トラキアの未来
ごく普通の領主の家系に生まれた魔力0の騎士ゼニス。魔力が使えない分、剣術に全振りした剣術馬鹿の普通?の騎士がひょんな事から助けた少女との運命の出逢いから様々な仲間と出逢い、世界を救うまでの幻想記。
「みんな…無事か?」
「はい。応急処置は終わりました。命に別状はありません。」
「いてて…でも身体中が痛いっすね…。アナスタシア、大丈夫か?」
「はい。私もイリス様のお陰で動けます。」
「良かった…」
「アレス、サーシャ、そっちは大丈夫か?」
「私は大丈夫よ。アレスが私を庇って…」
「俺も問題ねーよ!」
「良かった!」
「下の神官達にも無事を伝えてこよう。」
俺は下の階に降りて神官達に無事に伝える。
そして皆んなの治療を手伝ってもらう。
「アレス…」
サーシャが声を掛ける。
「悪りぃ…ちょっと1人になりてーんだ。」
アレスは笑った。寂しそうに。
「わかった…下で待ってる。アレスも手当てしないとね。」
「おう。ありがとな。」
アレスはジュリアスを魔族に変えてしまった指輪を拾って呟く。
「俺はそんなに兄貴に嫌われてたのか?俺はそんなに邪魔だったのか?」
幼少期に一緒に過ごした楽しかった思い出が蘇る。
「どこですれ違ってしまったんだろうな…」
アレスの目から涙が零れ落ちる。
アレスにとっては最期まで兄だった。
「兄貴を犠牲にしてまで俺は王になりたくなんて無かったよ。」
『トラキアの子よ…』
「誰だ?さっきも…?」
『我はトール。この地を守護する者。』
「…。」
『この地を邪悪なる者から守って欲しい』
「あぁ…」
『我のケラウノスも今は形だけ。』
「どういう事だ?」
『邪教徒により雷の根源を盗まれたのだ。』
「なんだと?」
『いわば本来の半分の力しか有しておらぬ。あれを悪用されると世界の破滅に近づくであろう。』
「カエサルか…」
『雷の力を取り戻し、トラキアを…世界を護るのだ…』
「立ち止まってる暇はねーって事か!」
『トラキアの子に雷の祝福を…』
「俺が守ってやる!もう誰もこんな思いはさせねー!」
アレスはみんなの元に向かった。
「アレス!」
「おぅ!心配かけたな!」
アレスはサーシャの頭をポンポンする。
「みんな、聞いてくれ。この槍の本来の能力を取り戻さなきゃならねー。雷の根源が邪教徒に奪われてるらしい。それが悪用されると大変らしいんだ。協力してくれねーか?」
「それはトール神からの…?」
「あぁ。多分…そうだと思う。」
「盗られたら取り返そうぜ!」
「これ以上、カエサルの好きにはさせられないですしね。」
「そんな危険、放って置けないな!」
「みんなありがとう!ひとまず王都に戻ろう。神官長!ここの警備を強化してくれ。後日、騎士団を配備させる。」
「承知致しました。道中お気をつけてくださいませ。」
俺らは王都までの帰路についた。
王都に戻り、トラキア国王との謁見を設けてもらった。
「親父、雷霆槍ケラウノス持ち帰って来ました。」
「よくぞ手にしたな。儂も成し遂げられなかった事。アレス、お前こそがトラキアの未来だ。」
「ありがとうございます。それとトール神からの神託も授かってきました。」
ケラウノスの盗まれた根源の話やジュリアス殿下の魔族化の話も伝える。
「ジュリアスが…魔族に?」
「はい。止める事が出来ず、倒した後は灰になっちまった…。これがカエサルが兄貴に渡した指輪です。」
「ジュリアス…なぜ道を外したのだ…私の過ちがここまでの悲劇を生んでしまったというのか…」
「ダルトン、カエサルの行方は分かったか?」
「いえ。手掛かりもありません。」
「あいつがこのまま引き下がるとは思えない。王宮の警備の強化と神殿に騎士団を派遣してくれ。」
「は。承知致しました。」
「陛下、我々は一度オルフェリアに戻ります。邪教や帝国の陰謀とあればオルフェリア、アルテナとの協力関係は不可欠かと思います。」
「あぁ。トラキアも協力に応じる用意をしよう。」
「ありがとうございます。」
「俺も一緒にオルフェリアに行こうと思う。」
「わかった。一刻も早く雷の根源を取り戻すのだ。」
「明日にでも出発する。」
「気をつけて行きなさい。もう儂の子はお前しかいないのだから…。」
「親父もくたばるんじゃねーぞ。」
謁見を終えて俺達はオルフェリアへの準備を始めた。




