第三十三話 Re:におい展
何を思ったのか調べ始めて偶然知る。以前体験した嗅覚エンターテインメント。 再び体験できると知る。
親、親友に紹介し。先に行ってしまった両者の感想を聞き、ついに自ら行ける日が!
開催場所は少し分かりにく場所であるが、半年前に来たことがあったため迷わず進む。赤レンガの壁を曲がると……ありました案内ポスター! 【悶絶から美臭まで】ね。記念にカシャ。
ふふ、いざ!
扉を開き、奥に進むと受付があっ……た。結構しっかりめの香りがする! お香? におい展に来たって感じだ。
右手に受付がある。当日券を買わねばならない。
受付のお兄さんと目が合う。えっと……? 何か言わないといけないやつだ。
「お願いします」
お願いします? ってなんだよ。
「当日券ですか?」
「あ、はい」
すごい静かに答えましたがね、内心は……「そうですよね! 前売り券もありますもんね!? 分かりにくい客でしたね!」と謝罪していた。
「お荷物お預かりしましょうか?」
仕事終わりで荷物が大きかったため声をかけてくれた。助かります!
荷物を預け、誘導のまま受付カウンター横の体験コーナーへ。
不思議な機械が置いてある。あ、これは事前情報もらってるぞ。何か飲むって聞いた。
「こんにちは!」
可愛らしいお姉さんが対応してくれるらしい。
「お酒、炭酸は苦手ではありませんか?」
「はい」
得意っすね。
小さな紙コップを渡された。炭酸水が入っている。
「まずは一口飲んでみてください」
承知。ゴクリ。強炭酸。
「次にこちらの機械にセットしてください」
謎の機械に紙コップをはめた。
「ボタンを押しながら飲んでみてください」
マグカップを持つように機械を持ち、ボタンを押しながら炭酸水を飲む。機械から香りの噴射。
「どうですか?」
「……? 分かりません。今日は鼻が駄目かもしれません」
何度か試したが、香りを捕らえきれない。部屋の香りが強いしなぁ……。
成功すればグレープフルーツ、ウイスキーの香りらしい。
「将来的に味覚障害をもつ人、アルコールに弱い人も楽しんでいただける技術なんです」
ああ! それはいい発明だ。発明の最新端を一応体験したわけだな。
次に入口から見えていた二体のマネキン。これは知ってる。前に嗅いだ。
男性、女性の香りがそれぞれ服に付いているらしい。当てろってね?
左のマネキンから。Tシャツ腹の辺りをクンカ。お香のよう。いい香りだ。
右のマネキン、クンカ。ん? 薄め? クンカクンカ。甘い?
前回は分かりやすかったのに。んー。右が女性かな?
答えは腹に書いているらしい。服をめくれと。いけない気持ち。
ペラッ。【男】なぬっ!? 納得できないぞ!
やはり、今日鼻が駄目かもしれない。
マネキンの隣には、においクイズ。
瓶が四つ並んでいる。底に答えが書いているらしい。
パカッ、くん。あら、わりといい匂い。特定は難しい。嗅ぎなれた匂いだと思う。
答えは……? 底を見る。【生乾きの臭い】瓶を叩きつけそうな気分だわ。
もう一度嗅ぐ。いや、生乾きの臭いではないだろう。もっと臭いって。
とことん今日は鼻に自信がない。
隣の瓶は? くんくん。
トイレの芳香剤! これは自信ある……【桃】そっちかい!
あーもう。
ショックで上の空だったのか、残り二瓶は無意識に答えを見てから嗅ぐという。勿体ないことをしてしまった。
次の部屋に進むと、小部屋が用意されていた。映像と香りの体験ができるらしい。
黒幕を退けて中に入るとテレビが。なんだかスモーキーな香りがする。
お。映像が流れる。三種ほど香りが噴霧された。映像後に香るけれど、楽しいやつ。
小部屋を出て、隣。真実の口がある。
なんで?
こちらもクイズらしい。ランダムでにおいが出るそうだ。
タッチパネルを操作し、クイズスタート。臭いの当たりませんように。
タッチパネルには、真実の口に顔を近付けるよう指示。口臭を吸うみたいな?
口と同じ目線になると、喉で機械が動いているのが見えた。フリフリ動いて香りを届けようとしてくれているのが可愛いなんてね。
ふわっ。甘い香り。これは分かるぞ。
【チョコレート】だ! 無事に正解した。
少しだけ鼻の自信を取り戻し、次の部屋へ行く。
あったー!
親が好きだと言った【偉人の香り】が四人分置いてある。
徳川家康。織田信長。豊臣秀吉。坂本龍馬。
いい香りだと知っているのでウキウキで瓶の蓋を開ける。
徳川家康。全体的に甘めだが、少しスパイシーで好き。お香なのだろうか。
香りの説明文を読む。甲冑に纏わせた香りなのか。戦場を思い浮かべる。魔除け、浄化の効果と。なるほど。しかし、この香りはリラックスしてしまうな。戦場向きなのかは分からない。個人的に好きなタイプだからかな。
続いて織田信長、豊臣秀吉。……甘い。伽羅などの香木によるものらしいが。本当にこのような香りを纏ったのだろうか?
徳川家康、織田信長、豊臣秀吉。香りが似た傾向の気もする。
日本の男性で初めて香水を使用したという、坂本龍馬をにおう。女の香り!!
甘い花の香り基調らしい。──香水を使用していた可能性は十分に考えられる? 一説かいッ!
偉人の香りに突っ込んでいると、女の子二人がやってきた。激臭部屋【シュールストレミング】があるのを見て勇気を振り絞っているところらしい。
激臭レベルMAX。しかし、自分は二回目なだよな。
コーヒー豆の香りで鼻をリセットし、女の子達より先に入る。まぁ、見とれ。
ウッキウキで激臭部屋に入った。アクリルケースに入ったシュールストレミング。初回は展示会最終日に近かったため強烈とは思わなかったのだ。今回は中盤。楽しめるだろう。
アクリルケースの蓋を開ける。パカパカ開けると穴あき部分から香る。
クンカ。ふむ。クンカクンカ。
ここで「うわー! 臭い!」と叫べたら面白いのだが。食えそー。口に含める魚介の香り。
もう一度、くんくん。あー、食べてみたい。
完全に冷めた顔で激臭部屋を出る。平気とはいえ鼻を労わろう。コーヒー豆の香りでリセット。
「荷物持ってて」
「分かった」
女の子達が激臭部屋に挑むらしい。上着と荷物に臭いが移らないようにするところが女の子らしい。
耳を傾けながら隣の昆虫由来の香りを嗅ぐ。こちらの方が私はダメージがでかい。【ミミズ】のにおいってなんだよ。
怖いなぁ……くんっ。ミミズとは?? どこかで嗅いだ人工な香り。これがミミズ??
ハテナいっぱいでカメムシ二種に挑む。これは前も試した。両方臭いんだよな……。
くんっ。ふう──。
くんっ。ふむ──。
ンー?
今になって気がつく。今回参加のにおい展はリアル路線ではないのかもしれない。
カメムシ、全然臭くないじゃないか。拍子抜け。
と、思って【アゲハ蝶の幼虫】のにおいを嗅ぐ。クセ! 汗を拭いたタオルを数日間放置した臭いというか。こんな臭いするの? 本当に?
コーヒー豆、コーヒー豆っと。
「臭い……」
シュールストレミングを堪能した女の子達。「臭い!」と騒ぐわけではなく、テンション低くマジトーンで「臭い」とな。そっかー、臭いかぁ……。
臭いことには違いない。
お次。
【植物由来の香り】は皆が想像できる説明不要の香り。
ユリ。沈丁花。
桜が優しくて落ち着くな。
みかんの花はフローラルな香りの奥にみかんを感じた。
うんうん、楽しめてる。お次はー?
次の部屋を見た瞬間「おっ」となる。激臭部屋があるーッ!
慌てるな。まずは手前から行こうじゃないか。
【香水に使われる香料】が四種。ジャスミンとかは分かるよ。
トンカビーンズ……って何?
甘く木のような香りらしい。くんくん。くんくん。あー? また鼻がいかれてきたのかな。甘いことだけ分かる。
よし、激臭部屋行こう。【臭豆腐】だ。入る。
フフフフ。前回と違うのは、瓶詰めの臭豆腐。開いた蓋が全開でないこと。中身が見えない。臭すぎたのかー?
アクリルケースの蓋をパカパカする。クンッ。あー、これは前より臭いかも? スーーーッ。しかし、なんだろう。旨味成分? 感じるぞ。シュールストレミングの方が食べれそうと思ったが、臭豆腐食べたことあるし、うんいける。スーーッ。ふむ。
「わー!」
先程の女の子達が追いついてきた。臭豆腐を目の前にして緊張している。同じように荷物を預け……。
「さっきの方が臭い!」
おお、そうか。
ッ……臭いものに慣れてきたらまずいだろう。自分が平気な臭いでも、他人が辛いこともある。一応接客業。臭い平気だと喜んでいる場合ではないぞ……。
ハァ、と【魔除けの香料】を嗅ぐ。
「…………?」
嗅ぐ順番間違えたなぁ……シナモンが強すぎて、その次を嗅いでもシナモンの残り香が!
出口が見える。手前には怪しい部屋が用意されている。激臭部屋のは違う異質な雰囲気。【極楽浄土の香り】とな?
説明文を読むに、極楽浄土をイメージした香り……控えめながら華やかな香りらしい。
──くんくん。分からんでもない。お香っぽいな。
極楽浄土でこの香りがするのは良いのかもしれないな。
ラストスパート!
待ってました。これは事前情報でいい香りだってさ。【コアラの糞】
人、犬、猫、牛、豚、鶏、馬。
糞の臭いはよく知ってる。馬の糞はいい香り! 割れば抹茶色!
予想。コアラは馬と同じ。
コアラが食べているのはユーカリの葉。青々しい香りがするのだろう……くんくん。ユーカリの精油じゃんッ!
リアルなのかは不明である。
「ワーーッ!」
新規客らしい。入口の方からよく通る男性の声。騒いでいる。不快ではない感じ。子供達を楽しませるような声。
家族できたら楽しいだろうな。それにしても、声優のようないい声のお父様だ。いや、声優か?
なんて思いつつ、次を目にした瞬間──うわっ。
【猫の肉球】の香り。家に猫がいるのでワクワクで瓶の蓋を開けた。
「………」
グッと蓋を閉める。
「違う」
こんないい香りではない! もっと汗臭くて、香ばしくて、たまらない臭いなのに! 完全に作られた香り。違う!
猫飼いとしては異議のあるものであった。
全部嗅ぎ終わり、出口に出るとギョッとした。
取材陣!
「ああ」
謎が解けた。いい声のお父様と思っていたが芸能人だったのだ。納得!
カメラが回っていないのに、壁に書かれた説明文を読んでいる。偉いなぁ。横顔しか見えない。芸能人に疎いため誰か分からないなぁ。ツルピカの頭。太縁メガネ。
よし!帰ろう。 まずは受付へ。
「そにに荷物を預けておりまして」
「はい、こちらですね」
荷物を受け取ったが、出ようにも、出口には取材陣が待機している。
うーん。一旦、男女のマネキンを嗅ぐ。
うん、やはり男マネキンの臭いに不満である。女性っぽい。
さぁ、と出口を見る。変わらず取材陣。帰っていいかな?
おそろしいほど無表情で取材陣の横を通り過ぎていく。
撮影の邪魔にならない時に、ゆっくり回れて良かったな。
「フーッ」
──感想。人工香料すぎて頭が痛い。
クーッ、と鼻を意識しながら駅へ向かう。海の近く。塩の香りは分からないものの、澄んだ香り。
思いっきり吸う。あー、安心する。ずっと嗅ぐなら、こういう香りがいい。日本の優しい潮風。
お読みいただきありがとうございました!
一年前の体験でした。
第十六話の展示とは別会社だったのかなと思っています。
HIKAKINさん体験はこっちだったかも?
2026年2月まで東京でも開催されているそうな。
次話、最近の話を載せます。




