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旅の始まり

ごく普通の領主の家系に生まれた魔力0の騎士ゼニス。魔力が使えない分、剣術に全振りした剣術馬鹿の普通?の騎士がひょんな事から助けた少女との運命の出逢いから様々な仲間と出逢い、世界を救うまでの幻想記ファンタジー

『汝…混沌の世界を生き抜き、邪悪なる力から世界を救う者となれ…』


パチ。

俺がこの世に生を受けた時、母とは違う誰かにそう告げられた気がした。


俺が生まれたのは自然豊かなミンツ地方で領主の息子として産まれた。

この地域は水の神の守護地域でセレーネ神を祀ってある神殿にも近く、のどかな場所だ。


「お兄様ー!」


3歳下の妹のアナスタシアと8歳下の弟のフィリップと家族5人、穏やかな生活を過ごしている。


「今日はこの国の歴史について学びましょう。領主となるゼニス様はしっかり学んでくださいね」

「女神様と5人の騎士物語だよね!」

「そうですね。ゼニス様はお好きでしたね。」

「うん!僕も女神様を守る騎士様になるんだ!」

「ではしっかりお勉強しましょうね」


神話の時代、神々と魔神の戦いがあった。

このセントランド大陸は神々が見捨てた地と呼ばれ、魔神に支配されようとしていた。

ただ1人暁の女神が人を救うために残り、自らの血を5人の戦士に与えて追い払ったという神話が残されている。

それから女神は国を5人の戦士に分け与え、火・水・風・雷・神聖の守護国が成立したのである。

そのうち水の英雄オルフェウスが与えられた守護国がその名にちなんだオルフェリア王国。

レオンハート家はその一端にある領地で森と湖の守護を任されている。


そして月日が経ち…


「なんで兄様までついてくるの?」

俺の後ろを歩く妹のアナスタシアが話しかけてくる。

「父さんの命令だからな」

「私だって1人で出来るのに…」

少し不機嫌そうに答える。

「父さんは心配なんだろ」

なだめるように話す。


今日はアナスタシアの初めての魔物討伐の護衛で森に同行しているのである。

15歳になると一人前の騎士と見なされ、通過儀礼とも言える狩りに出るのだ。


「私だって訓練してきたのに…」

「最近魔物も増えてきてるみたいだし油断は出来ないぞ」

「わかってます!」

「ハハハ…」


アナスタシアは確かにその辺の男どもよりは強い。

元水の神官長の母親譲りの魔力で魔法剣士としての才能がある。

俺には魔法の才能は無かったからな…

なんてったって魔力0…

それでも愛娘の狩りデビューは父さんは心配なんだろう。


実際、この辺の低級モンスターだったら問題は無いだろうな…。


「アイス!」

魔法を使いながら敵の動きを止めて留めを刺していく。

「氷葬剣 プレリュード」

氷を纏った剣撃が魔物を次々と倒していく。

しかし剣捌きが綺麗だな。

踊っているように次々と倒していく。

うちの家系は歴代最も美しい剣術と言われているがアナスタシアの剣術はとりわけ美しい。


ただモンスター退治をしている最中、俺は何か違和感を感じていた。

なんかいつもより数が多い気がする…


「よし!だいぶ片付いた事だし、ぼちぼち帰るとするか!」

「はい!兄様!兄様から見て私はどうでしたか??」

「特に問題は無かったかな!魔法を出すタイミングも立ち回りも上出来だった。それにアナスタシアの剣術はいつ見ても綺麗だな」

「剣では兄様にはまだまだ敵いません」

「ほら、俺は魔法が上手く無いから剣術頑張らないとね」

「私、兄様の剣術が好きです。それこそ私には真似出来ないですもの」

「ありがとな!」

そんなプチ反省会をしながら来た道を帰る。


「キャーーーー!!」


どこからか悲鳴が聞こえてくる!


「アナスタシア」

「行きましょう!」


悲鳴のする方へ馬を走らせていくと1人の少女が魔物に襲われていた。


「大丈夫か⁈」

「はい…」

怯えた少女は声を搾り出しながら頷く。


「ジャイアントアンクか…」

巨大な蜘蛛の魔物で先程魔物退治で出現していたアンクの上位種だ。

「本来この辺にはいないはずだが…」


「アナスタシア!無理はするなよ!」

「はい!」

「さっきと一緒だ!まず魔法で動きを止めるんだ」

アナスタシアは頷いてアイスの魔法を放ち、ジャイアントアンクの足を凍らせる。

「は!」

続いてアナスタシアが斬り込むがアナスタシアの剣は外殻に弾かれてしまう。

「固い…!」

「アナスタシア!退け!彼女を頼む!」

少女をアナスタシアに託し、剣を構える。

俺はまず奴の腕を切り落とす。

「ギャ!!」

そのまま奴の体を土台に飛び上がり剣を振り下ろす。

「ブルクラッシュ!!」

ふぅ…。

予想外の敵に驚いたが1匹だったのが幸いだったな。


「2人とも大丈夫か?」

「はい。兄様はお怪我は?」

「大丈夫だ。そちらの…えっと…」

「助けて頂きありがとうございました。私はヴェルドラの森で神官をしていますイリスと申します。」

「イリス。俺はゼニスでこっちは妹のアナスタシアだ」

イリスと名乗った少女は銀色の髪に紫の水晶のような瞳の美しい少女だった。


「イリス、怪我は無いか?」

「はい。大丈夫です。」

「君は1人か?」

「はい。セレーネ様の神殿にお使いに行く途中で乗っていた馬車が魔物に襲われました。」

「そうか…。セレーネ神殿までは距離はあるな。

もう日も暮れて来たから神殿には明日向かえば良い。近くの街まで送ろう。」

「そんな!私は大丈夫です!そこまで御迷惑はかけられません!」

「迷惑なんかではないさ。俺達もそこの街に帰る途中だから。それに女の子を1人で置いていく方が恐いよ!」

「そうですね。イリス様は兄様にお任せしてもよろしいですか?私は先に戻って急ぎ父様に報告しておきます」

「そうだな。頼む。」

「では後ほど」

アナスタシアは馬に乗り駆けていった。


「イリス、立てるか?」

「はい。…っ!」

「足を怪我してるな…。手当てをしなきゃな。ちょっとすまない」

「きゃ!」

俺はイリスを抱き上げて馬に乗せる。

「も…申し訳ありません…」

顔を真っ赤にさせて俯くイリス。

「すまない…」

なんかこっちまで照れてしまう…。

「ゆっくり走らせるから痛かったら言って」

「はい…ありがとうございます」

「イリスはヴェルドラの森の神官だったね?」

「はい。」

「あそこの森は一度迷うと抜けられないと聞くね。そんな所に教会があるのは知らなかったよ。」

「私はヴェルドラの森で育ったんです。母が私を産んですぐに亡くなって…母が亡くなる直前にヴェルドラの教会に私を預けたと聞きました。だから森で迷う事は無いです!」

「そっか…ごめん。初対面で失礼な事を聞いてしまって…」

「いえ!全然構いません!母が亡くなった事は悲しい事ですけど、神父様も本当のお父さんみたいに優しくて幸せですから」

そう微笑んで見せるイリスはとても穏やかで綺麗だった。

「良い人に巡り会えたんだね!普段は教会でシスターを?」

「はい。教会のお仕事の他に近くの孤児院で子供達と過ごしたりしています。」

「じゃあ旅の間は子供達も寂しがってるだろうね」

「私も寂しいです」

そんな話をしながら街に帰ってきた俺とイリスは我が家に向かう。

「ここは…?」

「俺の家だよ。まずは傷の手当てをしよう!」

「こんな大きなお家が…!わ、私、魔力が回復したらヒールで治せますので!」

「ダメだよ!放っておいて悪化したら大変だから。」

「で、でも、私こんな汚い格好で失礼になってしまいます」

「そんな事は心配しないで大丈夫だから!」

「そうですよ!私の服も貸しますから安心してください」

家の前のやり取りに一足先に帰っていたアナスタシアが迎えにきてくれた。

「アナスタシア様…」

「ひとまず中に入ろう!」

「はい…」

恥ずかしそうなイリスを半ば強引に家に連れていく。

「ただいま帰りました」

「アナスタシアから話は聞いた。大変だったな。イリス…だったかな?妻に手当てをしてもらおう」

父さんが迎えてくれる。

「ヒール」

「大丈夫そうね!明日には歩けるようになると思うわ。今日は安静にしてね?泊まる所はある?」

「ありがとうございます。宿はこれから探します。」

「あら。じゃあ今日はうちに泊まっていくと良いわ!あなたも良いわよね?」

「あぁ。今日はゆっくり休んでいきなさい。」

「いけません!助けて頂いて治療までして頂いたうえに…そこまでは甘える事は出来ません!」

「これも女神様のお導きだ。遠慮しなくて良いんだよ」

「そうよ。アナスタシア、イリスさんに着替えとお部屋ご案内してさしあげて」

「はい。母様。イリス様!行きましょう!その前にお風呂にした方が良さそうですね。」

ただひたすら申し訳無さそうにあたふたするイリス。

「今日は大変な1日だったからこれくらいは女神様も許してくれるさ!」

「…ありがとうございます。お言葉に甘えさせて頂きます。本当にありがとうございます。」


お辞儀をしてアナスタシアのあとをついていくイリス。

ちょっと強引な我が家だな…とイリスを見送ったあと、父に森であった出来事を報告する。


「父さん、ちょっと森の様子がおかしい気がするんです」

「あぁ。アナスタシアから報告は受けたよ。一時的なものであれば良いのだがな…。今のところは他に目立った事案は無いのだが。」

「はい。何事も無ければ良いのですが…」

「調査をさせよう。」

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