一日目
「夢、見てる?」
僕でも知っている、この世界の現実を。インターネット、SNSが示す世界は夢が見れなくなるには十分な強さがあった。冬休み目前の帰り道、一人家まで、そこには冬休みが始まる喜び、去年と変わらないそんな生活への退屈さ。
だけど、寝て起きて少しずつ進んでいく、休日のありがたみも無くなった。1月3日、今日はいつもとは違った、変わらない日々に飽き飽きして、昼食を食べてお気に入りのコートに袖を通す、僕は玄関から一歩踏み出した。
でも、なんも考えずに家出てってきちゃったな、はぁー。
「とりあえず駅まで行ってみようかな」
まだ三ヶ日、どこの家も新年モードか、門松に着物で歩くお姉さん、ここぞとばかりに餅を売る店。正月だな。
「なんやかんや隣駅まで来ちゃった、思ったより近いもんだな」
なんで家を出てきちゃったのか、今日で何か変わるのか、考え事してると時間はすぐたっちゃうもんだ。
客が入ってない老舗店、人が住めるとは到底思えない大きさの家、こんな時間に酔っ払っているおじさん、駅前にある古すぎるビル、個人経営のコンビニ、初めて見るものばっかで面白いな。だけどなんだか物足りない。
「もうすっかり暗くなっちゃったな、陽が落ちるのが早いな、もう帰んなきゃな」
今日は悪くなかったな、みじかにもまだまだ知らないものがたくさんあるなんて思っても見なかった。
だけど、もうちょっと遠回り、まだ物足りない目が輝くようなそんな出会いを求めて。
すぐ帰るつもりだったんだけどな、そうは思いつつブランコに腰を下ろす。公園のくせに最近はボール遊びもできなかったり一体何しろっていうんだよ。こんなに広いのに。
ブランコを持つ手がかじかむ、キシキシと音を立てて揺れる、息は白い、今日は月が綺麗に見える。
「夢、見てる?」
驚く、横を向くのにそう時間はかからない。
ドキッ
目に映った輝く後ろで結んだ長い銀髪、不敵に笑う口、少し目を細め様子を伺う。
ドキッ
黒い下駄を履き、黒い浴衣、そしてそれらが際立たせる服一面を覆う白い刺繍。
ドキッ
「今日は、」
彼女と目が合う、
ドキッ
「楽しかった、」
吸い込まれそうになる、
ドキッ
「でもそれ以上に、」
大きく手を広げて僕に問うその姿に、
ドキッ
「今ここにいてよかった」
胸はハイ好調に高鳴った。
だけれど、今気づいてしまった、彼女に出会って。
「ほんとに〜?そうはみえないけどな」
この渇きに。
「あはは、そんな顔してどうしたの?急に知らない人に話しかけらえてびっくりしちゃった?」
そういって、ブランコから飛び立ちブランコ前の柵の上を歩く。
「名前教えてください」
「すずね、17歳、散歩中、君は?」
彼女の笑顔に見惚れつつ
「人見ケイ、14中2、僕も散歩中です」
「こんな時間に一人で大丈夫?」
実際、彼女と話した時間はそう長くなかった。少し遅い時間に家に帰り、小言を言われながらご飯を食べ、風呂に入る。頭の中にはすすねさんとの会話、今まで見たことのないような見た目、12時を回っても頭から離れない。そうはいっても中学生時期に眠りに落ちた。
朝、ご飯を食べる、部屋に戻って漫画を読む。
「あれ!?もうこんな時間?」
昨夜の彼女そうすずねさんとの出会い、その衝撃は翌日夜まで響く。夕飯を食べ、思い立ったかのように家を出る。また、彼女に会いたくて。
テク、テク、テク、テク、タッ、タッ、タッ、タッ
はぁ、はぁ息を切らし顔を上げる。そして目が合う。
ふぅ 「また会えた」
「え?」
「え?」
「いや、びっくりした〜。私のことまだ見えるなんて。普通は気づかないんだよ?」
両手をあげ、目大きく見開いて。
「でも僕普通に話せてますよね?」
「ここは論より証拠、ちょっと街まで行ってみようよ」
彼女に手を引かれ後ろをついていく。
「じゃあ今から、あそこのお姉さんからティッシュ貰ってくるから、その後お姉さんにさっき銀髪で黒い服着た女の子見ませんでしたかって聞いてみて、橋の前で待ってるから」
そう言うと彼女は走って行った。
「お姉さんすいませーん、ティッシュくださー」
「はいどーぞ」
「ありがとう」
そのままこちらをチラリとみて歩いていく。
「すみません、ティッシュ貰えますか?」
「はいどーぞ」
「すみません、さっき銀髪の黒い服きた女の子見ませんでした?」
「すいません、見てないですね」
「ほんとですか!?」
「は、はい」キョト
「そうですか、ありがとうございました」
そうして僕はすずねさんに向かって走った。
「一体どう言うことですか!?」
彼女に近づくと彼女は耳元でいった。
「実は、私
幽霊なんだよね」
「えぇ、幽霊!?でも普通に触れますし、死装束とは真反対の服着てますよね?」
「基本は普通の人と同じだよ。ただ、少し時間が経つと記憶からいなくなっちゃうんだよね。」
「はい、さっき話したはずなのに」
「あとは、みんなが言ういわゆるお化けとは違う。死ぬ前の記憶があるわけでも、空飛べたりするわけでもなくて、できることと言えば透明になったり出来るぐらい。」
「うわっ、消えた、さっきまで目の前にいたのに」
あたりを見回すが見当たらない。
「ばあっ」
「うわああっ」
「ちょっと幽霊ぽかったでしょ?」
「もお、ホントにびっくりしましたよ、急に後ろから肩触らないでくださいよ。」
「自分のこと幽霊って言うけど、本当は自分が何かはわからないんだ。だから今日私のこと覚えててびっくり。」
「でも、覚えててよかったな、すずねさんと昨日あって、話してとっても楽しかったから」
「ちょっと、急に何よもう」
そう言うと彼女は少し顔をあからめた
「じゃあ連絡先交換しよ」
「幽霊でもスマホ持ってるものなんですね」
「そりゃもちろん、このネット社会の世界で私だって生きてるのよ」
「それもそうですね、ってもう10時じゃん!」
「ふふ、まだ中学生だもんね」
「じゃあまた明日来ますからね」
「…うん。また明日、ケイくん」
手を振る彼女を横目に家に帰った。
初めまして、わか深夜です。この話をどこまで続けるかはわかりませが、興味を持っていただけたら幸いです。ちゃんとした小説の形で作品を描いたのは初めてなので感想ドシドシお待ちしております。