Sheet4:罠
エルはコピーされたマクロをカラオケモニターに映し出した。
関係者以外の客が来たらすぐにオフしなければならないが、全員で見られる利点は思った以上に評判が良い。
「こほん、じゃあ説明を始めます」
何かのドラマで観たのだろうか、大学教授の講義かのように話し始める。本職が目の前に居るのに。
「まず最初にセルA1の文字列を変数に入れます。A1っていうのは一番左上の最初のセルです。で、その文字列と同じセルを探します。そしたらそのセルと同じ行のB以降のセルにB1の数字を加えます。最後にA1とB1の文字列と数字を消します。以上です、何かご質問は?」
アキラが胸元で挙手をする。
「はいアキラくん!」
「えーと、つまりどういう事だってばよ」
何故か忍者アニメの主人公の様な口調。
「恐らくA1の文字列は名前。マクロ実行前にあらかじめ入力しておくのでしょう。そして該当の人物の評価点にこれもあらかじめ入力しておいたB1の点数を上乗せする。まぁ明らかに改竄目的のマクロって事ですね…あっ、育美さんどうぞ」
エルは胸元で挙手している育美を指名した。
「名前と点数をあらかじめ入力するのはどうして?」
「コレを作った人がコーカツなのはそこです。…コーカツ、狡猾、合ってるっけ?悪賢いことね。マクロに直接書くと今回みたいに見られた時にすぐバレちゃうから、その都度入力して、マクロ実行したら削除される様にしてあるんだよね」
「ありがとうごさいます」
大塚先生が言った。
「これで不正の存在が明らかになりました。後はこれを誰がやってるかです」
「それをユーザーネームで特定しようというわけですね…しかし…」
薔薇筆が言う。
「大学構内のセキュリティがどうなってるのか存じませんが、他人のPCからログインするとか共用のPCとかありませんか?」
「…共用のPCはあります。もちろん学生のログイン出来るものではありませんが、それでもユーザーネームだけで個人を特定する事は出来ませんね。それにただ登録するだけにファイルを開いたのかマクロを実行させて改竄したのかの区別もつきませんし…」
「まぁ改竄する不正なマクロがあったって事でそれを削除して上へ報告するしかないんじゃないか」
もう一人の大塚が言った。
「だがそれだと犯人は分からずじまいじゃねぇか。再犯の可能性もあるぜ」
川口が幼馴染のフランクさで返す。
「ちょっと泳がせてでも犯人を特定した方が良いと思うがな」
エルが胸元で挙手をしているのにアキラが気付いた。
「はい、エルくんw」
「たぶん犯人はこれ何度もやってるよ。で、改竄してる時はなるべく早く終わらせたいハズだからこうしてマクロまで作ってるんだと思う。だとするとマクロの実行自体、ショートカットキーを登録してやってるんじゃないかな」
「ショートカット?」
アキラに問われたエルはエクセルを起ち上げ、マクロを編集する際にショートカットが登録出来る事を示した。
「先生、大学へ戻ったらこのマクロのショートカットが何なのか調べてください。罠を仕掛けようと思います」




