VS水の神獣
ごく普通の領主の家系に生まれた魔力0の騎士ゼニス。魔力が使えない分、剣術に全振りした剣術馬鹿の普通?の騎士がひょんな事から助けた少女との運命の出逢いから様々な仲間と出逢い、世界を救うまでの幻想記。
-同時刻-
「ゼニス様!すごいとこですねー!」
「水の教会の総本山だからなぁ」
「あの大きい像がセレーネ様?」
「あぁ。そうだな。5英雄神唯一の女性だな。だからここの神殿は男子禁制になっているんだよ。」
「はぇ〜。」
「ヴェルドラ地方の神殿は?」
「そうですね…。昔はあったみたいなんですけど、今は聞かないですね」
「ん?無くなった訳では無いんだろ?確かボレアス地方にシリウス神を祀る神殿があるはずだが…」
「詳しい話は知らないけど、20年前にあったトラキア王国のシレジア王国への侵略戦争で国の滅亡と共に無くなったと言われていますよ。今は魔女が住んでるとも言われてます。元々氷雪地帯で人が住むのは難しい土地ですからね…」
「北伐戦争か…。マルスの親もその戦争で?」
「そうです。今はヴェルドラより先は人は立ち入らないエリアになってますね。」
「そうか…」
20年前の侵略戦争。それまで均衡を保っていたのに突然始まった戦争。
はっきりとした目的は分からず、教皇が北の地の資源を欲したともアーティファクトを欲したとも様々な憶測があったな。
真相は未だ闇の中…。事実として風の王国は滅亡し、荒廃した地となってしまったという事。
「イリスは無事洗礼は終わっただろうか…」
「結構時間かかりますね…!」
「どうした?」
「…風が…風が泣いてる…」
「どうゆう事だ?」
「何か招かれざる物の気配がする」
マルスの言葉を聞いて俺達は神殿の外に飛び出す。
「ゼニス様!湖の方から何か来ます!」
「マルス、俺の後ろへ!」
その瞬間、湖の中から青く巨大な大蛇が現れた!
「ギシャーーーーーー!」
「なんだ⁈ミズガルド⁈なぜこの結界の中に!」
大蛇が口からブレスを吐き、周辺の森を破壊していく。
「毒か…!」
「ひぃ…」
衛兵が腰を抜かして倒れている。
「衛兵!すぐに神官達の避難を!あとは神官長様達を呼んで来てくれ!」
「は…はひぃ!!」
「何事ですか⁈」
「叔母上!結界は?」
「機能してるわ!なぜミズガルドがの封印が?」
「内部か…封印はいつ破られたのですか?」
「今朝まではそんな異常は無かったわ」
「兄様!叔母様の話だと最近結界の力が弱まっていたらしいの。セレーネ湖のマナの力が何らかの影響で弱くなってる可能性があります」
「そのタイミングでミズガルドの封印が解けた…?」
「可能性はあるわね…」
「叔母上!今戦える戦力はどれくらいありますか?」
「今騎士団は国王の式典行事で出払ってるわ」
「何!?」
「叔母様、結界を張れる神官の数は?」
「私を入れて5人ね」
「叔母様以外の4人で結界は維持出来ますか?」
「数時間であれば大丈夫でしょう。」
「叔母様、まだ戦えますか?」
「あら。まだまだあなた達よりは戦力になるわよ?」
「分かった!ここにいる俺達で何とか食い止めるしかない!」
「神官達は神殿内の結界装置にて結界の維持を。」
マイア神官長がシスター達に指示をする。
「マルス、イリスは後方支援を頼む!アナスタシアはサポートを頼む!」
そう言って俺はミズガルドに向かって走り出す。
「リフレクション」
全員の体が淡い光に包まれる。
マイア叔母上の身体強化魔法か!有り難い!
しかしミズガルドの攻撃を交わしながら距離を詰めたい所だが、奴の攻撃が重く威力がでかい。
それに吐き出す毒の塊を避けるのでも精一杯。
「アイス」
アナスタシアが氷魔法でミズガルドの口を凍らせる。
「でかした!」
そのままの勢いで奴に斬りかかる。
ガイン!
なんて硬い鱗なんだよ!
「ウィンドアロー!」
キン!
「くそ!風魔法も効かないのか!」
マルスが叫ぶ。
「私のアイスで口を塞げるのも持って5分です!」
どこか…攻撃を与えられる場所は無いのか…
そうこうしてる間にまた毒攻撃が始まる。
「イリス!!」
俺はイリスを庇うように覆いかぶさる。
「ぐあ…!」
「ゼニス様!!」
「大…丈夫…だ。イリスは無事か…?」
「はい。申し訳ありません。今回復を!キャアヒール!」
覚えたてのキャアヒール。しかしすごい回復量だな…。
「さすがの回復量ね。初めてで…凄いわね。」
叔母上が舌を巻く。
「ありがとう!イリスは安全な所で怪我人を見てくれ!」
「はい!ゼニス様」
また再び前に出る。
どこか…どこか攻撃が通る所は…
「ウィンドアロー×3!!」
マルスが3連射撃の攻撃を放つ。
あいつ!あんな曲芸まで!
「ギャオゥゥン!」
何⁈ダメージが入った!何が起きてる?
よく見ると一本の矢が他とは違う鱗に命中している!
「そうか!白い鱗だ!そこを狙え!」
「了解!そうと決まれば…イーグルワインダー!」
マルスは精度重視で次々と白い鱗に命中させていく。
「いける!」
「プレリュード!」
「ブルクラッシュ!」
ダメージは与えられるようになったものの、致命症まではならない…
このままだとこちらが持たない。
「せめて奴の動きを止める事が出来れば…」
それを聞いて神官長が思い出したかのように話す。
「オフィーリアの竪琴…イリスなら使えるかもしれない…。」
「叔母様、オフィーリアの竪琴とは何ですか?」
「かつてミズガルドを封印した時に使用した魔導具よ。オフィーリアの竪琴の音にミズガルドは誘われて眠りに落ちたと言われているわ。神聖魔法で動くと言われている魔導具で私には使う事は出来ないの。」
「それはどこにありますか!?」
イリスが怪我人の手当てをしながら話す。
「祭壇の間の女神像の手に!」
「私、取ってきます!!」
「イリス!頼む!」
俺の問いかけに頷いてイリスは走って神殿の中に消えていった。
「さて、ここからが正念場だな…」
「兄様、弱点を攻撃するにも一定数ダメージを与えると湖に潜ってしまいます。どこか決定打になるものが…」
アナスタシアが分析をする。
「もし落とせるとしたら首かしら。そこに渾身の一撃を与える事が出来たら…」
「まずはイリスが竪琴を使える事を祈ろう。そこからは俺に作戦がある。次に奴が現れるまで…間に合ってくれ…!」
イリスの到着を祈る。