20年前の真実
ごく普通の領主の家系に生まれた魔力0の騎士ゼニス。魔力が使えない分、剣術に全振りした剣術馬鹿の普通?の騎士がひょんな事から助けた少女との運命の出逢いから様々な仲間と出逢い、世界を救うまでの幻想記。
ダルトン侯爵は話し始めた。20年前の戦争を。
「私は当時まだ30歳頃で大臣の末席にいた頃でした。当時宮廷司祭のポストが空き、神聖帝国から派遣されて来たのがカエサルでした。その時期にちょうどシレジア王国でシレジア王家とジェノバ公家との間に王位継承争いが起こっていました。トラキアには昔からジェノバ家との交流はありましたが、頻繁にトラキアに出入りするようになったのです。目的はシレジアの王家奪還。そしてジェノバ公国の建国が目的でした。新しい国の内政が落ち着くまでトラキア王国の統治下として建国し、ジェノバ王国として独立するという話でした。」
「ジェノバ家のクーデターが発端と言う事か。」
「はい。しかし我が陛下も王妃様の反対もあり、攻める理由も無かったので消極的だったのです。」
「他国の内政問題に干渉するのは得策とは言えませんものね。」
「しかし、そこに目を付けたのがカエサルでした。次第にジェノバ家とカエサルの距離は近づき、カエサルはジェノバ家の当主と共に陛下にこう進言しました。『シレジアに邪教との繋がりあり。ジェノバを滅ぼし、その後はジェノバと繋がりのあるトラキアにも攻め入る可能性がある』と。」
「カエサル…」
「また、当時から慢性的な食糧危機や干ばつ被害のあったトラキアとしてはシレジアの緑豊かな土地は魅力的ではあった。カエサルはジェノバの独立を認めなければ実質的にはトラキアの統治下となり、諸問題も解決するだろうと進言したのです。結果としてトラキアはジェノバに加勢する事を決め、あの北伐戦争が起きました。私も王妃様も証拠が揃わない以上は他国に干渉すべきでは無いと主張を繰り返しました。しかし風向きを変える事は出来ませんでした…。」
「その後の展開は…」
「はい。シレジアは事前にジェノバの動きを察知していたのか、ジェノバのクーデター鎮圧への動きは早かった。両家の争いはシレジアのジェノバ鎮圧で終結すると思われていたが背後からトラキアが撃つ形になったのです。当主無きあとのジェノバの意地とトラキア軍により挟撃されたシレジアには成す術も無く、結果としてシレジア、ジェノバ両家が滅ぶという形になってしまいました。」
「しかし、なぜトラキアはシレジアの地を捨てたのですか?」
「それは神聖帝国からの介入があったからです。
トラキアが北と西を統治する事で他国からの反発は避けられない。オルフェリアとアルテナが手を組んだ時に持ち堪える国力は無いと陛下も判断され、神聖帝国の一時預かりとされたのです。」
「なるほど…。」
「我々がシレジアの地を滅ぼしてしまった事は過ちであり、あなた方には償い切れないでしょう。アレス殿下、我々はこの先にシレジアに対しての贖罪の責任を背負っていかなければなりません。」
「マルス…イリス…済まねー。親父達がお前等の家族と故郷を奪ったんだな…。」
「アレス様…」
「アレス、俺も戦争の事は知らない。戦争を引き起こしたトラキアもカエサルも許せない。でもアレスの事は好きだ!アレスが俺達に謝る事は無いと思う。その謝罪はアレスが国を背負った時までとっておけよ」
「マルス…済まない。」
「ダルトン様、カエサルと邪教との繋がりはご存知ですか?」
「奴は宮廷司祭の立場を利用して、宮廷神官に次々と神聖帝国からの神官を引き入れていきました。トール神殿や王都教会に対する寄付金を減らしていき、次第にトール神殿との軋轢が生まれました。こちらの問題も解決しなければなりません。ただカエサルが捕まった今、この王宮内に邪教徒が留まっているかは疑問です。既に逃亡した可能性もあります。」
「一応王国内の邪教徒の捜索とトール神殿への寄付金の復活と和解は急いだ方が良さそうですね。」
「邪教の狙いがマナの弱体化であった場合、トール神殿への警備の強化もした方が良いかと思います。」
「それに王都の教会も老朽化が激しくなっておりました。こちらも善処した方がよろしいかと思います。」
「陛下に進言して可及的速やかに対処しよう。」
「ダルトン、頼む。」
「殿下はこの先どうなされるおつもりで?」
「んー。ゼニス、どうするんだ?」
「ひとまず我々はオルフェリアに報告に戻ります。」
「だそうだ。」
「承知致しました。」
「失礼致します。」
「なんだ?」
「陛下がアレス殿下とダルトン侯爵に部屋に来るようにとの事です。」
「分かった。すぐに行く。」
「悪い、ちょっと行ってくるわ。」
アレスとダルトン侯爵は部屋から出て行った。
-ジュリアスの部屋-
「くそ…なぜこんな事に…。カエサルの言う通りにすれば俺は認められるんじゃなかったのか?!」
ジュリアスは激昂し、椅子を蹴飛ばす。
「こんなところで…こんなところで終わる訳には…!」
すると背後から声が聞こえてくる。
「ジュリアス殿下」
「⁉︎」
ジュリアスは振り返るとそこには囚われたはずのカエサルがいた。
「どうやって…」
「何、魔術を使ったまでです。」
「カエサル!どうにかしてくれ!」
「殿下、落ち着いてください。私は次の機会が訪れるまでしばらく身を隠します。殿下が玉座に座る頃にはまたお支え致しましょう。」
「それまで俺はどうすれば!」
「これをお渡ししておきましょう。」
カエサルはジュリアスに指輪を手渡す。
「これは?」
「これは持ち主の身体能力を高め、潜在能力を引き出す魔導具でございます。もし窮地に陥った際にはこちらをお使いください。ジュリアス殿下もトラキア王国の血を引く者。潜在能力さえ開花すれば、アレスにも劣らぬ力を発揮するでしょう。」
「それはすごいな…。俺が軍神アレスにも勝てるか…」
「作用でございます。一度きりしか使えぬ物なので、よく考えてお使いください。」
「わかった。」
「今しばらく機会を伺いましょう。それでは私は失礼します。」
カエサルはジュリアスの影の中に沈み、消えていった。




