第四話 温泉街②
「ええぇぇ」
暗い下り階段があった。なんと温泉は地下。
怖っ。なんだこのジブリ感。千と千尋の神隠しだな。あ、急ご。
それにしても静かだ。もしかして貸切かもしれない。そうだったら嬉しい。
下に降りると、先客が二人立っていた。幽霊のようでビックリした。いたんかい。
高校生か大学生だろうか。友達で旅行かな。
さて、準備しよう。……なんで二人は突っ立ってるんだろう。誰か待ってるのかな。
すぐ異変に気がついた。髪が濡れていない。グラスを洗面台に置き、こちらの様子を見ている。困っているのか?
「〜〜〜〜?」
「〜〜〜〜」
外国人だっ。小声で中国語なのか韓国語なのかは分からない。
ああ、そうか。入り方が分からないのか。日本人のHELIOSでも戸惑う雰囲気だ。よし、見本を見せましょうね。
英語も無理なHELIOS。こういうときはボディーランゲージ。って、アースラも言ってた。
荷物入れはロッカーと、カゴがある。防犯を意識してロッカーを選択。
まずロッカーを開ける。ガチャ。開かない。えっ。
ロッカー自体も古いのだ。しかも外国人が戸惑うタイプの鍵。回さない。スライド式ってやつ?
諦めて一段下のロッカーを弄ると開いた。外国人二人もソロリと来て開けようとする。開けられなかったのだろう。
ロッカーに荷物を突っ込む。恥じらいはどこに。すぐ脱いだ。HELIOSは温泉慣れしているでな。二人が参考に見ていようが関係ない。フェイスタオルを持ち、浴室への扉を押す。
ンオッ。
立ち止まったよね。下調べで知っていたが古い。湿度が高め。手前に金の湯。奥に銀の湯。間に洗い場。仕切りはない。いい味と思えば好きなのだが圧倒される。正方形のタイルがビッチリだ。窓がないため圧迫感がある。幽霊きそー。
しかし、誰もいないのは助かった。四人でいっぱいになるような広さだ。湯船もそれぞれ二人〜四人までしか入れないだろう。
湯に浸かる前に体を洗う。当然だ。洗い場が二つしかないので急がねば二人が来てしまう。
早く洗い終えるぞという使命感。積まれた椅子と桶をセットし頭を洗う。体も洗う。あれ? 来ないぞ。
洗い終わりますよ〜、というところで二人が入ってきた。それを見て、ギャグ漫画のように目玉飛び出るかと思った。
パンツゥーーーー!?
なんと下着を来て、カゴに自分達の荷物を入れ入ってきたのだ。待て待て待てーぃ!
「あっ……」
喋れん。なんて言えばいいんだよ。言語の壁!
カゴを置こうとした一人がこちらを見た。
「あっ、あぁ」
せめて日本語喋らんかい。
身振り手振りで荷物を外に出すよう伝えた。二人は気がついて脱衣所に戻る。
は、恥ずかしーーッ!
かっこよく対応できない。しかも、スッポンポンだぞ!
それにしても、下着着用に荷物持ち込みとは。濡れるとか思わないのだろうか。防犯意識の高さというやつか。
色々考えていると、二人が戻ってきた。早く洗い場を空けなくては。
まだ下着を着ている二人。二人はHELIOSがスッポンポンだと気がつく。戻る。面白い。異文化に触れている真っ最中なのだな。
今度こそ準備万端な二人が戻ってきた。洗い場あと一分お待ちを。
キョロキョロしながら二人は洗い場に来た。一つしか空いていないと知り、一人は金の湯に手を伸ばす。入ろうものなら止めなくては。しかし、手を入れただけで入ることはなかった。安心。
よし、空いたぞ。使うがいい。
見本だ、と椅子と桶をシャワーで流してから元の場所に戻す。
お待ちかねの温泉だ。時間が無いので一回ずつしか入れないだろう。最後に金の湯にしたいので、先に銀の湯にしよう。
まずは湯加減チェック。ぬるめのようだ。このくらいの温度も好きだ。ゆっくり浸かれる。
銀の湯もなかなか良い。見た目は普通のお湯だが、湯を纏う手を舐めてみると塩味を感じた。化粧水のように優しい触り心地。美白になぁれ。
頭にタオルを乗せ極楽極楽。タオルを置く場所なんてない。頭が一番。
銀の湯に充分浸かった。外国人二人は洗い終えそうだ。金の湯に移動しよう。
銀の湯とは違い、底が全く見えない金の湯。下調べによると、ここの金の湯は濃いらしいのだ。クチコミにチョコレートと表現されていたが同意する。
入ろうと手を入れてみた。
「あっつ!?」
え? 無理無理。六十五度くらいない? 火傷するって。
だからさっき、あの人は手だけ入れて離れたのか。
入れないぞ。いいや! 入れるのは知っている。思い出せクチコミを。温度調節がどうのこうのって書いていた気がする。
周りも観察すると蛇口を見つけた。青色の印がついている。水が出るのだろう。
水で温度調節するの? 薄めるのは嫌だが仕方あるまい。何の説明もなかった。張り紙もない。怒られませんように。
蛇口を捻って水を出す。適温を探そうと、水と混ざりたての場所をかき混ぜる。
……あれ? 分かった!
すぐに水を止めた。
桶を使って金の湯をかき混ぜる。適温になった。高温の層があったのだ。これは教えてくれよ。
ほとんど薄まることなかった湯に浸かる。
濃〜い。温泉っって感じだ。接客とかどうでもいい。この湯のために来たのだ。やみつきになる。現代まで愛されたのが分かるなぁ。
とろけている横で外国人二人が銀の湯に入った。喋ってもいいんだよ。気にしないから。何人か教えておくれよ。
ポヤンとしていると、熱い湯が流れてきた。すぐにかき混ぜる。浴槽の端で源泉が足されているのだ。少し時間が経つと、また表面が熱湯風呂になる。
混ぜ混ぜっと。これ、外国人の子達も分からないだろう。
どうしてあげるべきか、と悩んでいると。二人は金の湯にやってきた。さては、とりあえず両方入るタイプだな。
先程、金の湯に手を入れた子が「暑いよ」的なことをもう一人に伝えている。
ボディーランゲージだッ。混ぜるジェスチャーをした。先客が平気に入っているので分かるだろう。
二人は混ぜてから怖々と入った。ミッションコンプリート。
三人で入るには狭いが、もう少しだけ浸からせてもらおう。
胴を溶かしたような湯。保温効果があるのだろう。ポカポカだ。
のぼせる前に上がることにする。時間も気にせねばならん。それに、二人でゆっくりしたかろう。
脱衣所への扉を開けると、足元に二人分のカゴがあった。荷物入りだ。ここに置いたんかい。
防犯意識? 手首にロッカーキーあったけど? 分からない。
盗む気はない。安心したまえ。
サクッと着替えて地上へと戻り、水を一杯飲む。このグラスどうしたらいいんだろう。返却方法は?
持ったまま入口へ向かうことにした。城の中を歩いている気分だ。趣があるというか。
「あ、卓球。すごー」
来るときも見たけれど。温泉旅館でちゃんと卓球台を見たの初めてかもしれない。古くて傷が多い。昔から大事にされているのだろう。
近くの棚にラケットと球がある。呪術廻戦の東堂と冥さんを連想した。ふふ。
一人だし、卓球は苦手なのでやらない。見れただけで満足だ。
段差に一度ひっかかりつつ、入口まで迷わず戻ってこれた。
外国人二人以外、誰にも会わなかったな。グラスどうしよう。
子供の声が聞こえたので玄関の奥を見ると、男性店員と遊んでいる子供がいた。お子さんなのかな。いいパパさんじゃないか。
ただの親切無愛想からイメージが良くなった。パパさんにグラスを返して温泉宿をあとにする。
すごくいい湯だった!!
休みを潰して仕事入れて良かった。
小腹が空いたのでジビエ饅を買い、そこら辺のベンチで食べる。味は普通の肉まん。食べながら温泉の口コミを書いておいた。HELIOSと同じ温泉好きに見つけてもらえるよう。
荷物を預けているロッカーに向かう途中、ノリで羊の脳みそカレーパウチと山椒味の炭酸せんべいを買った。
明日も普通に仕事だが、今日が休日気分で苦じゃない。
前回に続き、読んでいただきありがとうございました。
温泉の場所書いても良いんですけど、自分好みの温泉を探す楽しみもあるでしょう。
混雑しても困るので、気になった方はお探しください!
温泉で鉢合わせた外国人。面白すぎて。あの後も観光楽しんでくれたでしょうか。
会話できたらよかったんでけど(*´艸`)
内容がぐだるので飛ばしましたがお香屋さん寄ったり、山椒屋さん?覗いたり、晩御飯に蕎麦食べたり。
温泉のあとは近くでビール飲みました。夜寒すぎて一杯だけで退店。駅の方にBARもあるみたいでしたが、一人で入る自信がなかった……。
サラッと書きましたが、土産を買いました。
羊の脳みそカレー。カンガルーのカレー。ピラルクの煮込み。レトルトなのかな? 買ったはいいものの、いつ食べましょうね。
その店は沢山変わったもの(基本カレー)がありました。お店で選んだ商品食べられるらしいです。
山椒炭酸せんべい好き。家帰ってすぐバリバリしました。
日本三名泉、行きたいです。
次話、ビール回。
桃ヴァイツェン飲みながら後書き書いている作者。