アルテナへの帰還
ごく普通の領主の家系に生まれた魔力0の騎士ゼニス。魔力が使えない分、剣術に全振りした剣術馬鹿の普通?の騎士がひょんな事から助けた少女との運命の出逢いから様々な仲間と出逢い、世界を救うまでの幻想記。
アルテナの王宮に戻った俺達はその足でアデル殿下の私室に集まり、アーサー殿下がメリル鉱山での出来事を報告した。
「なるほどな…魔法師団の事は残念だった。後ほど遺体を回収して弔ってあげよう。そして良く無事で帰ってきてくれた。オルフェリアの騎士よ、どう礼をすれば良いか…」
「恐縮でございます。我々は友人の頼みを聞いたまでです。」
「私からも礼を言う。皆さんが来なければ私は生きて帰って来れなかっただろう。感謝の言葉では足りないくらいだ。」
「ご無事である事が何よりでございます。」
「サーシャも君達と出逢って見違える程に成長したと聞く。妹を導いてくれた事、合わせて礼を言わせて欲しい。どこで君達と出逢ったかは知らないがな…」
横目でサーシャを見る。
「お!お兄様!魔石!魔石の件は!!」
サーシャは必死に話題を逸そうとする。
「…まぁ、今回はアーサー救出の功績とオルフェリアの騎士を連れてきた功績に免じて不問にしよう。」
「ほっ…」
サーシャは安堵の溜息を吐いた。
そんなに謹慎処分が嫌なんだな…。
「魔石に関してだが、急ぎ分析はさせているのだが今暫くの時間がかかるだろう。」
「しかし、狙いは何なのか…。国の滅亡なのか、マナの弱体化なのか。そして本来存在しないはずの魔獣がなぜ突然出現したのか…」
「20年前の北の侵略戦争と繋がりはあるのでしょうか?」
「あの地に手掛かりが残っているのなら調べる事は出来るかも知らないが…」
「もし繋がりがあるとすれば北のシレジア、東のオルフェリア、そして南のアルテナと仕掛けてきたとすれば…残るは西のトラキアか。」
「次はトラキアが狙われると?」
「分からん。トラキアも同様に仕掛けられるか、逆にトラキアが関与しているか。」
「北のシレジア王国を侵略し滅亡させたのはトラキア側でしたね。」
「トラキアは大陸一の軍事国家。何を考えているかはまだ分からない。」
「一度、オルフェリア国王とも会談する必要がありそうだな。」
「そうですね。」
「オルフェリア国王にはこちらから急ぎ手紙を出し、会談の申し入れをしておこう。オルフェリアからの返答と魔石の分析結果が出るまで君達はアルテナに留まった方が良かろう。」
「承知致しました。」
「宿の手配と滞在中の費用はこちらで賄っておく。それまではサーシャ、彼らを案内して差し上げなさい。」
「はい。お兄様。」
「ご配慮、ありがとうございます。」
「ゼニスはこのまま残ってくれないか?今後の相談もしたい。」
「分かりました。」
「ではアデルお兄様、アーサーお兄様、失礼致します。」
俺を部屋に残してサーシャ達は部屋の外へ出ていった。
「さてゼニス。ゼニスから見てサーシャはどう思った?」
「はい。先の戦いでも思いましたがフリージア家の名に違わない才能の魔導士とお見受け致しました。」
「ほぉ…。」
「彼女は飲み込みも早いですし、発想も柔軟です。精神面を上手くコントロールする事が出来れば偉大な魔導士になれる可能性を秘めてるかと思います。」
「なるほどな。優秀な騎士は見る目も持ち合わせているらしいな。」
「兄様。サーシャはファイアーボールの軌道を捻じ曲げ、更にイグニートランスを発現させました。私のイグニートランスはケルベロスのブレスに掻き消されたのですが、サーシャのイグニートランスは突き破ったのです。」
「やはり魔力は我々を越えるか。」
「私も驚きました。」
「そこでゼニスに頼みがあるのだが…。」
「はい。」
「暫くサーシャを同行させてくれはしないか?」
「え⁉︎」
「サーシャは今までアルカナで色々な方法を試しても魔導士としての成長が見られなかった。しかし、君達と出逢って急な成長を見せてくれた。そしてあの子が誰かの為に何かをしようとする姿勢が一回り成長した証だと思う。」
「ですが…」
「何よりサーシャが君達の事を友と呼んだ。あの子はこの国に押し込めているよりもっと広い世界を見るべきなのかもしれない。無理なお願いなのは承知だ。受け入れてもらえないだろうか?」
「…我々は構いませんが…あとは本人の意思次第かと思います。」
「あの感じは君達と一緒に行きたくて仕方ないという感じだろうな笑」
「それに君達と旅をしている間は婚姻の話も反故に出来るだろうしな。」
「承知致しました。責任を持ってお預かりさせて頂きます。」
「妹をよろしく頼む。」
サーシャは兄殿下2人に大事にされているんだなと実感した。




