見られない場合、
罰金、懲役、もしくはその両方が科される可能性があります。
※本通知は、行政処分の前段階にあたるものです。
今後のスマイル状況により、再調査が行われる可能性があります。
スマイル監視審査会
(審査番号:S-MILE/0726)
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「ヤバっ!アユ、もう、リーチじゃん!」
「ん?そう?ウチは何にも悪いことしてないし?
再調査があるかもって書いてあるよ?
大丈夫じゃない?」
「いや…コレはまずいから!
アユさぁ〜頼むから、もう少し何とかなんない?
コレさ、罰金くらいなら、俺がなんぼでも払ってやるよ?
でもさ、懲役になったらどうすんのさ?
アユはカリスマギャルでインフルエンサーじゃん?
こーゆー時、見せしめにされる可能性大なんだよ!
ちょっとは状況、理解しろよ。」
「は?彼ピがウチの罰金を払ってくれんの?
え?どうやって?夢のためにしてた貯金から?
そんなの絶対にお断りなんだけど!!!」
「はぁ?ちげーよ!なんか知らねぇけど、“スマイルポイント”がたまってんだよ!
結構な額になってっから、それで罰金くらい何度でも払ってやるわ!」
「は?ちょっ!なに??彼ピも“ニコ活”してんの???
うっわ!ひくわぁーー
彼ピの笑顔はウチだけのモンなのよ!
そんなん、未来永劫決まってんだから!
何で振りまいちゃうかなぁ〜???
信じられないんだけど!!!」
「は?振りまいてねーし!ただ普通に生活してただけで、こーなってんの!飲食で接客もしてんだから仕方ねーだろ?
俺、知ってんだかんな?
お前が俺の事“スマイル王子”って呼んでるの。
だけど俺が“スマイル王子”になった発端はアユミ、お前だかんな?
「笑顔が素敵すぎるから」なんて、気になるオンナに言われてみろよ!
そんなんずっとヘラヘラするに決まってんだろ!
馬鹿か!お前は!!!」
「馬鹿じゃないしっ!!!
ウチは彼ピの笑顔の共有なんて絶っ対に嫌だし、
スマイルゾンビの嘘の笑顔も大っ嫌い!
罰金?逮捕?好きにすれば?
そんなんどーでもいいわ!!!
帰るっ!!!!」
「あぁ〜そうかよ!!じゃあ勝手にしろよ!!」
ここはシブヤのスクランブル交差点のど真ん中。
ウチと彼ピは互いに背を向けて歩き出した。
そんなプリプリと怒りながら歩くアユミの背後に、音もなく1機のドローンが近づいていることに、アユミたちはまだ気がついていなかった。




