アルテナの皇女
ごく普通の領主の家系に生まれた魔力0の騎士ゼニス。魔力が使えない分、剣術に全振りした剣術馬鹿の普通?の騎士がひょんな事から助けた少女との運命の出逢いから様々な仲間と出逢い、世界を救うまでの幻想記。
出発日当日。
「みんな忘れ物は無いかー?」
「大丈夫です!」
「では港に向かいましょう。」
4人で港に向かう。既に港には大きな船が停まっていて人々が乗り込んでいく。
「うわー。これが船かー!この船もでかいですねー!俺、こんなでかい船乗るの初めてです!」
「私もです。私は船自体初めてです!」
「イリス様、酔い止めのお薬飲んだ方が良いですよ!」
「そうしようかしら…」
そんな話しをしていたら何やら船着場が騒がしい。
「だーかーらー!お金は払うって言ってるじゃない!!」
「運航許可証が無いと乗せられねーんだよ。」
「鞄ごと盗まれたって言ってるじゃない!!」
「じゃあ再発行まで待つんだな」
「そこまで待てないわよ!このわからず屋!!」
船員と女の子が口論しているみたいだ。
金髪ツインテールに真紅の瞳の少女が身振り手振りで捲し立てている。
「兄様…あれってもしかしてアルテナのサーシャ王女じゃないですか?」
「ん?なんでサーシャ王女がこんな所に…?」
「それは分かりませんね…。」
俺は近くでオロオロしている女性に声を掛けた。
「どうかしたのか?」
「あ…はい…運航許可証を無くしてしまって、船に乗せてもらえないのです。」
「どこで無くしたか覚えているか?」
「あそこのベンチで食事をしていた時に見知らぬ男に鞄を盗まれてしまいまして…」
「男の顔は分かるか?」
「いえ…あっという間に逃げられてしまって…」
「もうこの近くにはいないだろうな…」
「そうですね…取り返すのは難しいかと思います。」
「そうですよね…。どうしても今日中にこの船に乗らないといけないのですが、許可証の再発行に身分証の確認などで2,3日かかると言われてしまって…」
「オルフェリアの人間では無いのか?」
「あ…はい…」
女性は歯切れの悪い返答をする。
「もしやあの方はアルテナのサーシャ王女ではございませんか?」
「!!」
女性は驚いた表情を見せる。
「私はオルフェリア侯爵家、レオンハート家の者です。オルフェリア国王の命でこれからアルテナに向かう所なのです。」
「いかにもあの方はサーシャ王女です。私はサーシャ様の侍女のクラリスと申します。」
「それこそ身分を明かせば乗せてくれるのではないか?」
「そうなんですけれど…」
「何か事情でもあるのか?」
「お忍びと言いますか…お嬢様がどうしてもオルフェリアの建国祭に行きたいと仰って…」
「アルテナ側に身分証の確認をされると困る…って事か…」
「はい…」
「なるほど…ちょっと待っていてくれ」
侍女にそう言って俺はサーシャ王女と全員の所へ行く。
「ちょっと失礼。」
「あ?通行証を」
俺は通行証を見せる。
「王宮発行の通行証ですね!どうぞ」
「あとこの女性は俺の知り合いなんだ。身元は俺が保証するから乗せてくれないか?金は払う」
「いや、しかしですね…」
「これで大目に見てくれないか?」
俺は指にはめていた指輪を抜いて船員に渡す。
「わかりました…。今回だけですぜ!」
「助かる。」
「最初から通してくれれば良いじゃない!!」
「お嬢様!…すみません、ありがとうございます。お嬢様も!」
「ふん!まぁ…一応御礼はしておくわ。ありがとう」
そう言ってサーシャ王女と侍女は船に乗り込んで行った。
「なんか感じ悪い奴でしたねー。」
「うーん…笑 でもマルスは気の強い女性が好きって言ってたじゃないか。」
「あんな爆弾娘はごめんですよ!」
「そうなのか?笑 まぁ事情があるみたいだしな」
「ここで心証を悪くしても後々面倒な事になるのも困りますしね」
「私達も乗りましょう!」
イリスに促されて俺らも船に乗り込む。
ほどなくして船の出発の汽笛が鳴り響く。
いよいよ出発だ。
「晴れて良かったですね」
「そうですね。このまま天気が持てば予定通り1週間ほどでリンドポートには着きそうですね」
「潮風が気持ち良いです」
「イリス様、あそこにイルカがいますよ!」
「本当だ!初めて見ました!」
和やかに船旅を楽しんでいると先程の侍女が話しかけてきた。
「レオンハート様。先程はありがとうございました。」
深々とお辞儀をされる。
「サーシャ様!サーシャ様!」
侍女に促されてサーシャも口を開く。
「あ…さっきは助かったわ。ありがとう」
ぶっきらぼうに御礼を言うサーシャ王女。
「いえ、お力になれて光栄です。」
「ところでなぜ私がサーシャだと分かったのかしら?」
「はい。サーシャ様のお噂はかねがね。その真紅の瞳と魔力の大きさで分かりました。」
「ふーん。まぁいいわ。」
「お嬢様、この方達はオルフェリア国王の命でアデル殿下に謁見のお約束をされているみたいです」
「お兄様に?ちょっと!私がここにいた事は絶対に言わないでよね!!」
「肝に銘じておきます。」
「サーシャ様は御公務でいらっしゃったのですか?」
「違うわ。私、一度オルフェリアの建国祭に行ってみたかったの!ブルーム祭なんてなんかロマンチックじゃない…♡」
「???」
「お嬢様はお見合いのお話がありまして…それに反発なされて…」
「嫌よ!!なんで好きでも無い男結婚しなきゃいけないのよ!」
「この調子で…」
「ブルーム祭りで運命の方に出逢えるかもしれないし…」
「その運命の方には出逢えたのか?」
「マルス!!」
「うっさいわね…」
「マルス…察しろ。出逢えてたら船に乗ってないんじゃないか?」
「ちょっと!あんた達、聞こえてるわよ!」
「なんか私の思っていた王女様と違いますね…」
「ふん!王女だってただの乙女よ!」
「お嬢様…もう曲がりなりにも成人されてるのですから…」
「もう御礼は済んだからいいわね?私は休ませてもらうわ!」
そう言い残してサーシャはドスドス歩いて船室に消えていった。
「申し訳ありません。恩人の方に不躾な態度を取ってしまって…。ああ見えて優しい方なんですよ」
「あれで⁈」
「はい。私は平民の出なのですが、周囲の反対を押し切ってまで私を侍女に選んで側に仕えさせてくれているのです。」
「へぇ…」
「お嬢様は生まれた時から上の2人の殿下と比べられて肩身の狭い想いもされてきましたので…悪く思わないであげてください」
「でも私が見たところ、サーシャ様の魔力量も相当だと思いますが…」
「はい。魔力量だけでしたら兄君すらも越えると言われています。ただあの気性と相まってうまく魔法がコントロールし切れないみたいで…。」
「なるほどな。」
「でも魔法学院で学ばれているのであればそのうち解決しそうなものですけど…」
「フリージア家は代々高名な魔導士を多く輩出してきました。成人と共に上級魔法や血継魔法を習得するのも珍しくありません。」
「まだサーシャ王女はそこまでに至らない…って事か。」
「はい。お嬢様も学院に入学されて、やはり焦りもあるかと思います。」
「サーシャ王女は歳下⁈」
「そうですね。私と同じ歳のはずです」
「アナスタシアと一緒⁈」
「もう少しお淑やかになって頂ければ嬉しいのですが…」
「なんにせよ、アルテナも色々抱えてるんだな。」
「では私も下がらせて頂きます。本当にありがとうございました。」
クラリスも船室へと戻っていった。
「じゃあ俺らも各々ゆっくりしようか!」
「はい。」




