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急接近!!

ごく普通の領主の家系に生まれた魔力0の騎士ゼニス。魔力が使えない分、剣術に全振りした剣術馬鹿の普通?の騎士がひょんな事から助けた少女との運命の出逢いから様々な仲間と出逢い、世界を救うまでの幻想記ファンタジー

大会4日目。準決勝当日。

俺の相手は魔法剣士だった。

流石、準決勝に勝ち残っただけあって強い。

魔法剣士は遠距離から魔法、近距離で剣技と巧みに入れ替えて攻撃を繰り広げる。

ただ魔法にしろ剣技にしろ、決定打に欠ける。

魔法を交わしつつ、俺も距離を詰めて勝負をつける。

「ブルクラッシュ!」

最後は一撃を食らわせてK.O。

決めるまでは時間が掛かったが、剣士としては強くなかったのが幸いだった。同じ魔法剣士のアナスタシアだったら…。たまには剣術の稽古でもするか。

試合を終えて受付で勝利報告と明日の決勝の受付を済ませているとアレス王子がやってきた。

「おう!ゼニス。勝ったか?」

「はい。なんとか決勝まで残りました!」

「よし!いよいよだな!俺との決勝だ。」

「殿下も決勝決めたんですね。」

「当たり前だろ!俺が雑魚に負けるかよ!」

「そうですね笑」

「ゼニス、ちょっと話せるか?」

「はい。もちろん」

アレスはダルトン大臣の事、優勝報酬の事をゼニスに話した。

「これで俺かゼニス、どっちが勝っても保釈は求められるな。」

「自分は負けられなくなりましたね。」

「勝つのは俺だよ」

「アレス殿下を身内を敵に回すような真似はさせられません。俺が勝てば回避出来ます。」

「勝負は勝負だろ。俺はお前に勝って自分の強さを証明する。」

「わかりました。俺も全力でいきます!」

「楽しみだな!」

アレス王子はニカっと笑う。

「殿下、こちらの情報も一つ。」

「ん?」

イリス達が遭遇したブラックドラゴンの話をする。

そのブラックドラゴンから聞いた魔石の精製方法と神聖帝国との関係やカエサル宰相との繋がり。

「カエサルの野郎が魔石の事を知ってて指示してたとしたら…」

「ただ設置したのがなぜレガリアだったのか?国家の滅亡やマナへのダメージを考えるなら設置場所はレガリアでは無かったはずです。なぜそのような回りくどい手を使ったのか…」

「確かに…」

「引き続き王都と神殿への警戒はしておいた方が良いかと思います。」

「分かった。じゃあ明日な!」

「はい。失礼します。」


その頃のサーシャとアナスタシア。

「ナタリア様は王宮勤めも長いんですよね?」

「そうよぉ〜。今だと執事、大臣達に次いで3番目くらいかしら?」

「アレス殿下とジュリアス殿下の子供の時ってどんな子供でした?」

「可愛かったわよ〜!」

「アレス殿下が可愛い…」

「そうよぉ〜。お2人共小さい頃は仲良くてね。よくジュリアス殿下がアレス殿下の面倒を見られてたわね。」

「仲良いんですね。」

「昔はね…」

「今はそうでは無いのですか?」

「そうねぇ…。アレス殿下が騎士団長になった頃から疎遠になっていったかしら…。」

「それがなぜ疎遠になった原因なのですか?」

「アレス殿下は幼い頃から武芸の才に恵まれていてね。15歳の時に最年少で騎士団長になられたの。トラキア王国では強い戦士が上に立つとされているの。だからアレス殿下は王位継承権2位だったとしても王になれるのよ。」

「ジュリアス殿下は武芸の腕前は…?」

「ジュリアス殿下は残念ながら武芸の方はそこまでだったの。アレス殿下に王になる意思は無いにも関わらず、次第にジュリアス殿下は焦っていったのよ。」

「でもアレス殿下に意思が無いのであれば、ジュリアス殿下がそのまま即位すれば問題無いのでは無いですか?」

「んー。誰に王位を継がせるかは現国王が決めるのよ。実際陛下は自分と同じ金の髪を持って生まれた強い戦士であるアレス殿下を可愛がってたわ。」

「あれ?ジュリアス殿下は違うんですか?」

「ジュリアス殿下は黒髪よ。」

「もしかして…」

「そう。ジュリアス殿下は王妃様の御子では無いの。ジュリアス殿下は陛下と王妃様が結婚する前にお戯れで出来た婚外子なのよ。」

「ジュリアス殿下の母君はどちらに?」

「分からないわ…。当然王室は平民との結婚に反対したわ。手切金を条件に国外追放になったの。責任を感じた陛下はジュリアス殿下を自分の子供として引き取って育てる事にしたの。」

「誰も幸せになれなかったのね…」

「そうね…。それでも陛下も王妃殿下も分け隔てなく可愛がっておられたの。」

「それが先程の騎士団長の件をきっかけに?」

「その時期くらいかしら?ジュリアス殿下が引きこもりがちになったの。そこからほどなくしてジュリアス殿下がカエサル宰相と行動を共にする機会が多くなってね。そこから2人の溝が段々と…。アレス殿下はそれを避けるように騎士団長を辞めて冒険者の活動をするようになったわ。アレス殿下なりの意思表示だったと思うの。」

「王座には就かないという?」

「私はそう思うわ。あの2人を昔から見てたから…本当に兄弟想いの優しい子だったの。」

「なんか悲しいですね…」

「誰もこの悲しみ連鎖を止められ無かったのかしら?」

「ダルトン大臣がいれば…また…」

「ダルトン大臣…ですか?」

「あの方だけは陛下や宰相に真っ向から意見を言っていたわ。他には今はもうね…。さ、仕事しないとね!アナスタシアは配膳を手伝ってちょうだい。サーシャは洗濯室に行ってきてくれる?」

「「わかりました」」

アナスタシアはナタリアと、サーシャは洗濯室へ向かった。


(こんなの、誰も幸せになんてならないじゃない。こんなの間違ってるわ!)

サーシャは行き場の無い怒りが込み上げる。

洗濯室に行く途中、2人組の男を見かけた。

(あれはジュリアス殿下?となるとあれがカエサル宰相?)

サーシャは咄嗟に後をつける。

「レガリアの件はどう説明するんだ?」

「予想外に優秀な冒険者が集まっていたみたいで失敗に終わりました。」

「ちっ。お前が確実にアレスを葬る事が出来ると言っていただろう!」

「申し訳ありません。また次の機会を伺いましょう。」

「父上もそう長くは持たないぞ。それまでに確固たる地位を築かなければ俺もお前も破滅だぞ!」

(何?こいつらアレスの暗殺のためにレガリアのレイドを計画したって事⁈)

「おや?どこからかネズミが紛れ込んだようだな…」

(やば!気づかれた!!)

サーシャは咄嗟に逃げようとしたがふいに誰かに腕を引っ張られ、開いていた部屋に押し倒された。

「なにす…」

「静かにしろ!俺に合わせろ!」

声の主はアレスだった。

ドアが開き、カエサル宰相が立っている。

「誰だ?」

「ちっ、カエサルか。良い所だったんだから邪魔すんなよ。」

「おやおや。アレス殿下ではございませんか。こんな所で昼間から何をされているのですか?」

「見りゃ分かんだろ?」

「お盛んですこと。そういった事は自室でされてくださいね。」

「わかったよ!親父と兄貴には言うなよ?」

「承知致しました。では失礼。」

カエサルは去っていった。

2人の気配が消えるまでサーシャはアレスに押し倒されたまま。たった数分が永遠にも感じられる。

(アレスの胸板が…。腕ってこんなに太かったんだ…)

不意に心臓の音が早くなる。

(何なに!やめて!聞こえちゃう!)

「行ったみたいだな…」

アレスが耳元で囁く。

「や…」

思わず声を出してしまった。

「あ、わ…悪ぃ…」

アレスがサーシャを抱き起こす。

「とりあえずすぐに俺の部屋に行くぞ。」

「う…うん。」

2人はアレスの部屋に戻った。

「助けてくれて…ありがとう」

「お前、何してたんだよ!!」

「ジュリアス殿下とカエサル宰相を見かけたから…」

「危ねーことはすんなってあれ程言っただろーが!!」

「ごめんなさい…」

「くそ!」

「ごめん…ありがとう。」

「あー焦ったー。でも無事で良かった。怪我してないか?」

「うん…」

「なんであんな無茶な事した?」

「ナタリア様からアレスの事とかジュリアス殿下の事とか聞いたら、なんか許せなくって…みんな悪くないのに…でも誰も幸せにならない選択肢しか無くて…」

「…お前はもう居なくなる。関係ねーだろ」

「関係ないよ!関係ない…けど…」

「じゃあもう首突っ込むな!」

「イヤ!だってあの2人、アレスを殺そうとした!またアレスに何かあるかもしれない!」

「…あの2人がそう言ったのか?」

「ごめん…。聞いちゃったの。レガリアのレイドはアレスを暗殺するためにカエサルが計画したって。その指示をしたのがジュリアス殿下。陛下の命も長くないからそれまでに王座が欲しいって。」

「…そうか…」

「ごめん…。私が口出して良い事じゃないと思う。だけどアレスが辛い想いをするのを私は見なかった事には出来ない!」

「ありがとな…」

アレスはサーシャの頭をポンポンと叩く。

「俺は死なねーよ。」

「アレス…」

「お前、明日の決勝戦、観に来いよ。」

「え?」

「俺は負けねー。自分にも運命にも!」

「わかった!ちゃんと頑張りなさいよね!」

「サーシャ…ありがとな。今日はもう部屋に戻れ。ナタリアには夕飯はいらねーって言っといてくれ。」

「うん…元気…出してね。」

サーシャはアレスの部屋を出た。

「あいつ…何なんだよ…。普段生意気な癖に。」

アレスは片手で顔を覆う。

サーシャは自分の部屋に戻る。部屋に入るとアナスタシアが詰め寄ってきた。

「サーシャ!今までどこ行ってたの⁈」

「アレス…の部屋」

「は?なんでよ?洗濯室は?」

サーシャは一連の出来事を説明した。

「アレス殿下に話しちゃったのね…」

「うん…。」

「で、アレス殿下は?何て?」

「明日の試合に観に来いって。でも寂しそうだった…」

「本人に話した事が正解かは私も分からない。だけど暗殺されかけた事は事実。ジュリアス殿下とカエサル宰相に警戒するようになったのはプラスよね。」

「うん…。」

「とりあえずナタリア様には私から上手く話しておくから、サーシャは部屋から出ちゃダメよ?」

「わかった…」

アナスタシアは部屋を出てナタリアの元へ向かった。

サーシャが途中で貧血を起こした事、たまたまアレス殿下に助けられて今は自室で休ませてる事。アレスから明日の試合を観にくるように言われた事などをナタリアに説明した。

「疲れが出たのかしら…?サーシャは大丈夫?明日は休んで良いから、殿下の試合でも観に行ってきなさい。」

「ありがとうございます。ご迷惑をお掛けします。」

「良いのよ。今日はアナスタシアも上がってちょうだい。」

「ありがとうございます。」

そして決勝前夜が明けていった…。

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