母の贈り物
ごく普通の領主の家系に生まれた魔力0の騎士ゼニス。魔力が使えない分、剣術に全振りした剣術馬鹿の普通?の騎士がひょんな事から助けた少女との運命の出逢いから様々な仲間と出逢い、世界を救うまでの幻想記。
-その頃の女性陣-
「全く!久しぶりの再会なのに兄様ったらイリス様を置いて工房に行くなんて信じられない!」
「ゼニス様も都合があると仰ってましたし、まだ滞在時間はあるから…」
「もう…イリス様が誰かに取られても良いのかしら⁈」
「ゼニス様にとって私はただの神官の一人です。身分も違うし私には雲の上の方です…」
「そんな事は無いと思いますよ?」
「アナスタシア、からかわないでくださいね!」
「2人共、奥手なんだから…」
アナスタシアはイリスに聞こえないようにぼそっと呟く。
「さすが王都ですね。可愛らしいお店がいっぱい!」
「気になるお店があれば寄りましょう!」
「アナスタシアはどこか決まったお店はありますか?」
「私は仕立て屋に用があるので付き合って頂いても良いですか?」
「はい。喜んで」
「母から成人のお祝いで夜会用にドレスを1着作ってきて良いと言われているんです。」
「それは楽しみですね!あ!」
イリスは思い出したように鞄の中から小さい包みを取り出す。
「これ、私からの成人のお祝いです。高価な物では無いのですが…」
「え⁈イリス様が私に?開けてもよろしいですか?」
「えぇ。もちろん!気に入ってもらえるかは自信無いのだけど…」
包みをあけて出てきたのは丸い小さな白い陶器に青い鳥が描かれた入れ物で蓋を開けると桜色のルージュが敷き詰められていた。
「素敵…」
「これはヴェルドラ地方にだけ咲くお花から抽出した口紅なの。入れ物は成人した女の子が幸せになれるように…と願いを込めて、青い鳥の小物を送るジンクスがあるんです。」
「この口紅は王都でも人気でなかなか手に入らないって聞きます!こんな貴重な物を頂いてよろしいのですか?」
「私の手作りだから…笑 私も何かお返しがしたくて」
「イリス様…。凄く嬉しいです!大切にします!!」
「うふふ…喜んでもらえて私も嬉しいです」
2人は手を繋いで上機嫌で街並みを歩いていく。
「あ!着きました!」
サロン・ド・フォンティーナ。
母の学生時代からの友人でお気に入りの仕立て屋だ。
令嬢達も御用達でオーダー品だと予約待ちで数ヶ月とも言われている王国内外で人気の高級店。
「いらっしゃいませ〜!」
「フォンティーナ叔母様、お久しぶりでございます。ベルナデッタのの娘のアナスタシアです。」
「アナスタシア様〜!お待ちしておりました!またお綺麗になられて…」
「叔母様…暑いです!」
フォンティーナと呼ばれた女性はアナスタシアに抱きついて離れない。
「そちらのこれまたお綺麗な女性は?」
「ヴェルドラのシスターのイリス様です。この度、イリス様も国王様の謁見に呼ばれて御一緒しております。」
「あら!あなたがベルの手紙に書いてあったイリスなのね!この美人ちゃんも創作意欲を掻き立てるわね…」
「あ、私は付き添いで来ただけです!アナスタシアのドレスの仕立てを…」
「ん?ベルから何も聞いてない?」
「???」
「ベルの手紙には娘と娘の友人が2人で伺うから2人にドレスを仕立てて可愛いくしてあげてって書いてあったわよ?」
「こんな高級なお店、私には分布相応です!お金も無いですし…」
「ベルがプレゼントって言ってたわよ?彼女も1年遅れで洗礼を受けたから1年遅れの成人祝いだって」
「そんな…私…受け取れません…」
「イリス様、ありがたくお受けすれば良いと思います。母もイリス様の事をとても気に掛けていましたし、何より母は可愛い物や人が好きなんです笑」
「アナスタシア…」
「それに素敵なドレスを着て兄様を驚かせましょ!」
「そうよ!あのね、お金は確かに皆んなが皆んな持ち合わせている訳では無いわ?でも女の子は誰でも綺麗になる権利がある。それは金額の問題では無くて。女の子はいつ運命の人に出逢っても後悔しないようにお洒落をして準備するのよ。好きな人の前ではとびきり綺麗な自分を見て欲しいじゃない?」
フォンティーナはイリスにウィンクをして微笑みかける。
「ありがとうございます…私、どう恩返ししたら…」
「さっきの口紅でおあいこですね!」
「それはアナスタシアへのプレゼントで侯爵様への恩返しにはならないよ…」
「ほら、お人好しの家柄ですから!」
「でも…」
「さ!ちゃっちゃと始めるわよー!まずはアナスタシア様からで良いかしらね!」
そう言うとフォンティーナは商売道具を取り出す。
「ベルから手紙をもらってからデザインは何パターンか考えてはいたのだけど…シルエットまでは私が決められないからまずはドレスのシルエットを決めましょ!」
「どんなのが良いかしら…」
「可愛い目かセクシー目か…。でもアナスタシア様のスタイルを生かすなら私的にはベルラインかミニ丈かしら。」
「脚を出すのは恥ずかしいですね…」
「そう?私は似合うと思うけど。」
「イリス様はどう思います…?」
「私もアナスタシアにはミニ丈の方が雰囲気に合うかなって思います」
「…。分かりました!それでお願いします!」
「うんうん。絶対似合うと思うわ!それじゃサイズを測らせてもらって…」
話しながらも手際良く採寸をしていくフォンティーナ。
「デザインはその中から選んでもらえる?他にも店頭にある物で気に入った物があったら言ってね!」
「この青いバラのドレス、綺麗…」
アナスタシアが選んだのは胸元に青いバラがあしらわれているブルー系のドレス。
「良いわね!アナスタシア様のイメージにピッタリね!だったらスカートの部分にフリルでもう少しボリュームを出して…リボンなんか増やしたらどうかしら?」
「「可愛い…」」
アナスタシアとイリスが感嘆の声を漏らす…。
流石プロ。どんどんイメージを形にしていく。
頭の中を読んでるのか?と思うくらい。
「ドレスとお揃いのヘッドドレスも付けておくわね!」
「イリスちゃんも何となくイメージ考えておいてね♪」
そう言われてイリスもデザインブックや店内を見て回る。
その時、1着のドレスに目が奪われた。
「綺麗…」
薄紫色のドレスに満点の星空を思わせるような煌めき。作りかけのドレスはイリスの目にはキラキラして見えた。
「アナスタシア様のはこんな感じで良いかしら?」
「はい!出来上がりが楽しみです!」
アナスタシアは大満足!とゆう感じで上機嫌だ。
「じゃあ次はイリスちゃんね。こっちに来てもらえる?」
「はい。よろしくお願いします。」
「ん?イリスちゃんはそのドレス好き?」
「はい…でも私には…」
「良いわね!それはまだ完成まではしてないんだけどね」
「月の女神様みたい!イリス様の髪にも映えますね!」
「正解!これは月の女神をイメージしてデザインした物なの!ただ途中で行き詰まっちゃって…。でも確かにイリスちゃんのイメージにしっくり来るわね。」
フォンティーナはそう言うと薄紫色のドレスを引っ張ってきてイリスに着せていく。
「そうね…イリスちゃんに合わせるならマーメイドラインベースに変えようかしら?それに夜会でダンスに誘われても良いように裾にゆとりを持たせるようアレンジさせても良いかも。イリスちゃん、どう?」
「素敵です…」
イリスも鏡に映った自分のシルエットにボーッとしてしまっている。
「OK!次はデザインね!ベースはこれで良いとして…足元は邪魔にならないようにちょっとスリットを足して…ここのストーンは要らないかなー。この辺と裾はもっとレースを足しても良いかも…」
次々と材料を足したり引いたりしてどんどん形をアップデートしていくフォンティーナ。
イリスは蒸気させた顔でボーッとしている。
「よし!ざっくりとこんな感じでどうかしら?」
フォンティーナに声を掛けられて我に帰るイリス。
「わぁ…!イリス様、素敵です!さっきのとはまた別のドレスみたいだけど今の方がお似合いです」
「夢見てるみたい…」
「喜んでもらえた?私も嬉しいわ!こんな形でこのドレスを完成させる日が来るなんて!ありがとう」
「私の方こそ、ありがとうございます!」
慌ててお礼を言うイリス。
「じゃああとは細かい所はこっちで勝手にやらせてもらうわね!明日の夕方には間に合うと思うから取りに来てもらえるかしら?」
「はい!それではよろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
店先までフォンティーナに見送られ、手を振るフォンティーナに会釈して歩き出すアナスタシアとイリス。
「なんか楽しかったですけど少し疲れましたね。」
「そうですね…なんか興奮し過ぎて…笑」
「わかります!笑」
「本当にありがとうございます。」
「お礼なんて言わないでください。これで兄様もメロメロですね!」
「メッ!ゴホッゴホッゴホ!」
「楽しみですねぇ〜♪」
「もう!アナスタシアったら!」
「ふふ…♪そろそろ戻りましょうか!」
「はい。参りましょう。」




