出生の秘密
ごく普通の領主の家系に生まれた魔力0の騎士ゼニス。魔力が使えない分、剣術に全振りした剣術馬鹿の普通?の騎士がひょんな事から助けた少女との運命の出逢いから様々な仲間と出逢い、世界を救うまでの幻想記。
翌朝、王宮からの迎えの馬車に乗り、魔導船でオルフェリアに帰還する事になった。
今回はアデル殿下と一緒に向かう。
アーサー王子はアルテナに残る事になった。
「気をつけてな!兄様も言っていたが、俺もいつでも力になるからな!また会おう!」
「はい!ありがとうございます!」
「マルス、頑張れよ!」
「アーサー殿下、本当にありがとうございました!」
「では行って来る。アーサー、アルテナを頼んだ。」
「はい。お任せください。」
アーサー殿下と言葉を交わし、俺達は飛び立った。
魔導船で3日、俺達はオルフェリアの港に魔導船を停泊させ、その足でオルフェリア王宮に向かった。
謁見の間には国王陛下の他にうちの両親とマイア神官長も揃っていた。そして見慣れない神父が1人同席している。
「ゼニス・レオンハート、只今帰還致しました。」
「アルテナ王国第一王子アデルでございます。父王に代わり、謁見の許可を頂きありがとうございます。」
「アデル王子、遠路はるばるお越し頂き感謝する。また、オルフェリアの騎士達が世話になった。重ねて礼を言う」
「オルフェリアの騎士達には大変世話になりました。他国の騎士ゆえ、多大な報酬は控えさせて頂きました。何卒良き計らいをお願い致します。」
「うむ。書状にて今回の活躍は承知しておる。この場を以てゼニス、アナスタシア、マルスに蒼の騎士の称号を与える。」
「「謹んで拝命致します」」
「シスターイリスには蒼の乙女の称号を与える。」
「有り難く拝命致します」
「追って各々に金貨1000枚を慰労金として送るとしよう。」
「恐悦至極にございます。」
「では早速会談に入ろう」
アデル殿下は昨日、俺とアナスタシアと3人で話した内容を伝えた。
「ここで20年前のシレジア戦争が出てくるか…」
「そしてイリスだけでは無くゼニスにも暁の一族の可能性…」
「そして邪教の存在…」
「あくまで我々の仮説を基に考えられるシナリオに過ぎませんが。」
「いや…これは捨ておける話では無いだろう。よくここまで考えたものだ。流石アルテナの叡智と呼ばれるアデル殿下だな。」
「いえ、これはアナスタシア侯女の意見でございます。我々はあくまで魔石の分析をしたまで。」
「ほぉ。レオンハートの者達は皆優秀だな。」
「恐れいります、陛下。」
「今後、どう動いて行くか…」
「まずは魔石と邪教の関わりについてだな。オルフェリアとアルテナが狙われた以上、トラキアにも何らかの動きがあると考えるのが自然だろう。」
「シレジアへの調査も必要かと思います。」
「うむ。これに関して、クロード神父からの話を」
「お初にお目に掛かります。ヴェルドラの神父でイリスの養父、クロードでございます。」
「お養父様…」
「これから話す事は私が隠し続けた真実をお話しする必要があると判断し、ここに参上致しました。」
クロード神父が語り始める。
「私は20年前まで神聖教会で司教の座におりました。ウルバヌス大司教になってから教皇様からはかつての御威光は陰り、大司教の傀儡となっていったのです。そんな中、シレジアに邪教との繋がりが見られると言われたのです。
私はシレジアの潔白を訴えましたが聞き入れてもらえず、教会はトラキア王国と結託しシレジアに攻め入りました。私は教会に失望し、自責の念から教会を辞めてヴェルドラに移り住んだのです。せめてもの償いにシレジアの子供達を救おうと…」
衝撃の事実にざわめく。
「そんな中、私がヴェルドラに教会を構えてから5年ほどたったある日、1人の女性が傷だらけの状態で私の元に尋ねて来たのです。その女性は神聖帝国第一皇女レティシア様でした。レティシア様はウルバヌス大司教から謀反の疑いをかけられ、教皇の命で粛正の対象とされたと。帝国の追手から逃げ、私を頼ってきたのだと。そしてレティシア様は赤子を私に託して息を引き取りました。亡くなる間際、その赤子が幸せに暮らせるように出自は秘密にして育てて欲しいと仰ったのです。だから私はこの子を…イリスを孤児として育ててきました。出来る事であれば、今でもこの子が神聖帝国の嫡子である事は秘密にして頂きたいのです。これは亡きレティシア様の願いであるのです」
「なんと…」
「今や神聖帝国こそが邪教の巣窟と化しているやもしれません。しかしそれを証明する手立てが無く、私は立ち上がる事も出来ず、ヴェルドラで息を潜めながらイリスを守る事だけを考えて生きてきました。」
「よくぞ話してくれた。全てはここにいる我々の胸の中に留めよう。決して口外せぬように。」
「神聖帝国か。神聖帝国と邪教との繋がりを明らかにし、ウルバヌス大司教の目論見を明らかにする事が必要か…」
「邪教の目的がもし古の魔神の復活だとしたら四方のマナは守らなければなりません。あれは神殿とマナの力による結界で封じられていると言われております。」
「そうなると、次に事が起こるとすればトラキア王国とトール神殿か…。」
「あとはシレジアの再調査も必要になるかと。」
「シレジアでは王国再建のレジスタンスの活動もあると聞きますね。」
「シレジアの協力も得られれば…」
「トラキアへのトール神殿の保護と邪教との繋がりを掴む事とシレジアのレジスタンスへの接触の2つの動きが必要か。」
「トラキアでは年に一度の武術大会があるな。そこに参加するという名目ではいかがでしょうか?」
「なるほどな…」
「適任は…」
「私がオルフェリアを代表して参加させて頂いてもよろしいでしょうか?」
「ゼニスか…これ以上の適任は無いが…レオンハート侯よ、構わないか?」
「親心としては望まない所ではありますが、オルフェリアの騎士としては人選として間違いは無いかと。」
「ゼニスよ、引き受けてくれるか?」
「はい。お任せください。」
「ではトラキアへの潜入調査はゼニスのパーティに委ねる。シレジアへの調査はこちらで手配しよう。」
「我々アルテナもシレジアへの調査団を編成し向かわせましょう。」
「合わせて各神殿の警備の強化を。」
「私もアルテナに戻り強化致します。」
「ではゼニス達はクロード神父の護衛を兼ねて、ヴェルドラ経由でトラキアに向かってくれ。武術大会のエントリーはこちらでしておく。」
「承知致しました。」
「また宝物庫から好きな物を一つずつ持っていくが良い。これからの旅にきっと役に立つと思うぞ」
「恐悦至極にございます。」
この時の会談がのちのオーロラ同盟の前身に当たる、アルテナ・オルフェリア同盟の始まりとなった。




