なな
「あ、あいつ捕まってる…」
なんか、朝のニュースで報道されとる…。
うわ、ストーカーだけじゃなかったんか、余罪…。
いや、見えないからって影の子があいつのこと蹴ってるよ…。
あいつの横にいる、動物みたいな子が…
なんていうか、もっとやれ!みたいにはしゃぎまわってる…。
なんだろ…、犬?猫?
まぁ、なんでもいーか。
朝ごはんを食べ終えると、出勤する時間になった。
「んー、なんか体が軽い気がする」
清々しい気分になりながら、私は仕事へと向かう。
公園を通りがかると、滑り台をズザーっと滑り降りて来る影の子とさっきテレビでみた動物の子…。
「ア!オネエサン!
コノコガネ、ゴメンナサイッテ!」
お、おぅ…そうだった、影の子は元々ここの子じゃないからいつもいるんだった。
「ナンカネ、ムリヤリノロイノドウグニサレタンダッテ」
「は?あいつ最低ね…」
「カイホウサレタケド、イクトコナイッテイウカラ、ツレテキタノ」
「あー、人に迷惑かけなきゃいーんじゃない?」
「チャントヒトキタラカクレルヨ!」
エヘンと胸を張る、影の子。
尻尾をバッサバッサ振る動物。
「とりあえず、私は仕事行ってくるから、他の人にバレないよーにねー」
「イッテラッシャイ!」
公園の怪異、増えたなぁ…
いや、私のせいじゃないぞ?と思いつつ、私は仕事へと向かった。
勤務先につくと、あいつの話題で盛り上がってた。
心底どーでもいい。
インタビューされた!とか、テレビに映った!とか…学生じゃあるまいし…。
白けた視線を送りつつ、今日の業務を片付ける。
「あ…黒いのなくなってる…」
隣の席の呟きが聞こえた。
「あー、あいつがくっつけてきたみたいで、昨日解決しました」
「あ、そうなん…えっ!?」
「え?」
「あ、いえ…」
「見える人です?」
「はい、見えちゃう人です…」
「なるほど。今、困ってたりします?」
「え…」
「なんていうか…、後ろでモニョモニョしてるのが」
「モニョモニョ…」
「なんかこう、ザリガニみたいな威嚇してます」
「ザリガニ…っ!!」
爆笑する隣の席の人。
「こ、怖かったのが一瞬で…っ!!」
あ、モニョモニョしてるのが怯んだわ。
「あー、深夜2時の公園の怪異って知ってます?」
「聞いたことあります。
近所なので…」
「解決するかもしれないので、今日行きませんか?
あの怪異達、すごい親身になってくれるので」
「えっ…?」
あいつの今日のニュースを見せると、隣の席の人は吹き出した。
「え、なにこれ…
絶対、もっとやれって言ってる…!」
「私もそう思った」
「あれ?あの公園の怪異って、人形だけじゃ…」
「つい最近、滑り台をズザーってする黒い影と、もっとやれな動物が本日追加されました」
「追加…」
「それはともかく、お仕事しましょう」
「あ、はい」
サクサク仕事を片付けながら、取引先へのアポ確認をしつつ、社用携帯を手に取ると、たどたどしいコンビニスイーツありがとうございましたのメールが来ていた。
わぁ、ほっこりする。
社用やぞ?ってツッコミは今は要らんわ。