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サーシャの葛藤

ごく普通の領主の家系に生まれた魔力0の騎士ゼニス。魔力が使えない分、剣術に全振りした剣術馬鹿の普通?の騎士がひょんな事から助けた少女との運命の出逢いから様々な仲間と出逢い、世界を救うまでの幻想記ファンタジー

翌朝、宿の前に集合した俺らは軽く朝食を取って出発する。

侍女のクラリスが馬車を手配してくれたので馬車に乗ってアルテナに向かう。

車内では女性陣が和気あいあいと楽しそうに話している。

「なんか急に打ち解けてないか?」

「女ってよく分からないっすね。」

「昨日は夜通しガールズトークに花が咲いたみたいですよ。お嬢様のあんなに楽しそうなお顔は初めて見ました。ありがとうございます。」

クラリスは涙目になって感慨深そうに話す。

「これからなんだが、アルテナに着いたらサーシャ達はどうするんだ?」

「そうね…私達はバレないように王宮の裏門から入るわ。」

「そうか。俺らは陛下の書状があるから正門から行こうと思う。」

「じゃあアルテナに入った所で一旦お別れね!城の中でまた会うかもしれないしね。」

「そうだな。」

「アナスタシア達もゆっくり出来るならアルテナの街を案内してあげたいのにー!」

そんなこんなで道中進んでいくと、やはり暑い…。

まだ6月に入ったばかりだとゆうのに初夏のような気温だ。

「それにしても暑いな…」

「そうですね…さすが火の加護地域ですね」

「アルテナの街は快適よ?」

「そうなのか?」

「アルテナの街は全体に結界装置で結界が張ってあって、魔導具の能力で常に適温に調整されてるの。」

「へー!魔法ってそんな事も出来るんだな!」

「だからアルテナまでの辛抱ね!」


ドス!

いきなり馬車に何かが刺さった。

「ゴブリンの軍団だ!」

御者が叫ぶ

「戦闘体制!イリス、サーシャ、クラリス様はこのまま中にいてください。」

「はい」

「マルス!敵の数は?」

「囲まれています。ざっと20はいます」

いつの間にか馬車の屋根に登っていたマルスが答える。

「ゴブリンを統率している奴がいるな」

「恐らくゴブリンメイジよ。」

「さすが魔導大国だな。ゴブリンまで魔法を使うのか!」

俺、アナスタシア、マルスが陣形を組む。

「マルス!まずはアーチャゴブリンを狙え!」

「はい!ウィンドアロー!」

「アナスタシアは突入してくるゴブリンを迎撃しろ!」

「わかりました。」

アナスタシアと俺はゴブリンを迎え打つ。

どこからかファイアーボールが飛んでくる。

「マジックガード!」

イリスが魔法を防ぐ。

「イリス!助かる!」

「はい!私も出ます!」

「マルス、ゴブリンメイジの位置は分かるか?」

「探ってます!!」

今度はゴブリンの陰からワイルドファングが襲い掛かってくる。

「厄介だな…!」

「氷葬剣 コンチェルト」

アナスタシアの氷を纏った剣撃がワイルドファングを一蹴する。

「ヒュー♪」

「こんなの、私の魔法で1発…」

「ダメだ!こんな密集してる中で使ったら仲間を巻き添えにするだろ!それに地形を考えろ!森が燃えるぞ!」

「でも!」

「サーシャ、ヘルフレイムはダメだ!精度が低い!やるならファイアーボールだ」

「ファイアーボール…」

「集中して狙え!アーチャーゴブリンを狙うんだ」

「ファイアーボール!」

サーシャのファイアーボールは狙いを外れて着弾する。

「く…」

「サーシャ!もう一度だ!集中しろ!」

「ファイアーボール!」

「きゃ!」

今度はアナスタシアの近くに着弾。あわやアナスタシアに直撃だった。

「ダメ…私じゃ…出来ない…」

「大丈夫だ!恐れるな!俺らは弱くない」

「サーシャ諦めちゃダメ!」

サーシャは手の震えが止まらない。

「見つけた。」

マルスがそう呟くと船上でも放ったイーグルワインダーを射つと見事にゴブリンメイジに命中した。

「出かしたマルス!さてこっからは乱戦だぞ!あとひと息だ!」

「兄様!数が多…」

「アナスタシア!うしろ!!」

アナスタシアの死角からゴブリンアーチャーが弓を構えていた。

「ファイアーボール!!」

今度はアナスタシアを交わしてゴブリンアーチャーに命中した。

「出来た…」

「サーシャ!良くやった!この調子で頼む!」

「オッケー!!ファイアーボール!」

コツを掴んだのか次々とファイアーボールでゴブリン達を屠っていく。

俺やアナスタシアの行動を上手く交わしてしっかり狙っている。

指揮官を失ったゴブリン達はもはや俺達の敵では無かった。

「みんな、良く頑張ったな!」

「ちょっと焦りましたけど、なんとか上手くいきましたね。」

「皆さん、怪我は無いですか?」

イリスがヒールを掛けてくれる。

「俺らの連携も良い感じでしたね!」

「この数をこなせたのは収穫だったな。」

「……」

サーシャは無言で俯いている。

「サーシャも頑張ったな!」

俺はサーシャの頭にポンと手を乗せる。

「上手くいっただろ?」

「あの時…アナスタシアを守らなきゃ…って…」

「あぁ。」

「でも…失敗してみんなを傷つけちゃったら…って思ったら恐くなって…」

「サーシャ…」

「今まで1人で魔法の練習してきたから誰かを傷つけるとか考えた事無くて、ただ強い魔法を使えるようになりたいって思ってた…」

「戦うって事はな、力を振りかざしたり自慢する事じゃないと俺は思う。誰かを守るために強くなれるし、強くなりたいと思うんじゃないか?」

「アナスタシアを守ったのはヘルフレイムじゃなくて守りたいって想いがこもったファイアーボールだっただろ?」

「サーシャ。守ってくれてありがと。サーシャが守ってくれたから私は今笑えるんだよ。」

「アナ…スタシア…」

サーシャはアナスタシアに抱きしめられながら、アナスタシアの腕の中で大声で泣いていた。

今までの感情を全部吐き出すみたいに。

アナスタシアは優しくそれを受け止めて、俺達はサーシャが泣き止むまで見守っていた。

「みんな…ありがと…」

「落ち着いたか?」

「うん…」

「御者を待たせてるからそろそろ行こうか。」

「そうですね。サーシャ行こ」

「うん!」

俺達は馬車に乗り込み、再びアルテナへと向かった。


「私、なんか魔法制御のコツみたいなのが分かってきたかも!」

「魔法制御が安定して来たら次はファイアーボールの多重展開、イグニートランスの精度を上げる。そしてその先の魔法の習得…って感じだな」

「やる事多めね…」

「そりゃ一つ出来たらまた新しい課題に取り組むもんだろ?」

「アナスタシア…ゼニスって鬼教官ね…」

「兄様は鍛錬馬鹿だから…」

「アナスタシア、聞こえてるぞ」

「あ!そろそろアルテナが見えてきたんじゃない?」

話題変えやがったな…

「おぉー!あれが魔導王国アルテナかー!」

「オルフェリア王国とはまた全然雰囲気違いますね。」

高い外壁に覆われたその国は大小様々な塔がそびえ立ち、カラフルな色調も特徴的な街並みだ。

「もうこのパーティも終わりね…。この御恩と友情は生涯忘れられない物となるでしょう。皆さん色々とありがとうございました。」

サーシャは改まって御礼を言う。

「なんだよ!らしくねーじゃん!」

「私だってちゃんとする時はちゃんとするわよ!」

「サーシャ、こちらこそあなたと出逢えて良かったわ。また会いましょう!」

「サーシャ、元気でね…」

「うん!またいつかパジャマパーティしましょうね!」

「サーシャ、負けるなよ!」

「えぇ。ありがとう」

「皆様、私からもお嬢様をお導きくださり、ありがとうございました。この先の旅も女神様の御加護がありますように…」

別れの挨拶をしてサーシャ達は王宮に帰っていった。

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