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里帰り

ごく普通の領主の家系に生まれた魔力0の騎士ゼニス。魔力が使えない分、剣術に全振りした剣術馬鹿の普通?の騎士がひょんな事から助けた少女との運命の出逢いから様々な仲間と出逢い、世界を救うまでの幻想記ファンタジー

翌日、早速俺達はトラキア王国に向かって出発した。まずはクロード神父をヴェルドラに送り届ける。

道中、色々な話しをした。イリスやマルスの幼い頃の話しやヴェルドラでの生活の事。マルスのイタズラのあれこれ。

神聖帝国の事も教えてくれた。

きっと俺には想像出来ない苦難を乗り越えて来た人で、そんな方に育ててもらったイリスやマルスはとても幸せだったと思う。

1週間近くかけてヴェルドラに着いた俺らはヴェルドラで一泊する事にした。

「これがヴェルドラの森ね…」

「イリスとマルスが生まれ育った場所か。良い所だな。」

「何も無い所ですが良い所です。」

「俺、孤児院に顔出してくるよ」

「私も!アナスタシアも一緒に行く?」

「はい!是非!」

俺らは孤児院に向かった。

「あ!マルス兄ちゃんが帰ってきた!シスターも一緒だ!」

子供達が一斉に集まってくる。

「元気にしてたかー?」

イリスに抱きついて泣きだす子もいる。

「どうしたの?泣かないの。」

「今日は遊んでくれる?」

「もちろん!今日はお姉ちゃんのお友達も一緒よ!」

「こんにちは。」

「お姉ちゃん達のお友達…?」

「はい。アナスタシアです。私も仲間に入れてもらえるかしら?」

「姉ちゃんすっげー美人!」

「ありがとう笑」

「私はサーシャよ。何して遊ぶの?」

「俺、英雄ごっこ!」

「隠れんぼ!」

「じゃあ皆んなで遊びましょう!」

とても元気な子供達だ。

「元気でしょう?イリスとマルスがいなくなってから子供達は寂しそうにしてましたから。」

クロード神父が語りかける。

「愛されてるんですね。」

「この子達のほとんどが20年前の戦争孤児です。親がいなくても強く逞しく生きてますよ。」

「理不尽に奪われる事なく、戦争の無い世の中を守りたいですね。」

「そうですね。」

クロード神父は微笑みながら答える。

「イリスは素敵な方と巡り合えたみたいですね。あなただったら私もイリスを託せます。これからもあの子を守ってあげて欲しい。」

「はい。俺はイリスを生涯を賭けて幸せにしたいと思っています。」

「ゼニス様!騎士役やってください!」

「任せろ!」

子供達へと向かう俺の背中にクロード神父が声を掛けた。

「ありがとう。これも女神オーロラのお導きか…」


子供達と遊んだあと、俺達は孤児院に泊めてもらう事になった。

今日は皆んなで夕飯の支度をすることに。

「イリス…」

「どうしたの?サーシャ。」

「私…料理した事無いの…」

「大丈夫!私が教えるから一緒に作りましょう。」

「出来るかしら…?」

「大丈夫。私も全然出来ないから。」

「アナスタシア…それ大丈夫じゃないやつ…」

「2人とも、大丈夫!私が教えるから笑」

「マルスも作るの?」

「当たり前だろ!ここは小さい時から当番制なんだよ。」

「え!マルス料理出来るんだ!!」

「そんな驚く事じゃないだろ。」

「兄様は出来ないですし…」

「俺を巻き込むな。」

「今日は人数多いからシチューとチキンソテーにしましょう。簡単な料理だから大丈夫!サーシャとアナスタシアは具材を切ってくれる?」

「はーい!」

手つきが危なかしいが、イリス指導の元、なんとか野菜を切れるまでには成長する2人。

マルスは肉を捌いて手際よく調理していく。

最後にイリス監修の元、シチューの味付けをしていく。

「完成!!」

出来た料理は子供達に配膳してもらう。

「みんな席についたかー?では、いただきます!!」

「「いただきまーす!!」」

「美味い!!」

「なんか自分で作った料理ってこんな味わい深いものなのね…」

「感慨深いものがありますね…」

「俺らにとっては普通の事だからなぁ笑」

「マルスをちょっと尊敬したわ。」

「ちょっとって何だよ!」

豪華とは言えない食卓だけど、皆んなでテーブルを囲んで他愛のない笑い話しが響くこの時間は何にも変えられない価値があると改めて教えてくれる。

子供達が笑って過ごせる未来ってやつを守りたいと思った。


子供達を寝かせたあと、女性陣は口紅作りを始めた。

「これが噂のリップなのね!」

「アナスタシアのはこれね。サーシャは…もう少し濃い色が合いそう!」

「そうね!サーシャは赤が似合うから口元も赤の発色が良い方が似合うと思う。」

「えー♪楽しみー!」

俺とマルスはその間に村の周囲のパトロールをする事にした。

「特に魔物の影響とかは今のところは無さそうだな。」

「そうですね。ここは戦える人手が無いので心配でした。」

「そういえばマルスって肩にタトゥーみたいなのあるよな?」

「あ、はい。」

「ヴェルドラの慣習かとも思ってたんだけど、子供達には無かったなーって思って。」

「俺だけみたいです。これに関してはクロード神父様も分からないみたいで、俺がここに来た時には既ににあったみたいです。」

「そうなのか…ごめんな、変な事聞いて!」

「全然大丈夫です!」

「異常は無いみたいだし、そろそろ帰ろうか!」

パトロールを終え、女子達と合流した俺達はクロード神父を交えてトラキアへの作戦を立てた。

「大まかに説明すると、まずはここから1週間程進んだ先にある国境の街レガリアを経由して更に5日程進めばトラキア帝国に入る。」

「レガリアまでは俺もよく行くから任せてくれ!」

「次にトラキア王国の国内情勢についてだが…」

クロード神父は少し考え込むような表情をして続ける。

「現国王は先の戦争でも指揮を取っていたヴェスター王なのだが、退位も間近と言われておる。その次期国王に第一王子ジュリアスと第二王子アレスが争っていると言われている。」

「跡目争いか…」

「本命は第一王子のジュリアスと言われているが、アレス王子を推す声も多いのも事実。」

「順当にいけば第一王子のジュリアス殿下なのでは無いですか?何か問題でも?」

「ジュリアス殿下の周りには黒い噂が多いのだよ。それこそ邪教と繋がっているという噂もある。現国王譲りの野心と残忍さが民心から恐れられているのだ。反対にアレス王子は民衆の支持が強い。自由奔放で戦いに明け暮れているアレス王子は冒険者とも親しく、その反面、政治力の無さを不安視されている。貴族派閥のジュリアス殿下と民衆派閥のアレス王子で分かれておる。」

「なるほど…」

「しかし当のアレス王子は王位や権力に興味が無いらしく、やりたい奴がやれば良い。王位継承権も放棄すると言っておるみたいだが…」

「政治は本人の意思とは関係無いという事か…。」

「軍事至上主義の国家の上に立つにはそれなりの強さが必要との事だろう。」

「やはりトラキア王国も一筋縄ではいかなそうですね。」

「何が起こるか分からん。充分に警戒していって欲しい。」


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