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HELIOSはおひとり様  作者: HELIOS
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第二十九話 日本茶と茶器

 気にはなりつつ、行こうと思いつつ。知らず知らず、閉店してしまうお店は多い。


 今日訪れようと思っていたお店が閉業していた。なんと二店舗も。ショックを受けたが、その近くにも気になるお店。日本茶が飲めるお店。

 こうしちゃいられない。

「閉店する前に行かねば」


 立ちっぱなしの仕事を終え、足腰が痛い。それでも欲に忠実。

 到着すると二階へ続く階段。もうひと踏ん張り。

 店内に入ると展示された茶器が目に入る。内装が和でオシャレだ。空気がゆったりしている。

「いらっしゃいませ」

 チャイナ風のトップスを来た、髭が似合うイケメンだ。声やっさし!

「一人です」

 レジ横のタブレット操作を求められた。どうやら満席。待ち二番目らしい。順番が来ると電話してくれるようだが、疲れたので待たせてもらう。電話するほど混むことがあるということだな。

 待ち時間で気になっていた茶器を見ましょうね。棚に飾られている。雰囲気作り? それとも、気に入ったら購入できるのだろうか。分からないくらい店内に馴染んで素敵なのだ。

 いいな。茶器は詳しくないのだが、好きなのだろう。魂が震える。じっくり手に取って見たいものだ。触っていいのか分からない。

 ベンチに座ると、メニューを渡された。シワシワの味のある紙が小さいバインダーで止められている。めくると音がする。好き。

 ほう、中国茶もあるのか。ほうじ茶、和紅茶、お抹茶も……。しかし、煎茶を飲みに来たのだよ!

 かぶせ煎茶が二千円。すごいな! どれだけいい茶葉を使っているんだ。いい茶葉なのはメニュー表から何となく感じ取れる。

 最後に茶葉をおひたしにしてくれるらしい。お醤油と鰹節で……はぁ。染みる苦味が美味いよねぇ。いい茶葉買ったときは家でもする。ポン酢で。

 でも、かぶせ煎茶の気分ではない。普通の煎茶は……夏摘みと秋摘みがあるのか。荒々しく力強いという秋摘みを。

「…………」

 夏摘みは一煎目は甘みがあり、二煎目からは渋みがでてきます? なんだ。気になるじゃないか。一度で二度美味しいみたいな!

 ……ぬう。夏摘みで! 直感。今日はこちらが気になります。

 あとは……フードも何か。仕事の後ゆえ空腹ですぞ。

 下調べでは善哉が気になったが。最中いいな。そんな気分。

 玄米、フランボワーズ、苺。玄米最中とは? よし、玄米で!


 先に注文を済ませ、静かに待っていると順番が来た。思ったより早かった。

 店内はそこまで広くない。空いている席は……。

 一番奥のカウンターに通された。その席は特等席である。

 木の温かみのある椅子に座ると正面には茶器がズラリ。高めのカウンターでは、お姉さんによって今まさにお茶が煎れられているではないか。動画撮りたいッッ。

 特等席なのに聞く勇気も、ガン見する勇気もないので視界に入れて見る。

 お姉さんは、柄杓で茶釜から湯を取り出す。

 本格的!! お抹茶をいただく時は茶釜見るけど、煎茶でも使われるんですか!?

 あーーーー好きだわ。

 夏期はかき氷があるらしい。いいねぇ。しばらく最寄り駅に来ないと思うけれど。


「失礼いたします」

 お盆に湯呑み、後ろ手の急須、最中、スタイリッシュな茶こし。高級感!

「一煎目入れさせていだきます」

 カウンター越しにいたお姉さんが隣で煎れてくれる。アロマセラピーが始まりそうな優しい声色で説明が続く。この声色も雰囲気作りの一つなのだろうな。

「二煎目以降はご自身でいれていただきます。煎れ終わりましたら、急須の蓋はずらしておいてください」

 蓋を開けとくって、京都の宇治でも言われたなぁ。

 どれどれ。温かみのある白い湯呑み。滑らず手馴染みがいい。好きぃ。熱いので上部を持つ。湯呑みが熱いの嫌だと昔は思っていたが、これは手で温度が分かるようにされているとか。

 手から伝わる温度で熱々なのが分かるが、煎れたては味わいたいからな。猫舌なので気をつけてチビッとな。

「っ……」

 抹茶! お抹茶をいただいているような濃さ! チビッとだけなのに! 心境は、背景が宇宙猫。

 チビチビ……香り高い良い茶である。甘みがあると説明文にあったが、確かに茶の優しい甘みだ。

 ゆっくり大切に飲みたい。ホッ。

 相変わらずこっそり見るが、目の前で他のお客様のお茶がいれられている。いい雰囲気、最高。

 どうして茶釜と柄杓で煎れるお茶って見るだけでも心が踊るのだろう。日本人だから?

 店内BGMでピアノも流れてはいるが、川のせせらぎのような音量。これがいい。日本人で良かった。性に合っている!


 ああ、しまった。煎茶にテンションがあがって半分も飲んでしまった

 忘れていたよ最中。まあるい最中。巻かれていた紙を解いて邪魔にならないように折る。

 手の中にすっぽり最中。期待していいかね?

 パリッ!

 んおおー! すごいいい音! 湿気を感じないからお店で餡子を詰めてくれているのだろう。

 中が気になる。玄米。齧った所から覗く。

 片面に餡子を詰め、その上に玄米あられを散らし、もう一枚で蓋をして完成。ギッチリ中身が詰まっていないからこそ、分かる作り方。

 ワビサビ? 口当たり的にも、詰めすぎないのがベストなのだろう。

 しっかり重めの餡子なのに優しい甘さ。 最中のパリパリと玄米のカリカリ。食感と音がいい。

 忘れちゃいけない。そこにお茶ですわ。ツツッ……。ふぁっ、と解ける。くー! この安らぎ。たまりませんなぁ。


 ゆっくり飲んでいるつもりでも、もう三分の一。二煎目もお湯を貰えるのだが、自分は人見知り。店員さんに声をかけるのは勇気がいる。

 カウンターだし、顔上げて目が合えば分かってくれるか?

 などと悶々としていると背後に気配。

「お茶のおかわりいかがですか?」

 声をかけてくれたぁぁ! すごーく、ありがたい。残りのお茶の量なんて見にくいだろうに!

「お願いします」

 声量が出ないため、分かりやすいように深く頭を下げた。

 目の前で茶器に湯が入れられる。嬉しい。

「四十秒経ってからお煎れください」

「はい」

 一、二、三……って。手元には一煎目のお茶。

 四十秒で飲みきりな! ってか!?

 Dr.STONEの石神千空のようにカウントする。脳を並列に使え。お茶を楽しむことを忘れるな。

 ゴクリ、ぷは。十二……十三。まだゆっくりできる。

 コクコク……二十。あと一口。

 ゴクン。三十五……茶こしを湯呑みにカシャン。急須を持ち上げる。四十秒ジャストだ!

 完璧すぎるな? ととととと。

 三煎目もいただけることを期待して蓋をずらしておく。

 どんな味に変化しているのだろうか。

 アチチッ。最中食べ、少し冷ましてからっと。

 ごくっ。甘みが落ち着いた分、旨みが増えた気がする。一煎目より飲みなれた味。落ち着くなぁ。

 にしても、持ち上げた急須が軽く感じた。色は黒地に金を塗り重ねたような。陶器なのか? 不思議に思う。持った感じ金属っぽさはないのだけれど。何焼きとか分かればカッコイイのだが。

 凝視する。おっ。蓋をずらした所、土っぽさがある。陶器だ!

 素敵。両手にとって中を覗いたり、底にあるであろう作家名を見たりしたいのだが、この雰囲気ではする勇気が出ない。

  

 三煎目の湯を貰うことにした。急須をお姉さんにお渡してすぐに残りのお茶を飲む。これで余裕で四十秒を待てる。

「二分ほどおいてください」

 あ。時間変わる可能性考えていなかった! 食い気味でお茶流し込んでいた。恥ずかしい。

 時間を確認し、ゆっくりお茶を飲む方向に気持ちを切替える。

 仕事の連絡を返していると二分が経つ。三煎目を注いだ。

 不思議なのは三煎も飲んだのに、茶こしに一枚の葉も流れ落ちてこないこと。大きな葉なのだろうか。

 透き通った美しいお茶ができた。蓋は閉じておく。

 くいっ。ほー、優しい渋み。これは余韻がいいですわ。広がる波紋のよう。

 最中を齧ると、他のお客さんが食べる最中の音が聞こえてきた。遠くから聞こえる最中の音も良いものだ。

 お茶を口に含む。最中の玄米あられの香りと、軽やかなお茶が合わさる。鼻から抜ける香りが玄米茶のよう。

 落ち着いて背を後ろに引くと、カウンターの奥に視線がいく。背を向けたお姉さんがガスコンロを使ってなにかしている。茶を炙っているのだろうか。

 茶香炉を連想する。ほうじ茶かなぁ。

 チャキチャキと作業するお姉さん。正面に向き直し、長方形の箱をカウンターに置いた。

 ……ハッ。それは!

 目の前で鰹節を削り始めたではないか! 硬いのがわかる音。香りが流れてくる。

 これは、茶葉のおひたしの準備だろう。

 鰹節が削りたてなんて! 二千円の価値あり。

 そして、お姉さんの所作が美しい。箸の置き方から茶器の持ち上げ方まで。

 本当はもっとガン見したい。気配察知と、心の目で見るのだ。

「お茶のおかわり、よろしいですか?」

 おっ。まさかの四煎目いけるんですかい? というか、何煎目までいけるんですか?

 ここまで美味しくいただけます、って目安がほしい。茶葉ってものによっては七煎目までいけるもんな。

「大丈夫です」

 断りのジェスチャー。手を横に振る。

 お茶好きとしては四煎目ありがたいが、三煎目までと思って蓋はずらさなかった。お腹の具合を考えてもストップしておこう。

「急須下げさせていただきますね」

 存在感がなくなったお盆。少し寂しい。それを感じながら茶を飲む。この感情も良きかな。

 三煎目は飲みやすいお味で、早めに飲み終えてしまった。

 ご馳走様でした。

 席を立ち、身支度を整える。

「ありがとうございました」

 お姉さんが言う。今だ!! 正面を見て顔を見た。かわいいッッ!?

 所作からキッチリしている人かと思ったが、花のような笑顔ではないか。もっと見ときゃ良かった!

 会釈をして伝票を取り、レジへ向かう。

 店内には男性のおひとり様。若いカップルがいた。皆お茶好きなんだね。ふふ。

 胃も心も満たされた。

 次はかき氷を食べに来たいな。

 お読みいただきありがとうございました!

 今回お邪魔したのはティーハウス「wad」さんした。訪問時は冬でした。

 周りを散策すると、気になるお店がまだまだ見つかります。


 少し前にイベントで利き茶を友人としました。

 三つの中で一番高級なのはどれ? というもの。

 こうして美味しいお茶を飲んでいるので、簡単に当てられました。

 友人は自分の好みを分かっているので、苦手なものを選んで当ててました ꉂꉂ(ᵔᗜᵔ*)


 だいぶ没話が増えました。ここで紹介して供養します。


〜トルコの朝ごはん〜

 第二十一話目の再来店。美味しかったです。仕事の都合で感動を上手く書き残せなかったので没。


〜ブンモジャ〜

 ショート動画で見かける謎の食材。気になって麻辣湯を食べに行きましたが。

 お店の対応が悪く……。読んでいて楽しくないかなぁと投稿迷って没。

 ブンモジャはもちもちで美味しい。真ん中にストローのような穴があるタイプを食べました。猫舌の敵。

 牛筋麺が好き!


〜黒湯温泉〜

 御谷湯さん。スカイツリーが見える、ドラマで紹介されていた温泉。メモが少なすぎて、リアルに書けるか不安になって没。いい湯でした。


〜夢の国〜

 第二十三話の後、ディズニーシーでカクテルを飲む話。カクテル話は千文字程度で、有名すぎてアトラクションの話しても面白くないだろうと没。


〜深夜BAR〜

 疲労が溜まりすぎて深夜に家を出てBARに行った話。疲れすぎていたのか書いている内容が普通すぎて没。


〜地下のティーハウス〜

 第一話にする予定だった店。第十三話の後の話。

 ルフナを飲みに行きました。

 書いた内容が普通すぎたので没。


 供養、供養。


 次話、梅サワーの予定。

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― 新着の感想 ―
茶葉のおひたし……!? えっ、なにそれ、すごくおいしそうです(*´ω`*) お茶をゆったり味わって飲むなんて贅沢ですね。 素敵な時間の使い方、読みながらこちらも穏やかな気持ちになれました。 HELIO…
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