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第16話 集合

「あーっ……!! なんなんだよ、あの佐伯って男は! いちいち細けえんだよ! テキトーに振ってりゃいいだろ」


 僕の部屋に飛び込むなり、不満を口にする九重。

 不機嫌な顔で荒々しくもドカッと椅子に座る。

 九重は成介さんとの初任務でもあった訳だが……。

 だけど……それにしては随分と早い戻りだな。

 陽が落ちてから任務に向かった二人だが、日付が変わる前に戻って来ている。

 細かいとはいうが、手間が掛かった訳ではないのか……。


「塔夜、お前……仮にも元神職者だろ……テキトーに振るってなんだよ? お前、そんなんで神職者やってたのか。お前の父親が聞いてたら泣くぞ」

 呆れた顔を見せて麻緋が言った。


「仮ってなんだよ? 元とかつけるな。別に、何処に身を置こうが辞めた訳じゃねえぞ」

「はは。信じ難い現実だな」

「うるせえ、黙れよ麻緋」


「……どーでもいいけどさ」

 麻緋と九重が笑い合う中、僕の苛立ちが上限に達する。


「なんだ? ここは会議室か? それとも憩いの場か? いつから僕の部屋が談話室になったんだよっ!」


「あ? 違うのかよ?」

 さらりと返す九重。

「違えよっ! そもそも、今日は僕と麻緋は任務ないだろ。なんで普通にいるんだよ?」

「悪いのかよ? 話くらいあんだろ、相棒なんだから」

「その割りに実の詰まった話なんか一切してないけどな?」

「そうか?」

 睨む僕に麻緋は、ははっと笑う。


「出入口から一番近い部屋が白間の部屋だろ。任務から戻ったら寄るに決まってんだろ」

「そんなルールねえよ。なんかいつの間にか椅子増えてるし。まさかベッドまで持ち込む気じゃねえだろうな? 誰が同室許可するかよ。冗談じゃねえぞ」

「だって、俺の部屋、遠過ぎねえ? 疲れて辿り着けねえよ」

「それだけ騒げるなら辿り着けんだろ。もう少しマシな言い訳しろよ」

「マシな言い訳したら許してくれんの?」

 そう言って揶揄うような笑みを見せる九重。

「てめえ……ぶっ殺す」

「白間……お前、医者だよな? 仮にもよ。そこは生かしとけよ。それ専門だろーが。その発言は大問題だぞ」

「このやろー……」

「塔夜、今回の任務、結構重要だったんだろ?」

「ああ、まあな」

 麻緋はそっかと呟くと、目線を僕に向ける。

「それが塔夜になったからって、そうイライラすんなって、来」


「そうじゃねえ。そんな事はどうでもいいんだよ」


 そう言った僕を、麻緋と九重が同時にじっと真顔で見つめる。

「なんだよ?」

 僕は、二人の視線に不機嫌な顔を返す。


「来……お前……」

「だから、なんだよっ!」

「その発言は大問題だぞ」

「麻緋……お前までそう言うか……!」

 苛立ちが増す僕に、麻緋の指が小さく動き、後ろを差す。


「あ? なんだよ、麻緋」

 麻緋の指の動きに、なんだと後ろを振り向く僕。


 マジかよ。


「随分と楽しそうですね。声が部屋の外まで響いていましたよ」


 僕の部屋に成介さんまでやって来た。

「九重……」

「なんだよ? 白間」

「お前……入って来たならドア閉める癖つけろよ。開いたまんまだったじゃねえか」

「今かよ。はいはい、次からは気をつけますよ」

 軽く(あし)らうように言う九重を睨みながら、僕は言い返す。

「次はねえんだよ」

 九重とのそのやりとりに、反応を見せる成介さん。

「おや? 来。僕に聞かれてはまずい事でもあったのですか?」

「いや……別に」

 なんで僕なんだよっ。

 麻緋と九重が顔を見合わせてクスクス笑う。

「相手ペアの任務の報告を聞くのも大事な事ですよ」

「あー……分かってマス。そーですね」

 不満そうにもそう言った僕だが、成介さんは穏やかな笑みを見せた。

 成介さんの余裕な様子に、任務の詳細は知らないが、支障はなかったというのは分かった。


「それで……」

 成介さんの目線が九重に向く。

 成介さんはにっこりと笑みを見せると九重に言った。


「呪符も紋様も持たない分、僕は簡略化は一切しないので、細か過ぎて申し訳ありませんでしたね……? 適当になど、僕は以ての外ですので……拘りが強かったでしょうか?」

 成介さんは、笑っているようで笑っていない目で、九重に目線を向ける。

「うっ……いや……」

 焦った様子の九重だったが、聞いてたのかよと小さく漏らした。

 クスリと笑う成介さんだが、はっきり言おうが小声だろうが、全て耳に届いている事だろう。

 まあ……怒りのレベルを笑みで喩えるなら、然程でもないという事か。

 真意を知れず、察するしかないのは微妙に恐怖だが。


「まあ、それはいいとして……」

 九重は自分が座っていた椅子を成介さんに譲ると、ベッドに腰を下ろす。


 ……なんでだ。


「今回の塔夜との任務ですが……」


 真剣に話す成介さんに、麻緋も九重も真剣に耳を傾けているが……。

 僕は集中出来ていない。



 ここは相当広く、まだ僕が立ち入っていない部屋が幾つもある。

 なのになんでだ。

 僕は、半ば呆れながら溜息をつき、皆に言う。



「だから……いつから僕の部屋が作戦部屋になったんですか?」

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