表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
HELIOSはおひとり様  作者: HELIOS
7/29

第七話 火鍋専門店

 午前の仕事が終わった。午後の仕事まで二時間もあく。ゆっくりランチがしたいものだ。近くの店をマップ検索すると見つけてしまった。

「火鍋あるっ!」

 中国火鍋専門店。なんて魅力的。簡易的な火鍋は食べたことがある。それも汗をかくくらい十分美味しいのだが、いつか本格的なやつを食べてみたかった。専門店なら間違いないだろう。

 でも、どうせ二人名様からなんでしょう? HELIOSプライベート行動範囲には無かったよ。結構調べたもの。一人で行ける火鍋屋さん。この辺は調べたことはないし見てみるか。一人メニューあれば歓喜なんだけど……。

 ネットでメニューを確認する。火鍋専門店なのに中華定食も食べられるらしい……あ、ああああ!? 一人火鍋があるっっ! やったあああ!!

 ランチだから価格も優しめ。これを逃してはならない。行くっきゃない! もうランチに火鍋という選択肢しかない!


 お店に着くと店前にメニュー表が置いてあった。火鍋ッ! 火鍋ッ! ふふぅ〜どれどれ、パラパラと……一人火鍋どこ?

 ショックである。ネットと店のメニューが違うこともある。

 別のお店でランチをしようと、すぐ横の蕎麦屋さんを覗く。うわっ、混んでいる。混むだけあって美味しいのは知っているが、近所でも見かける店。ふーむ。

 ここでピコーン。もしかしたら表のメニューに置いていないだけかもしれない。

 他のお店探すのも大変だし、他のランチメニューも美味しそうだった。入るだけ入ってみよう。無理ならエビチリ定食だ。突撃しちゃおう!

「一人です」

 心の声と自分の無表情さに驚きながら伝えた。

「こちらへどうぞ」

 優しそうな女性店員さんだ。店内は意外と広い。適度に高級感のある中国風の内装は好きだが場違いでは!?  しかも、奥様方がお食事を楽しんでおられる。こんなところに一人ッッ。ひぇぇ。さっきまでの威勢はどこ!

 席に案内されると、隣には同士(おひとりさま)。この店は普段からおひとり様でも快く迎えてくれる店だと分かり安心する。落ち着けばそりゃそうだ。フレンチレストランじゃあるまいし。奥様方のパワーに負けちゃったぜ。

 席に座り、立てられたメニューを見る。目を見開いたよね。そこには一人用火鍋メニューがあるではないか。歓喜。

 置かれたメニュー表を手にとり、間違いないと注文を決めた。

「これをお願いします」

 ドキドキ。

「はいっ」

 良かったー! 一人前の料金が書かれているだけで、二名様からご注文可能という可能性も捨てきれていなかったのだ。

 もしかしたら同じように一人火鍋を求めて彷徨う者が行き着く店で、店員さんは慣れているのかもしれない。


 火鍋注文しちゃった。周りのお客さんだぁれも火鍋頼んでいないのに。しかも二色鍋。白湯スープと麻辣スープ両方が楽しめる。一人で二色鍋は追加料金かかるのだが、そんなに高くなかったので注文した。

 ドキドキしていると、ガスコンロが登場!

 え、早いな。道具だけ先に置いとくのかな。

 すぐにスープ入りの鍋! コンロ点火! そして、具材と白米!

 え、準備早くない? 次々くるじゃん。嬉しいけども。ていうか……。な、鍋がデカイ!! 四人用と間違ってませんか!? 一人なんですけど……。しかもランチ。こんなにスープもらっていいのだろうか。これがスタンダードなの?

 間違いなのではとビクビク。別の団体席と間違ってません?

「ごゆっくりどうぞ!」

 震えながら会釈した。

 い、いや、楽しもうではないか。大丈夫だ。「どうぞ」言ってくれたし。間違ってたら言ってくれただろうよ。

 スープを見る。二色鍋にして良かった。波打った鍋の仕切りで、スープの白赤で陰陽マークのよう。ビジュアルがいい。生薬がプカプカ浮いている。

 葱、(なつめ)、クコの実。分からない丸いのが三種。他にも入っているようだ。マジで分からんが嬉しい!


 程よくスープが温まったようだ。まずはスープだけ飲みたい。器は二つ用意してくれているので、それぞれを器に入れる。

 すごい油だ。麻辣スープは上部に油が浮いているので底からすくう。

「いただきます」

 まずは白湯スープを飲もう。ん、意外としょっぱい。でも優しいーっ。お、これは生姜も沈んでいるな? 鼻に抜ける薬湯みたいな香り。好き〜ぃ。健康にいい香り。

 何か小さいものが口内にある。白湯スープに沢山浮いているヤツだろう。噛むと爽やかな香り。クミンかな。

「ふー」

 辛くないのにもうポカポカする。胃から温まるな。

 お次は麻辣スープだ。やったぜ、唐辛子がたっぷり。火鍋といえばこのイメージだ。辛そう!

 ゴクリ。いい感じに辛い! 山椒きいてるぅ!

 スープの中から山椒の実を見つける。おお、茎付き。ランチの麻婆豆腐も美味しいのだろう。シビシビ。

 一気に体が熱くなる。辛くて小さく咳き込んだ。


「はー」

 満足。……じゃない! 具材を食べよう。スープではなく鍋を食べに来たのだから。

 具材はラム肉、白菜、キクラゲ、春雨、もやし、豆腐。ラム肉が好きなので嬉しい。キクラゲも生キクラゲじゃないか。ぷりぷりで美味しいやつ。健康にいいらしい。わーい、わーい。

 まずは白湯スープから。適当に具材を入れる。煮えるのを待つ時間。幸せなときー。

 こんなものだろう。火が通りやすい食材だ。

 小皿に具材を入れた。スープもすくう。

 おや、ニンニクと木の根みたいなのが出てきた。小皿に入れず戻す。栄養素よ、限界までスープに溶けきっておくれ。

 もう一度「いただきます」と心の中で唱えた。

 白湯スープと野菜があう! お肉も臭みがなくて美味しい。赤いクコの実の優しい甘さも良いな。棗も食べられるのだが、今日はスープに栄養素を出してもらおう。

 美味しく健康になっている気がする。

 次いくぞ!


 麻辣スープはボコボコとマグマのよう。煮詰まらないように火を弱め、具材を入れていく。絶対こっちも美味しい。小皿に入れていただきます。

 辛いものは熱いと余計に辛い。試飲したときより辛い。ゴホッ。だが火鍋を食べている感じがして嬉しい。ヒーッ。

 もやしと一緒に唐辛子を食べてしまう。固めの皮。スープに溶けだしているからか、そこまで辛くはない。

 忘れかけた白米を食べる。お米が甘い! 救世主のよう。

 お米を食べるとスープがもっと飲みたくなる。麻辣スープをすくう。底からニンニクが出てきた。白湯スープの三倍は入っている。

 午後から仕事あるけど……こんなに入っているし、一つくらい食べときたい! ニンニク好きなんだから!

 噛むとホックリ。熱くて火傷しそうになる。食べて良かった。うまーいっ。覚醒する気がする。午後の仕事も頑張れる。


 具材を食べ終え、最後に一杯づつスープを飲むことにした。鍋には美味しいスープが残っている。結構飲んだつもりなのに、二人前くらいスープが残っているような。具材を追加注文しても一人では飲み干せないだろう。こんなに沢山のスープを一人のためにありがとうございます。満喫しました。

口元をおしぼりで拭く。口周りがヒリヒリする。火鍋の余韻。それもまた良き。

 午後の仕事に行く前に胃を保護するものを飲んでおきたい。今更遅いかもしれないけれど、カプサイシンに負けないように。胃腸の強さに自信はないのだ。

 お店を出て自販機でミルクティーを買い、次の現場に向かった。

 お読みいただきありがとうございました。

 「中国火鍋専門店 小肥羊」さんにお邪魔しました。

 作中の手軽に火鍋を食べられるお店は「中華料理 梅香」さんです。


 日本に訪れた火鍋ブーム。当時は辛いものが食べられなくて興味なかったのですが、耐性がついてきた今なら「いける!」と堪能することになりました。

 いつか九つに区切られた火鍋も食べてみたいです。それはさすがに辛いもの好きな友人いないと食べきる自信ありません。


 ドラマで紹介されていた火鍋専門店にも行きたいのですが……残念なことに二名様からでした。おひとり様は期間限定であったらしいです。

 東京にあります。東京に行ってまで火鍋を食べたがるような友人はおりませんので断念。


 次話、ちょっと変わったティールーム。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
わー! 小肥羊!!(*´ω`*) 私の初火鍋もそこでした。読んでたらまた行きたくなってきた……! そんなに辛いの強くないので白湯スープはマストな私ですが、ちょっとだけ火鍋側も食べたくなっちゃいます♡ …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ