ろく
あれから、色々あった。
階段でぶつかられて落ちそうになる…
手すりに捕まって無事だった。
近くに人がいないのに、押されて、ホームから落ちそうになる…
持ってた荷物が重かったので落ちずにすんだ。
もうこれ、アレよね?
せっかく残業なしだったのに、休まらないわ。
家でゆっくりしたかったけど、家で何かあったら嫌だし、着替えて、財布と携帯だけ持って、ファミレスに行く。
まぁ、ファミレスで何かあっても、熱いやつとか落とされるとか、そのくらいだろーし。
今の気分は季節パフェ食べたいから、そーゆー心配もないし。
パフェ食べながら、ボンヤリ。
レジあたりが騒がしいけど、わざわざ席を奥の方にしたから気にしない。
パフェ、美味しい。
ん?パトカー来たな?
レジの方をチラッとみたら、刃物持ったオッサンがいた。
…ファミレスで強盗?
なんて迷惑な…。
おっと、オッサンと目があった。
こっちに向かって来るな…。
ファミレスの店員さんが、顔面蒼白で逃げてくださいって叫んでるけど、ここ、逃げ場ないのよ。
オッサン、走ってきたわ。
椅子をガッと蹴飛ばして、オッサンを転ばせる。
ぶつかった拍子にポーンと刃物が飛んできてる。
どう避けても当たるだろうから、メニューを盾がわりに両手を伸ばした状態で持つ。
キレイに刺さったわ。
そのままオッサンの上に座って、パフェを食べながら、店員さんに手を振ると、慌てて走ってくる。
「お怪我は!?」
「ないですよー」
「今、警察が来るので…」
「このまま座ってるんで大丈夫です」
そして、警察登場。
「犯人確保、ご協力ありがとうございます」
「いえいえ、なんとかなりそうだったので」
「お怪我は?」
「ないです」
「事情聴取かあるんですが…
今からでも平気ですか?」
「いいですよ?
ただ、この人が向かってきたところからしか説明できないですけど」
「とりあえず、犯人は連れていきますので、他のものが事情を伺います」
「はい、あ、コレ」
メニューに刺さったままの刃物を渡す。
「メニューダメにしちゃってすみません」
「いえ!お客様が無事ならメニューくらい!」
パフェ代も無料にしてくれたわ。
なんやかんや事情聴取を受けて、解放されたのが間もなく午前2時のいつもの時間。
今、コンビニに行って巻き込まれたら間に合わないので、自動販売機でジュースを買う。
公園につくと、すべり台からズザーっと、影の子が走り寄って来る。
「オネエサン!
アレ?オネエサン、ナンカイヤナノガクッツイテルヨ?」
「どこで呪いなんてくっつけてきたのよ?」
はい、確定。
「この前愚痴ったヤツだと思う」
「オネエサンヲノロウナンテヒドイ!」
「お姉さん、運カンストタイプだから、呪われても本人にはダメージないのよね」
そう、だけど、周りが可哀想なのよ。
「どうする?返しちゃう?」
腕組み…できてない人形が首を傾げる。
可愛い。
「これ、返したら相手死んじゃわない?」
「死ぬわね」
「だよねー」
「ノロウノヲヤメサセルノハ?」
「アリだけど、やめるかしら?」
「ヘンナノタドレバヤメサセラレルデショ?
ボクイッテクル!」
止める間もなく消える黒い影。
「あー、行っちゃった…」
「まぁ、いーんじゃない?」
いーのかなー?
「あ、ジュース渡してないや」
「今度あげれば?」
「そーする」
「とりあえず、今日は帰れば?」
「家、爆発とかしないかな?」
「元栓締めときなさいよ。
あと、電気もブレーカー落としときなさい」
「おっけ、そーする」
人形にジュースを渡すと、私は家に帰った。