最強武闘会・決勝戦
ごく普通の領主の家系に生まれた魔力0の騎士ゼニス。魔力が使えない分、剣術に全振りした剣術馬鹿の普通?の騎士がひょんな事から助けた少女との運命の出逢いから様々な仲間と出逢い、世界を救うまでの幻想記。
大会5日目。決勝戦。
ついにこの瞬間がやって来た。
「おぉ、ゼニス!準備は出来たか?」
「はい。アレス様はどうですか?」
「俺は…絶対負けられねー!」
「では、決勝戦!アレス・ローランド殿下VS騎士ゼニス!試合開始!!」
ワーーーーーー!!!
すごい歓声だな…。
俺達は一度間合いを取る。
動き出した瞬間が勝負。
お互いにタイミングを計る。
先に動いたのはアレスの方だった。
「フルグスレイジ!!」
槍の電光石火のラッシュ。
まさに目にも止まらぬ速さで突きを繰り出していく。
俺は全てを受け切れずに吹っ飛ばされる。
この攻撃で死なないのは奇跡と言える程の威力。
「流石ゼニスだな〜。そう来なくっちゃな!俺も全力で行くぜ!!」
すかさず次の技に繋げてくる。
「アクセルストライク!」
しかしそれは前に見た。俺はパリィで攻撃を避け、そのまま技を繰り出す。
「ブルクラッシュ!」
当たった!
しかしアレスは倒れる所が笑ってさえいる。
「お前の全力はそんなもんか⁈」
強いな…。今のところ隙が無い。
マナの剣技は対人用では無い。出力を制御出来るかは未知数。どうする?
考えてる隙にアレスが突撃してくる。
「うらぁ!」
俺は突きをパリィで交わして切り込む。
「させねーよ!」
槍を器用に回して俺の剣を弾き流れるように突いてくる。
盾で弾くがその勢いのまま飛び上がって上空からの突き。
アレスの攻撃が止まらない。くそ…。
どっかに隙が生まれるはず。
「決めるぜ…フルグスレイジ!!」
再び槍の連撃を浴びる。なんとか凌げれば…
盾で凌ぐ。
ピキッ…
「え…?」
ミズガルドの盾がついにアレスの連撃に耐えられずに砕け散った。
俺も衝撃に耐えられずに吹っ飛ぶ。
「くっ…」
「終わりだ!アクセルストライク!」
もう盾は無い。だったら…前に出る!!
槍をかい潜り、一気に間合いを詰める。
「スター…バースト!!」
流星の如く連撃をお見舞いする。
連撃には連撃を。5度の斬撃をアレスに叩き込む。
流石のアレスも倒れる。
「ちっ、こんな技、隠してたのか…。でも…俺は負けねー!!」
盾を失った俺と技を出し尽くしたアレス。
そこからは剣と槍の応酬になった。
どれぐらい打ち合ったのか。
お互い肩で息をしている。もうそろそろ限界も近い。
「うぉぉぉ!!」
アレスが渾身の一撃を放つ。
俺はそれをパリィし、身体を反転させて一太刀浴びせる。
「ブルクラッシュ!!」
この瞬間、アレスの槍が折れてアレスは倒れる。
「武器破損、続行不能とみなし、勝者ゼニス!優勝は騎士ゼニス!!」
ようやく勝者のコールがされ、長い試合が終わった。
「アレス殿下…」
俺はアレスに手を差し伸べる。
「完敗だな…」
アレスは俺の手を取り立ち上がる。
「負けても気持ちいいと思えたのはこれが初めてだよ。」
「俺も楽しかったです。」
「敬語は辞めようぜ!お前は俺のダチだ!」
「あぁ。」
会場は盛大な拍手で幕を閉じた。
試合終了後、翌日に表彰と謁見が王宮である事が伝えられた。
その後、会場の外で待っていた仲間達が駆け寄ってきた。
「ゼニス様、優勝おめでとうございます!」
「ゼニス様、すげぇ!」
「あんたなら勝ってくれると思ってたわ!」
「兄様、お疲れ様です。」
「みんな、ありがとう!流石にヘトヘトだ…」
「でも盾、壊れちゃいましたね…」
「あぁ…。残念だけど、また新しいの買わないとな笑」
「あ…アレス」
「お疲れー。」
「お疲れ様。」
「なぁ、このあと打ち上げでもしねー?」
「あんた元気ね…」
「あ?当然だろ!試合の後の酒は格別だろ!なぁ、ゼニス!」
「そうだな笑」
「俺も飲みたい!!」
「マルス様は試合に出てませんよ?」
「冷たい事言うなよー泣」
「じゃあ決まりで良いか?」
「はい。」
「じゃあ店は俺に任せてくれ!着替えて夕方6時くらいに待ち合わせでどうだ?」
「オッケー!じゃあ後で!」
アレスは立ち去り、俺らも宿に着替えがてらに戻る。
約束の時間になり、再び集まった俺らパーティとアレス。
一通り注文を済ませてアレスが音頭を取る。
「んじゃ、ゼニスの優勝に乾杯!!」
「「乾杯!!」」
「くーーっ!エールが染みるー!!」
「美味い!!」
「酒だーーー!」
女性陣はソフトドリンクを飲む。
「いやー、ぶっちゃけ勝ったと思ったわ!笑」
「俺も途中、どう攻めれば良いか分からんかったわ。あー、詰んでる…って笑」
「そうなのか?すげー冷静だと思ってたわ!」
「冷静に絶望してた笑」
「あ!盾壊しちまってごめんな!弁償する!」
「男ってよく分からないわね…」
「サーシャはどっちの応援してたの?」
「え⁈」
「お!そーだ。ちゃんと見てたか?」
「作戦的に考えたらゼニスよ!!」
「心情的には?」
「な…何よ!」
「ふーん。」
「アレスには助けてもらったし…」
「何かあったの?」
「えっと…」
「あー。その話はここじゃなんだから、お前らの宿で話さねーか?今後の事も含めて。」
「そうね。その方が私も良いと思います。」
「じゃあ食べ終わったら宿に移動しよう。」
今日はアレスの奢りって事で遠慮なくたらふく食べさせてもらい、俺らは宿に移動した。
俺の部屋に集まり、情報を共有して整理した。
「レガリアの一件がアレスの暗殺の為の計画だったとはな…。」
「いくら王位継承権争いだったとしても俺は許せない!」
「私もマルスに同感だわ。」
「仕方ねーよ。これが王族に生まれた定めだろ。」
「ごめん、アレス。俺も許せない。仕方ないなんて言うな!アレスの想いはどうなるんだよ。」
「ゼニス…」
「弟を殺そうとしたのは越えてはいけない一線を越えてると私も思います。」
「そうですね。やり方が卑劣。」
「俺らが首を突っ込む事じゃないのは分かってる。無責任に言葉を投げて良い事でも無い。だけど俺はアレスが悲しむ顔は見たくないしトラキアに居場所が無いなら俺らと一緒に来れば良い。そこからどうするかは考えても良いと思ってる。」
「だけど俺が居なくなったら益々兄貴とカエサルの思うツボだろ。」
「だから決着をつけよう。」
「何?」
「まずダルトン大臣を復帰させよう。その上でアレス暗殺の件、邪教との繋がり等の糾弾をする。カエサルとジュリアス殿下を失脚し、今一度陛下とダルトンに政治を委ねる。どうだろう?」
「まぁ…確かにそれが一番合理的だが…」
「ジュリアス殿下もカエサルと離れれば正気に戻るかもしれない。今は兄弟愛よりも民衆の為に成すべき事を。」
「どう処罰するかは結局は陛下次第だろ?そこは俺達は関与出来ないし。」
「もしアレスの中にモヤモヤが残るんだったら、ジュリアス殿下の嘆願はしても良いと思う。兄弟で殺し合うなんて不毛だわ…」
「私もサーシャに賛成です。アレス様にとっても、ジュリアス殿下にとっても時間を設けて冷静な判断を下せる時に結論を出しても良いのではないですか?」
「もしそれでも兄貴と戦う事が避けられなかったら?」
「その時はアレス自身の覚悟を決める時だと思う。アレスがどうしたいのか。トラキアをどうしたいのか。その時出した答えに従うだけだと俺は思う。」
「アレスは身内の不始末は俺が片付けるって言ってたよね?これからその方法を探せば良いんじゃない?」
「私も戦うだけが全てでは無いと思います。その結果、戦う事を選んだとしても、流れる血は少ない方が良いと私は思います。」
「…分かった。その方法を探すために、俺はお前達と共に過ごしたい。」
「俺らは歓迎するよ。」
「あとは邪教との繋がりは確かなのか?」
「それは私から…」
イリスがブラックドラゴンの経緯を話す。
「え!そんな事があったのですか⁈」
「イリスがママ⁈」
「生まれたらそうなるわね笑」
「へー!ブラックドラゴンの卵か!トラキアは今でこそ槍騎士が有名だが、神話の時代はドラゴンナイト軍団ってのがあったらしいぞ。初代トラキア王はブラックドラゴンナイトだったってよ!」
「かっけぇ…」
「それでブラックドラゴンのドーラが神聖帝国で魔石の精製に使われていたらしいの。ドラゴンの死骸の魔力は魔物を引き寄せてしまうでしょ?これって魔石の効果と類似してないですか?」
「確かに…」
「なんか全てが繋がってる…」
「明日の謁見でブラックドラゴンの話をしてもドーラ亡き今は信じてもらえない可能性も高いけど、これが真実なんです。」
「なるほどな…」
「とりあえず明日はさっき俺が言った計画で良いか?」
「あぁ。」
「ではひとまず今日は解散しようか。」
「みんな、明日王宮で!」
「アレス、気をつけてね。」
「おう!」
こうして決勝の夜は過ぎていった。




