ドラゴンと卵
ごく普通の領主の家系に生まれた魔力0の騎士ゼニス。魔力が使えない分、剣術に全振りした剣術馬鹿の普通?の騎士がひょんな事から助けた少女との運命の出逢いから様々な仲間と出逢い、世界を救うまでの幻想記。
1時間程歩くと確かにちょっとした森があった。
森を進んでいくと泉があってそこに例のドラゴンはいた。
「あれか…」
確かに動かない。死んでる?
かなりデカイ。
こっそり近づいてみる。
動かない。
「流石にでけーなー!」
「ブラックドラゴンなんて伝説上のものだと思ってたわ…」
「でもブラックドラゴンかどうかなんてどうやって確認すれば良いんだ?確かに黒いけど…」
「マルス、見て。こんなに大きな傷があるわ…。せめて傷だけでも治してあげましょ…」
イリスはドラゴンに向かってヒールをかける。
『誰だ…私にヒールをかけるのは…』
「きゃ!!」
「喋った!!」
『汝らは何者だ…殺されにきたのか…』
「俺達はギルドから頼まれて調査に来たんだよ!」
「亡くなってると思ったのだけど、綺麗にしてあげたいと思って…」
『どの道、もう助からん』
「でもあなたは生きてるわ。助かるかもしれない!」
イリスは再びヒールをかける。
『無駄だ…』
イリスは聞かない。
『お主の魔力は懐かしい感じがする…心地良いあの魔力』
「ダメ…これ以上は私じゃ回復出来ない…」
『だから言ったであろう。無理なのだ…。魔力がもう尽きかけておるのだ。』
「でもこのまま1人ぼっちで死ぬなんて悲しいじゃない…」
『お主は優しい娘じゃな…では残された僅かな時間、私といてくれるか?』
「えぇ。もちろん」
「俺達で良ければ。」
『ありがとう…』
「あなたはどこから来たの?なぜトラキアに?」
『我は誇り高きブラックドラゴン。名はドーラ。神聖帝国に仕えていたのだ。』
「神聖帝国に?」
『代々、暁の巫女に仕えていた。しかし巫女無き今、我は道具として使われ鎖に繋がれていたのだ。』
「そんな…」
『魔力を吸い取られ、黒き石の材料とされ死を迎えるのを待つのみだった…』
「黒き石ってあの魔石の事か⁉︎」
『何に使ったかは知らぬ。しかし私には守るべきものがある。最後の力を振り絞って結界を破り、我が故郷のトラキアまで戻ってきたのだ。』
「ドーラの故郷はトラキアなの?」
『我らブラックドラゴンは代々トラキア地方の守護神獣であった。いつしか神聖帝国に縛られるようになったのだ。』
「そこまでして守りたいものってなんだ?」
『これじゃ…』
「…卵?」
『我の魔力じゃ孵す事すら出来ぬ…』
「どうしたら…」
『お主の魔力であればもしかしたら…』
「私の魔力?」
「そうだ!イリスは暁の巫女の生き残りなんだ!」
『そなた、母の名は?』
「レティシア様…とお聞きしました」
『レティシア…あの娘か…。そうか…あの娘の子か…。』
「私が生まれてすぐに母は亡くなったそうです。だから私は母を知りません…」
『あの娘は優しい娘だったよ。私の鱗の手入れもしてくれてな…あの娘との時間は幸せな時間だった。』
「お母様…。」
『もう少し昔話をしたかったが、でももう別れの時間が近い。』
「そんな…せっかくお母様の事が知れたのに…」
『すまない…そして最期に我の願いを聞いてくれないか?』
「なんだ?」
『ここでお主に出逢ったのもレティシアの導きか…。この子を託したい…イリスとやらの側にいれば孵るかもしれぬ』
「私にそんな力なんて…」
『我が子は神聖帝国という鎖に縛らせたくないのだ…』
「…わかりました。出来るかは分からないですけど、私が守ります。」
『それと私にホーリーの魔法をかけて欲しい。そうすれば浄化されて魔物は来ないだろう。』
「私、ホーリーなんて使えません!」
『大丈夫。お主なら使える。こっちに来なさい』
ドラゴンはイリスに頭を付ける。
「身体が暖かい…」
『我の力を与えた。これで神聖魔法が使えるようになるだろう。そこの小僧もこっちに来い。』
同じくマルスにも同様に頭を預ける。
「力が…」
『お主の新たな力となるだろう。それと我の鱗も持っていけ。浄化された後は骨しか残らぬ』
ドーラは身体から落ちかけている鱗を数枚むしってくれた。
「ドーラの故郷はどこだ?」
『我に故郷は無い。』
「あなたのお墓、私の母様の所に…私達の故郷のヴェルドラの森に連れていくわ!」
『レティシアの隣か…またあの娘に逢えるなら悪くない』
「俺らが絶対に連れてってやる!安心して休んでくれ!」
『ありがとう…。最期にお主達に会えて良かった。さぁ、我にホーリーをかけてくれ。』
「ドーラ…またいつか会いましょう」
涙を拭ってイリスは祈りを捧げ、ホーリーライトの呪文を唱えた。
魔法陣が現れ、白く暖かい光がドーラを包み浄化していく。ゆっくりと灰となり、消えていく。そしてドーラの骨と卵が残された。
「ドーラ…私がこの子を守るからね。」
「イリス、帰ろうか。」
「うん…。」
「ドーラの骨は明日拾いにこよう。」
こうして2人はトラキアの街に戻った。
街に着いてギルドに向かった2人は森の中にいたのはブラックドラゴンでは無くワイバーンだったという事にして報告した。
ワイバーンの骨を使いたいから運んで欲しいとも頼んで。
ギルドは心良く引き受けてくれて、保管までしといてくれるとの事だ。
その後、試合の終えたゼニスと合流し、2人はドーラとの事を話した。
「そんな事が…」
「これが卵です。」
イリスのローブの胸元から卵が現れる。
「まぁ卵の事は知られない方が良いな。ひとまず武闘大会が終われば一旦オルフェリアには戻る事にはなると思う。その道中でドーラの骨はヴェルドラに埋葬してあげよう。」
「ありがとうございます。」
「しかし以外な所で魔石の精製方法が分かったな。」
「確かにドラゴンの死骸が魔物を呼び寄せる習性を利用したのなら納得ですね。」
「そのせいでドーラは…」
「魔石の出所は神聖帝国…。その神聖帝国から派遣されたカエサル宰相が偽ってレガリアの遺跡に魔石を設置した。なんか繋がってきたな。」
「黒幕は神聖帝国って事ですかね…?」
「可能性は高いな。」
「何か恐ろしい事が起きなければ良いですが…」
「ひとまず今まで以上に身の安全に気をつけよう。1人で行動しないようにな。」
「はい。」




