第二十四話 ウルケルを求めて
本日の仕事を終えホテルに着いた。荷物を放って目的地へ向かう。美味しいビールが飲みたいのだ。
大阪でそれを飲んだとき「美味い!」となったビールがある。チェコのビール、ウルケル。缶でも見かけるが、生ビールは格段に美味い。柔らかい甘みがあって飲みやすい。自分はピルスナーが好きだと知らしめたビールである。
生ウルケルを飲める店は少ないようで、大阪で飲ませてくれた店の奥様が東京の店を教えてくれた。
ホテルからテクテク歩き、江戸前寿司を八貫ほど食べ、さらにテクテク進む。
うへぇ治安悪い……綺麗な姉ちゃん沢山。銀魂の聖地、夜の歌舞伎町に行ってみたいと思ったけど十分だな。
目的の店を発見した。外から中を覗く。店内は広いのに満席だ。かなり賑わっている。
「いくぞ……」
恐る恐る中に入ると、お客さん達の声が大きい。入口の店員二人も気がつかないほどである。プルプルプル。
「あの、一人なんですけど」
入れます?
おひとり様なので席があった。カウンターに通してもらう。
飲むのはウルケルと決まっているが、一応ビールメニューを見る。この雰囲気で飲むアサヒビールも美味しそうだ。
ツマミは……山ウド? 食べたことない!
注文! 新規客ここにおります! カウンター越しのお姉さんが気がついてくれる。
「ウルケルと、山ウドの酢味噌ください」
こんなに混んでいるのにスムーズな注文。やったぜ。いい店は影薄い人間でも気がついてくれる。
目の前でウルケルが注がれている。ふふ。自分のビールぅぅ。
注ぎ終わる前に山ウドが来た。これが山ウドか。黄色っぽい大根みたいな。
「どうぞ!」
ウルケルもきた。タイミング素晴らしくないか? 漫画かよ。
まずはウルケルをゴクリ。うめー。でも、大阪で飲んだやつの方が美味い。甘さより苦味が勝つ。注ぎ手の違いでこんなに変わるのか? でも、生ウルケル美味いから良し。
大坂で教えてもらった素晴らしい注ぎ手はいないのだろうか。男性だったはず。
棚に飾られているサインの中に手塚治虫による似顔絵がある。この人か? 似た人はいない。ビールの泡で爪楊枝が立つと聞いていたのだけど。
それにしても手塚治虫、絵うまいなー。ゴクリ。
山ウドを食べてみよう。山菜が好きなのだよ。
酢味噌を纏わせる。パリパリ。歯ごたえしっかり。優し苦味。酢味噌が合う。これうめぇっすわ。
ウルケルグビグビ。ウルケルの丸っこいビールグラスが好きである。
美味しくてあっという間に飲みきってしまった。どうしよう。もう一度ウルケル……いや、沖縄のオリオンビールを頼もう。この店だと味が違うかもしれない。プレミアムオリオンって書いてるもの。
「オリオンと、刺身の中トロください」
「すみません。売り切れてしまって……」
まさかの両方! さすが華金!!
であれば。
「ウルケルと大トロを」
ウルケルを飲みに来たのだから飲みましょう。
刺身は築地から直送らしいので食べたい。鮮度抜群であろう。
だんだんと店の賑わいに慣れてきた。ビアパブらしくていいかもしれない。
二杯目ウルケルを飲んでいると、大トロが届いた。おお、見た目から筋しっかりあるな。しかし、千円以下で分厚く八切れとは凄い。
可愛らしい一人用ガラスの醤油さし。小皿に醤油を溜め、大トロをつける。醤油に油が広がる。
アムっ。筋はあるが濃厚な香りと脂。うまーい。大トロ正解。我が家の愛猫に食べさせてやりたい。
鯛とかの白身魚派、魚卵派だが、こう美味しいのを食べると鮪の人気も頷ける。
そこにウルケル。口の中がスッキリする。お刺身には日本酒派だが、これもありである。
慣れない土地で美味しい鮪とウルケル。これ最高の夜ではなかろうか。
少し分厚めのツマをバリバリ食べる。
すると、外国人が入ってきた。東京は外国人を多く見かける。日本を楽しんでくれているようで嬉しい。
「フィッシュアンドチップスとチョリソーを」
って思ってたのに日本語ペラペラじゃん!?
よし、次行こう。
ほろ酔いでウルケル一件目を出ると、二件目に向かった。歩ける範囲なのが嬉しい。
こちらも教えてもらったお店。二階へ上がると満席に近い。
近くのお兄さんか来てくれる。
「予約していません。一人です」
「カウンターか、スタンディングテーブルどちらにされますか?」
どっちでもいい。スタンディングでもいいが、通路の近く。邪魔ではなかろうか?
「どちらでも大丈夫です。邪魔にならない方で」
迷ったら相手に聞け。これは仕事で身につけたスキル。
独特な返しだったのか戸惑われてしまった。すみません。
「では、カウンターへ」
カウンターへと案内される。なんと隣にはおひとり様。綺麗なお姉さん。仲間ですね。なんて……隣に並ぶにはオーラ負けしてるけれど。
「こちらメニューです」
座るとアフロヘアの男性が来た。黒人だが日本語ペラペラである。黒人好きだし、若くてイケメンで仕事ができそうな雰囲気。優しさが滲みでている。
「当店初めてですか? ビールの説明をしますね。注ぎ方が三種類ありまして……。ご注文お決まりになりましたらお呼び──」
ほうほう。飲み物は決まっております。
「ウルケルください」
まずはこの店のウルケル飲ませてください。
サイズと注ぎ方を選んだ。
さて、フードは...…隣の美女の食べるポテトサラダが黒胡椒多めで美味しそうだけども。
「バーニャカウダと、フィッシュアンドチップスください」
隣で同じもの頼むの恥ずかしいからね。
お楽しみのウルケルが届いた。
どれどれ、ゴクリ。美味しい!
従兄弟家族はサッポロビールをひたすら飲む。私は色々飲みたいタイプなので、同じものをずっと飲むなんて良さが分からなかったけれど……。ウルケルは何杯でもいける味かも!
でも、大阪で飲んだ味の方が好みだな。大阪より苦味の方が勝つ。他の人はこちらの苦味がある方が好きな可能性あり。
また、大阪のウルケル飲みに行きたいな。
バーニャカウダと、フィッシュアンドチップスが届いた。
バーニャカウダ。野菜食べようという意思である。キュウリ、パプリカ、セロリ、ニンジン。ソースが美味しい。
野菜の瑞々しさとウルケルが合う。
フィッシュアンドチップスは定番だろう。
「お好みでこちらをどうぞ」
モルトビネガーキター! かけますとも。
白身魚にモルトビネガーをかけ、タルタルソースを絡めていただく。もぐもぐ…...くはっ!
明らかに鮮度のいい魚を使っている。ビール目当てで来たのに、料理もここまで美味しいなんて嬉しい。フワフワなお魚。そこにモルトビネガーの酸味とタルタルソース。ウルケルが飲み進むね!
「ご馳走様でした」
けぷーっ! かなり満足した。酔った勢いもあるが、仕事アカウントに二件のお店を紹介するほどの充実感。
こういう投稿するから、お客様にもお酒好きとバレてしまっている。
同業者から洋酒ケーキを貰ったときは嬉しさと恥ずかしさがあった。
「ん?」
お客様からコメントが来た。この辺りでオススメのお店紹介である。なんだと。次回の楽しみまで得てしまったではないか。
明日も朝からお仕事。栄養、気力、エネルギーチャージ充分。
機嫌よく安全にホテルへと向かった。
お読みいただきありがとうございました。
今回お邪魔したのは「ビアライゼ '98 」さんと「Brasserie Beer Blvd.」さんでした。
時間があれば今年も行きたいですね。
大阪のお店は移転してしまって……。まだご紹介ができません。
作者はIPA苦手説があるため、大阪で飲んだウルケル派なのかもしれません。
広島の洋酒ケーキ、美味しいです。
次話、ケーキ食べたい。




