暴かれた闇
ごく普通の領主の家系に生まれた魔力0の騎士ゼニス。魔力が使えない分、剣術に全振りした剣術馬鹿の普通?の騎士がひょんな事から助けた少女との運命の出逢いから様々な仲間と出逢い、世界を救うまでの幻想記。
翌日、謁見の時刻になり、俺は王宮に向かった。サーシャとアナスタシアは一応使用人として王宮に戻った。
謁見の間には現国王、ジュリアス王子、カエサル宰相、それにアレスがいた。
「此度の決勝までの勝ち上がり、見事だった。トラキア国王の名の基に賞金金貨30,000枚とそなたの願いを聞こう。」
「有り難き幸せ。ならば私の願いを一つ申し上げても宜しいでしょうか?」
「うむ。言うてみよ。」
「では、ダルトン侯爵の釈放をお願いします。」
「何?ダルトンの釈放だと?」
「はい。私は以前ダルトン様にお命を救われた身。今度は私がダルトン様をお救いしたいと思い、大会に参加致しました。」
「陛下、それはなりません。あやつは反逆者です。死罪はあれど釈放などとは国民に示しがつきません。」
案の定、カエサル宰相は反対してきた。
「恐れながらダルトン様が謀反を企てた証拠はあるのでしょうか?」
「お前は何を言っておる。無礼な!」
「陛下、陛下はその証拠をご覧になられたのでしょうか?」
「そんな物はとっくに終わった話だ。証拠なんて物は無い!」
「民は納得するでしょうか?そして陛下自身は納得されるのでしょうか?」
「陛下!このような下賤な物に惑わされてはいけません!」
「カエサル、何をそんなに慌てているのだ?ダルトンに出て来られて困る事でもあるのか?」
アレスが口を挟む。
「何を仰るのか。政治を知らぬ子供の戯言よ。」
「邪教との繋がりが公になるのが恐いか?カエサル」
「な…!」
「カエサル、邪教とは何の事だ?」
「私は何も存じません!」
「陛下、最近謎の魔石を使用した事件が頻発しております。これは神聖帝国内でドラゴンの魔力から抽出して作られたもので人工的にスタンピードを起こすものです。それを実験と称してカエサル宰相はレガリア遺跡に設置致しました。」
「そんな証拠は無い」
「カエサル、お前、俺に魔物を弱体化させる実験だと言ったな?そしてその確認の為に冒険者ギルドにレイドの依頼を掛けて俺がそこに行くように仕向けたよな?」
「言い掛かりでございます。」
「じゃあ昨日兄貴と話してたのは何だ?」
「お前!聞いていたのか?!」
「あぁ。兄貴とカエサルが俺を殺すために企てた事だとな。」
「カエサル!ジュリアス!貴様等!!」
「父上!これはアレスの聞き間違いかと!」
「証拠は無いでは無いか!」
「サーシャ、来い。」
「失礼致します。私はアレス殿下と共に、その話の内容を一部始終聞いておりました。」
「あの時のメイドか…」
「カエサル何か言い残す事は無いか?」
「陛下!私はずっと陛下の為に、トラキア王国の為に尽力してきました。私を捨てるのですか?」
「陛下、この者は最初からこの国を乗っ取るつもりで20年前に神聖帝国から派遣されたのでしょう。ゆっくりと時間を掛けて。しかしそれも終わりでしょう。ダルトン様も真実をお話しになる事かと。」
「うむ。この件については調べる必要がある。カエサルを直ちに罷免し、牢に入れよ。そしてすぐにでも尋問を始めよ。」
「陛下!!私めを見捨てるのですか?!」
「黙れ!!お前は越えてはならない一線を越えたのだ。」
「これで終わると思うなよ!!!」
カエサルは捨て台詞を吐きながら連れて行かれた。
「ジュリアス。お前は何て愚かな事を。実の弟を陥れようとするとは…。力の使い方を間違えたな。玉座に座る事は無いと思え。お前の自由も拘束する。ジュリアスを幽閉せよ。」
「父上!私が平民の子供だからですか?!アレスの方が愛しているからですか?!」
「愚かな…。そのような事にも気付かないとは…。連れて行け」
「父上!!」
ジュリアス王子も連れて行かれた。
「ダルトンを直ちに釈放し、連れてくるように。」
陛下が衛兵に命じ、すぐに飛んでいく。
「お主の望みはこれで良いか?」
「はい。ありがとうございます。」
「アレスよ、お前はこれで次期国王となるのだぞ。良いか?」
「親父、俺はまだ正直わからねー。政治の事は全然わかんねーし、トラキアに取って何が正しいかもわかんねー。ただ言える事は今のトラキアは間違ってるって事だ。トラキアの為に尽くしていた人材はもういねー。今いる奴はカエサルと兄貴の機嫌を取ってきただけだろ。今のままじゃダメだ。でも俺はまだ国を背負う覚悟が足りてない。もっと色々学ぶ必要があると思う。だから少し俺に時間をくれ。その間、あと少しだけ親父に頑張っていて欲しい。」
「…少し大人になったな。儂も老い先長くは無い。ただお前が王になる覚悟が決まるまでは生き延びてみせよう。」
「それで俺はこいつと旅に出ようと思う。もっと他の国を見てトラキアに必要な物が何か、俺がしなきゃいけない事は何かを探してきたいと思う。」
「お前はどうせ聞かないであろう。好きにしなさい。儂は疲れた。自室に戻る。」
陛下は立ち上がり、家臣に支えられながら歩きだす。
「ゼニス。勇敢な騎士よ。此度の件、感謝する。そして息子を頼む。」
「は!承知致しました。」
「俺達も戻ろう。俺の部屋に来い。」
「分かった。」
俺とサーシャはアレスの住む別館へと向かった。
そこにはアナスタシアをはじめ、マルスやイリスも待っていた。
「殿下、これはどういった事でしょうか?」
状況の読めないナタリアが戸惑っている。
「私も説明して頂きたい。」
「ダルトン様!!」
ナタリアにダルトンと呼ばれた初老の男はこちらに向かってきた。
「久しぶりだな。ダルトン。遅くなって済まない。」
「アレス殿下…滅相もございません。しかしこれはどういう御状況ですか?」
「武闘大会の優勝賞品にダルトンの釈放を親父に頼んだんだよ。」
「アレス殿下…」
「いや、頼んだのは俺じゃない。優勝したのはこのゼニスだ。」
「お初にお目にかかります。オルフェリアの騎士、ゼニス・レオンハートと申します。」
「そなたが私が命を救った少年と…?どこでお会いしましたか?」
「はい。それは真っ赤な嘘でございます。ダルトン様を助けるための口実でございます。」
「なんと…。見ず知らずの老人を助けて頂き、感謝致す。」
「いえ。友人を助けるためですから。」
「お前らももうバラして良いんじゃね?」
「ナタリア様、騙していて申し訳ありません。私はオルフェリアの騎士、アナスタシア・レオンハートでございます。」
「私はアルテナ王国第一王女、サーシャ・フリージアよ。」
「あわわわわ…私はこのような身分の方々に掃除をさせていたなんて…御無礼をお許しください」
「いえ、私達が嘘をついていたのが悪いのよ!それに私、ナタリアから色々学べて楽しかったわ!」
「ナタリア様、御指導ありがとうございました。」
「アレス殿下…」
「こいつらはナタリアといる時と変わんねーよ!心配すんな!」
「ダルトン様、ナタリア様、私の方から御説明させて頂きます。」
俺は一連の事件を2人に話した。オルフェリアでの事件、アルテナの事件を含めて。
「なるほど…由々しき事態であるな」
「皆さんがトラキアの為を思って行動されていたなんて…」
「アレスの為です。私達は国の内政まで関与出来ません。」
「結果としてかなり干渉しているがな。だが改めて感謝申し上げる。トラキアの未来を繋げて頂き、ありがとうございます。」
「トラキアの再建には新しい風が必要かと思います。アレスが王になった時に支える人が必要です。ダルトン様とナタリア様がアレスを支えて頂ければ必ずこの国は建て直せると信じています。」
「お心遣い、誠に恐れ入る。微力ながらアレス殿下に忠誠を誓います。そして我々の力が必要な時は必ずお主達の力になると約束しよう。」
「私もアレス殿下をお支え致します。」
「2人とも頼む。俺1人じゃ何も変えられねー。王になる覚悟が出来るまで、親父を支えてやってくれ。」
「承知致しました。全身全霊を以て、お支え致します。」
「ダルトン様、一つお伺いしたい事があります。」
「私で答えられる範囲であればなんなりと。」
「カエサルと邪教との関係…ひいては20年前のシレジア侵攻についてご存知の事があればお伺いしておきたい。この子達はシレジアの戦争孤児です。聞く権利があります。」
「承知致しました。お答え致しましょう。




