第二十一話 世界の朝御飯
仕事の都合で東京にやってきた。東京も早朝は静かである。
前日、仕事が終わって帰宅後すぐに夜行バスへと急いだ。そのため晩御飯がクリームパン。朝から空腹度MAXである。
お風呂も入れていない。コンビニでボディーシートを購入して使った。知らなかった。早朝のネットカフェって同じ目的で混むのだと。
温泉などは営業時間外なので、先に朝御飯を食べることにした。美味しいものを食べたい。
目的地は決まっていた。色々な国の朝御飯が味わえる店がある。世界の朝御飯気になるじゃあないか。
その前に問題発生である。
自宅を出発直前、鞄を変えたのだ。大きな鞄から、観光しやすいサイズへと。
「......財布忘れた」
有り得るだろうか。東京観光で金がない。今はバーコード決済があるから大丈夫? 否! 問題は電車賃!! 遊びはキャンセルできても、仕事場、ホテルに向かうための電車賃がいる!
クレジットカードもキャッシュカードも財布の中。
なんとかせねば!
必死に解決方法を探し、セブン銀行経由でLINEペイから一日一万円スマホだけで借りられる。
一万円が輝いて見えた。この一万円と、バーコード決済で乗り切ろう。幸い今日の観光地チケット代は支払い済だ。
黙々と歩き、目的地へ着いた。ポップな見た目から可愛い。ここだけ海外って感じ。
店前にはもう人が並んでいる。
開店時間は七時半。まもなくオープンだ。
若い男性店員さんが順番にお客様を通す。
「予約の......」
聞こえてきた。ちょっと待って。予約とかしてませんが。その次の人達も予約しているじゃないか。
ヒヤリと汗をかきつつ「一名です」と伝えると案内された。ヨカッター!
おひとり様が他にもいる。心強い。
五席ある店内。四組の客が座った。危ない危ない。
こじんまりとした広さもそうだが、調理場丸見えで海外のおばあちゃんの家みたい。この空気感安心するなぁ。
メニューを見る。固定メニューはイギリス、アメリカ、台湾。
イギリスはトースト、いんげん豆のトマトソース煮、ソーセージなど。結構美味しそうだぞ?
アメリカはパンケーキ、ベーコン、目玉焼き。ハワイアンだね。想像はできるが、現地忠実再現だと感想が変わるのかもしれない。
台湾は豆乳スープ、おにぎり、モチモチとしたクレープ生地畳んだみたいな玉子焼き。これは日本でも、現地でも食べたことがある。
今月食べられる限定メニューは下調べ済。コロンビア。これがいい。一番想像がつかない。
お値段は千八百円とはなかなか。大使館協力の元作られたメニューらしい。
現地に行かずとも味わえるのなら頼む価値ありだろう。千八百円など安いものだ!
しかし、現金は一万円のみ。五分の一は辛い……。
バーコード決済は? 調べる。使える!
助かった! さすが東京! 安心した。
店員さんを待っていると、他のお客様の注文が聞こえてくる。ふむ、確かにドリンクも気になるな。
ドリンクも日本では珍しい物が用意されている。【アイスティー×パイナップルジュース】【ヨーグルト×コーヒー】この辺りなら味の想像はできるな。だが、この【チチャモラーダ】は想像できん。紫とうもろこしを使ったドリンク? ペルーの国民的ドリンクらしい。飲んでみるか。
ようやく注文を聞かれ、コロンビアとペルーで注文した。ワクワク。
待っている間にコロンビアの朝食とアメリカの朝食を盗み見ることができた。アメリカも美味しそうである。朝からパンケーキ最高じゃないか。
「失礼します」
先にドリンクが来た。紫とうもろこし、フルーツ、スパイスを一緒に煮たものらしい。色味は赤のサングリアだ。角切りリンゴが浮いている。
美味しそうなので抵抗なく飲んでみる。紫とうもろこし? は分からないけれど。フルーツジュースにスパイスの香り。これが国民的ドリンクなのも納得の美味しさだ。
「お待たせしました」
来ました。来ました。待ってました!
到着したプレートは異質。日本ではあまり見かけない。テレビの中で見るような食べ物が目の前に。
「ご説明いたします」
つらつらつらつら……。おお、聞きなれない名前が多く、覚えられないメニュー解説。解説のチラシが用意されている。助かる。
店員さんが去ってから料理をしっかりと見る。
えーと、まずは?
コロンビアの伝統料理。トウモロコシの生地でお肉や野菜などを包み、さらにバナナの葉で包んで蒸した【タマル】がプレートの下半分を埋めている。
右上には【チャングア】白いスープだ。コロンビアの首都でよく食べられているという伝統的なスープ。
左上には【アレパ】という丸くて平べったいコーンブレッドが一枚。
美味しそうではないか。バナナの葉に包まれていると謎に手でいきたくなるが、スプーンが添えられているのでお行儀よくいこうと思う。
まずはスープから。白いのは牛乳が入っているかららしい。ポタージュのようにみえるが、スプーンを沈めるとさらっとしている。薄切りのパンと卵が入っているようだ。汁のみ飲んでみる。
やっっさしーーーー!
体に良さそうなヘルシーさ。ほんのり塩味。朝から飲むには胃が優しさに喜びそうだ。一口目からコロンビア料理、美味しいぞ!
期待が高まる。アレパに手を伸ばす。硬めのパン。追加料金でチーズと一緒にいただけるらしいが頼まなかった。かじるってみる。香ばしい。素朴でこれも美味しい。確かにチーズとあいそうだ。
お隣の男性がチーズと一緒に食べている。美味しいですかい?
タマルにいこう。笹の葉、柿の葉、バナナの葉。葉包みってだけで気分が上がるね。
黄みがかった生地の中から見える具材。お肉、野菜。生地を崩してみると、思ったより詰め込まれていた。具沢山!
まずは生地のみでパクリ。とうもろこしの生地! 素朴。食べ慣れてはいないが、違和感なくいただける。
タマルの横に添えられている赤いソースを見る。【サルサオガオ】というもの。辛いのかな? ちびっ。辛くない。スパイスとトマトソースだ。タマルとトマトソースあうな。
生地の中の具材を食べてみよう。骨付きの鶏肉だと!? スプーンで食べれるかな? ほろほろ……柔らかい! ぱくっ。お肉美味しい!
なんだろう。アマゾンを感じる。自然が近い。その理由がだんだんと分かってくる。
半分ほど美味しくいただいていたのだが、気がつく。塩、塩が欲しい!
足りぬのだ塩味が!
その証拠に塩味のあるチャングアを飲むと落ち着く。スープの中の塩を感じようと集中する。
日本人は塩分摂り過ぎ、高血圧は三人に一人と聞いたなぁ。国の擬人化漫画ヘタリアでも見た。
いかに普段の食事に塩が含まれているのか!
味は美味しいのに……。塩があればもっと美味しい! ここにきてチーズを頼めばよかったと本気で思った。
いいや、せっかくだ。コロンビア基準を味わおう。普段の塩の量に気が付けたのだから。
逆にコロンビアの人達……外国人の皆様は「塩辛い!」思っているのだろうか。
最終的には美味しく堪能できた。すごくいい刺激だ。
日本人向けではなく、現地の味だと分かる。在日コロンビア大使館の協力だからな。再現力すごい。簡易海外旅行した気分。この店いいなぁ。
他のメニューも食べたい……。知らない土地であれば、より気になる。「あまりにも美味しい」「これだけは食べられない!」というのもあるかもしれない。
腹を満たし、店を出る。これだけでも充実した日なのだが、まだ朝なのである。
現金一万円だけを持ち、次の目的地に向かって歩き始めた。
お読みいただきありがとうございました!
今回お邪魔したのは「TASTE THE WORLD」さんです。
これまで五十以上の世界の朝御飯を用意されたよう。
HELIOSが訪れて半年後、身内も行きましたが楽しめたようです。
現在、限定はフィリピンらしく……食べたい!
何故ならヘタリアで聞いたことがある!
次話、没入体験します。




