第十九話 揚げ物パフェ
お仕事の最寄り駅に着いて仕事場へ向かう。この駅は食べ物屋さんが多い。仕事帰りに何か食べよう。
「おや」
そこはパフェの種類が百以上あるお店。一度だけ別店舗へ仕事仲間と行ったことがある。パフェもいいな。夜パフェ、いい響き。
信号の待ち時間でメニューを見た。前に食べたのはチョコレート系だった気がするけれど。
「食事パフェ……?」
ああ、見てしまった。気になってしまった。
ということで食べることにした。
店内に入ると思ったより広くて固まる。席を選んで、渡されたメニューを見る。パフェメニュー最初のページにオススメが載っていた。そこに食事パフェが三品。
狙いはエビフライパフェ。生クリームをディップして食べやすそう。エビフライ自体が美味しいって誰かのブログにも書いてあったけど……無いな?
ハードルが低そうなポテトフライパフェも、アメリカンドッグパフェもない。この店舗にはないのだろう。
この店舗にあるのは……なんちゃってたこ焼き、唐揚げ、さくさくロースカツ。
なんちゃってたこ焼きパフェは、正体シュークリームらしい。これは違うんだよ。それなら普通の美パフェ選ぶわ。唐揚げパフェは興味ないなぁ。
消去法だ。さくさくロースカツパフェにしよう。
緑色の呼び出しボタンを見た。
「…………」
本当に? よく考えて?
パラパラとメニューを二往復する。ほら!美味しそうなパフェがこんなにある! 胡麻のパフェとか好きでしょう!? フルーツパフェもいい感じだよ!? 期間限定のパフェだってこんなに……!
なのに、なのに、ロースカツパフェ行くのか!? 本当に人の目を気にせず食べられるというのか?
怖い怖い! 絶対、あの子変なの食べてるって思われるんだ!!
ガラガラだった店内が混んできた。死。何故!
ぐぬぬ……。でも、今日の気分は。いっっっちばん気になるのはヨォォォ!
ピンポーン、と呼び鈴を押した。ドッドッドッ。
いくぞ馬鹿野郎。
「こ、これください」
ロースカツパフェを。
店員さんも一瞬止まるじゃん。普通に受けてくれよ。お姉さんも初めてかい? それとも一人で頼む人いませんか? ああ、心の中で泣きそう。プルプルする。
「揚げ物なのでお時間頂戴いたします」
「大丈夫です」
ああ、自分の無表情すごい。
乾いてないのに水を飲んでパフェを待つ。
「わー!」
なんだ? お子ちゃまの声。
右を向くと男の子が何かを見て目を輝かせていた。入口から続く食品サンプルを見ているのだ。全品あるのなら百個程並ぶ。すごいよな。ちょっとした展示会。食品サンプルって結構いい値段するのに。
素晴らしい日本の技術と文化。一人では恥ずかしくてできないが、男の子のようにじっくり見たいものだ。存分に見たまえよ。こういう思い出が大切なのだ。
時間がかかるというのは本当らしい。後の二組のパフェが運ばれ、その味にハートが飛ぶ甘い時間を遠くに感じ。ついに茶色と白のパフェが厨房から出てきた。
き、きだぁぁぁ。
大丈夫? ザワついてません?
「お待たせしました」
六本のサクサクのカツが刺さったフルーツパフェ! ビジュアルぅぅー。パフェなのにソースかかってるぅぅ。アイスも二種乗ってる!
運んできたお姉さんも緊張したのでは? 頭を下げ写真を撮る。撮らねばならないだろうよ。パフェの半分がカツ。
さて、と。どこから行く? あわわわ 誰も見ないでくれよ? 顔伏せめの状態でフォークを持つ。パフェを食べるためにフォークである。
やはり、カツからいくか。サクサク揚げたて食べたいし。一口目はそのまま……いや、味は想像できるだろう。初手から生クリームを乗せる。うぉぉ。ビジュー。
深いソースの香りがするのに生クリームが乗っているサクサクのカツ。パクリ。
サク、サク。んむ。あんまり甘くない。平気。カツ自体が美味しい。ソース味強い。生クリームは甘さ控えめなので、牛乳使った料理として食べられる味。
二口目はバニラアイスと。立ち止まる気はないぞ。真顔で平然と食べるのだ。モグモグ。スンッ。不味くないんだよなぁ。クリーミィ。
相乗効果を超えて塩味と甘味が打ち消し合っているような気がするのだけれど。
箸休めしよう。自分はパフェを食べているのだと思いたい。バニラアイスとコーンフレークうまい。安定だよね。心安らぐ。
やや、酸っぱいぞ? 底には無糖ヨーグルト。酸味とカツは合うのでは?
グリグリとカツを沈め、底のヨーグルトに押し付けてパクリ。ん? 甘さが欲しくなる、何故?
ヨーグルトを纏ったカツにバニラアイスを乗せる。こっちの方が美味しいかも。もう味覚がやられたか?
フルーツいただこう。キウイフルーツから。ちゃんとカツ食べてからキウイフルーツ。不味くはないが。もともと酸味苦手だし美味しくはないかな。
「ふぅ」
パフェのてっぺんには真っ赤なチェリー。その下にアイスが二種。溶けだしてきた茶色がバニラアイスを侵食してきた。
チョコレートアイスって!
恐る恐るチョコレートアイスへスプーンを伸ばす。合う気がしないから見ないようにしていたのだ。チョコレートアイスとカツとは?
パクリ。
「……? ……??」
味の相殺かな? ハテナがいっぱい。味消えそう。チョレートアイスと相性いいバナナも口に運ぶ。味……するはずなのに味蕾が掴みきれない。誰もが馴染みある味がするはずなのに。
もう一回。チョコレートアイスを食べて……カツを食べる。
「…………」
うん、次だ。
味を探すことをやめた。
林檎とカツは大丈夫なんじゃない? シャクシャクサクサク。おや。ソースに林檎が負ける! 食感だけ残る感じだぁ。薄く切られた林檎が分厚かったら、また感想変わるかもしれない。
オレンジとカツは? オレンジ口の中で噛んで果汁出してからカツ。レモンと同じ柑橘類だから平気かな。予想通り。爽やかな香り。
順調に減ってきたので、スプーンで底のヨーグルトをすくう。白い海から黄色っぽい何か出てきた。角切りのパイナップルだ。シロップ漬けで甘くて美味。ハッキリと味が分かるの良いね。
残り、三分の一。
正直重いな。揚げ物そんなに好きじゃないし、揚げ物×生クリームってそんなに食べられない。
ああ、バニラアイスの優しさよ。ヒンヤリ甘い。
そこに溜まったヨーグルトをすくう。
あれだね。友人達とワイワイ楽しんで食べるのは思い出としていいんだけれど、一人で黙々食べるなら絶対美味しい甘いパフェがいいと思う。
いや、結構楽しめたんだけどさ? こういう食事パフェがあるからこそ普通の有難みを知れるというかね。新たな発見だよね。
こういう系統で行ってみたい店がある。愛知県の喫茶マウンテン。珈琲とギャンブル好きの漫画家さんの作品で知った。スイーツなパスタが食べられる店! 半分くらい興味が失せてしまった。なんてこった。
あ、もうパフェ食べきる。意外と視線気にならなかった。気にしなければま普通に頼める品のようである。
もう頼まないかなぁ……いやぁ、でもさぁ? アメリカンドッグ×パフェは合うと思うわけ。外側ほんのり甘い生地だもん。
最初に狙っていたエビフライ×パフェも気になるわけ。ソース味がないと新たな発見があるかもしれないから!
……なんだろう、この熱量。
「ご馳走様でした」
再び興味が沸けば、食べてみてもいいのかなと思った。
お読みいただきありがとうございました!
今回お邪魔したのは「からふね屋珈琲」さんです。
お会計のときも「ロースカツパフェ頼んだのお前? 一人かよ」と思われていないか、ドキドキしながらお支払いしました。
パフェの種類が豊富なので悩めるお店。フィーリングで決めちゃいましょう。あ、食事パフェ食べてみます?
甘味以外、フードも美味しそうでした。さくさくロースカツパフェを食べた者からすると、揚げ物メニューが美味しいこと間違いなし。
パフェって急に食べたくなることありません?
夏に仕事で京都に行きまして。京都らしいものを探して濃い抹茶パフェを食べました。
HELIOSは鉄分不足によくなるのですが、カテキンって鉄分吸収阻害するらしく。夏だったのでミネラルも不足していたみたいで、抹茶パフェ食べてから三日間は貧血と戦っていました。
気をつけましょうね。
底にコーンフレークより、グラノーラの方が好みです。
次話、新そば。




