メイド大作戦!
ごく普通の領主の家系に生まれた魔力0の騎士ゼニス。魔力が使えない分、剣術に全振りした剣術馬鹿の普通?の騎士がひょんな事から助けた少女との運命の出逢いから様々な仲間と出逢い、世界を救うまでの幻想記。
日が変わって俺達はトラキア王国へと向かった。
陸路で5日前後ってところだ。
道中は特に戦闘も無く、平和だった。
サーシャの野営も慣れてきたもので逞しくなってきた。
「いよいよトラキア王国が見えてきたな。」
トラキア王国は軍事国家であると同時に難攻不落の城砦都市でもある。
機能性を重視したような街並み。
アルテナのポップな雰囲気とは正反対な風景だ。
街の入口の検問を通過して中に入る。
「なんか暗くない?」
「やっぱり政治情勢かしら?」
「人通りもあまり多くは無いわね…」
「とりあえず宿に荷物置いて武術大会のエントリーしに行こうか。」
宿について手続きをする。
「今、トラキアでは夜間外出が禁じられているので22時以降は外に出ないように気をつけてください。ではごゆっくり。」
「夜間外出令って…。物騒だな。」
「あまり長居したくないですね。」
荷物を置いて会場の闘技場へ向かう。
オルフェリアの方で手続きはしてくれていたみたいで本人確認だけで手続きが終わった。
決勝まで5日間の日程。
トーナメント制で偶然か根回しか、勝ち上がれば決勝でアレス殿下と当たる。そこまで勝ち上がれればだが。
宿に戻って作戦会議をする。
「なんか街の散策も迂闊に出来ないわね…」
「どうやって探るかだな…」
「この感じじゃ王宮なんて入れないっすね。」
「うーん。このままだとただ武術大会に出た人になってしまう…」
「ねぇ見て!」
急募!!使用人2名募集!トラキア王宮で働けるチャンス!経験者優遇。社会保証完備。住み込みOK!
「なんだこれ?」
「これに応募して潜入ってどう⁈」
「いやいやいやいや」
「ダメだろ」
「絶対バレる」
「危険過ぎる」
「ナイスアイディアだと思ったんだけど…」
「私は有りかと思いました」
「アナスタシア⁈」
「2人って誰が行くんだよ。」
「人選は私とサーシャが無難かと。」
「私も!」
「いえ、イリス様こそ危険です。暁の可能性がある以上、邪教と遭遇した場合に1番危険なのはイリス様です。それこそ危険を背負って潜入する事になります。同じ危険物だったらサーシャの方がマシかと。」
「そうですね…」
「え!酷い!」
「イリスはなるべく存在は知られない方が良いか…」
「それに万が一でも戦闘になった場合、私とサーシャだったら自衛くらいは出来ます。」
「それでも危険だよ!俺は反対だ!」
「マルス…」
「マルス様、危険だと思ったらすぐに撤退してきます。お任せくださいますか?」
「アナスタシア…」
「絶対条件として危ない事は絶対にしない。危険だと思ったら即時撤退。そしてアナスタシアはサーシャが暴走しないように監視する事!この3つを守れるか?」
「必ず。」
「私ってそんなに信用ない?」
「じゃあマルスとイリスは街中での聞き込みと2人のフォロー。俺は勝ち上がって時間を稼ぐ。」
「分かりました。」
「とりあえず私とサーシャで求人の応募手続きしに行ってきます!」
「じゃあその間に俺とイリスは街の把握と聞き取りでもしてきます!」
「教会の様子も見ておきたいですね。」
「今日は俺も2人に付き合うよ。」
「じゃあまた後で!」
2人は意気揚々と面接に行った。
なんか楽しんで無いか?
「すみません、こちらの募集を見て来たのですが…」
「面接の方ですね?こちらにどうぞ。」
「あら?早速面接?」
「みたいね。」
10分くらい待たされたあと、中に入るように呼ばれる。
「あなた達が面接希望の2人?」
「はい。よろしくお願いします。」
「私は侍女長のナタリアよ。」
「アナスタシアと申します。」
「サーシャです。」
なぜ2人は面接を?」
「はい。先日までオルフェリアの伯爵家で勤めていたのですが、訳あって退職する事になり藁にもすがる思いでこちらに参りました…」
「退職理由を伺っても?」
「はい…。伯爵家の御子息と愛を育んでおりました…。しかし御子息の結婚が決まり、お二人を見ているのが辛くて退職してこちらに参りました…。メイド以外の仕事も出来なくて…」
時折涙ぐみながら話すアナスタシア。
良くこんな嘘をアナスタシアは台本無しで喋れるもんだ…。
「やだ…辛かったわね…。結局私達って恋愛なんて望めないわよね…」
謎に面接官は共感して涙ぐんでいる。
「あなたは?」
「この子は私の同期だったのですが、あまりに私が傷心していたので死ぬのでは無いかと心配して付き添ってくれていたのです…。彼女がいなければ私は今頃…」
「はい。そうなんです!この子が心配で心配で…」
「まぁ…素敵な友情ね…。分かったわ。採用よ!仕事で失恋を忘れましょう!」
「ありがとうございます…。」
「じゃあ早速明日から来てちょうだい!制服は支給だし住み込みで良いからね!」
「ありがとうございます!」
「それでは失礼します。」
「なんかこうもあっさり…」
「私にかかれば面接くらい朝飯前ね。」
「いや…私、貴女が恐いわ…」
「え?何が?」
「ううん。何でもない…」
サーシャはアナスタシアには逆らわない事にしようと決めた瞬間だった。
一方、俺達は街を散策しながら教会にやってきた。
「他の教会と変わりは無いな…」
ちらほら礼拝客がいるくらいでこんなもんだろう。
「今日はどのような御用ですか?」
神父に話しかけられる。
「はい。旅の途中に立ち寄らせて頂きました。旅の安全を女神様に祈らせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「どうぞ。」
ひとまず祈っておく。
「ありがとうございます。こちらの教会は歴史が古い教会なのでしょうか?」
「そうですね…。教会自体が古くなっているのでよりそう感じるかもしれません」
「確かにそうですね…。」
「老朽化が進んでいるので改修をしたい所なのですが、予算が足りず…」
「そうなのですね…利用者が少ないのですか?」
「そうでは無いのですが…」
「何かあるのか?」
「いえ…王宮からの寄付が年々少なくなっていて、運営するのが精一杯なのです。」
「教会への寄付金はどこの国でもある程度は決まっていると思うのだが…」
「カエサル宰相になってから寄付金を減らす方針になったみたいで…我々も頭が痛いです。ただただ女神様に祈るのみです…」
「私も祈らせてください。」
「ありがとうございます。」
とりあえず祈って教会を後にする。
教会を出た所でサーシャとアナスタシアと合流する。
「そっちはどうだった?」
「はい。明日からの採用になりました!」
「早いな!よくすんなり受かったな。」
「ゼニス…私、この世で1番恐いのはアナスタシアかも知れない…」
「ん?どうしたんだ?」
「ちょっと演じただけですよ。」
「よくあんなスラスラ嘘が出るわね…。大女優もびっくりよ。」
「なるほど…」
「マルス…頑張ってね。」
「な!!」
「とりあえず良かったね!」
「そうだな!一旦宿に戻ろうか。」
そして宿に入って情報を整理する。
「どうやらカエサル宰相は教会への寄付金を絞ってるらしい。」
「なぜでしょうか?」
「私腹の為か、別に意図があるのか…」
「カエサル宰相はちょっと要注意ですね」
「王宮でも近づき過ぎない程度に探ってみてくれ。」
「分かりました。」
「明日以降、何かあればここの宿で落ち合おう!」
「了解です!」




