ハタラキモノ
ハタラキモノ。体長50センチ前後の哺乳類。見た目はあのナマケモノそっくり。しかし、その名の通り彼らはとても働き者である。
日が出る前に起床するのは当たり前。餌を求めて森の中を二足歩行で走り回り、腹八分目くらい食べたら、次は森の生き物たちに挨拶をしにいく。背筋を伸ばしながら斜め45度でお辞儀をして、いつもお世話になっている木々や他の動物たちに挨拶をするのだ。家族がいれば、家族総出でこれを行う。
挨拶回りが終わったら、お昼まで筋トレをしている個体がほとんどである。日頃から身体を鍛えておくことで、いつ天敵に襲われようとも対処できるようにしているらしい。
そして、昼食を摂り、挨拶回りの午後の部が始まる。午後の部はただの挨拶ではなく、感謝の気持ちを伝えているという説が有力である。また、巣の修繕やエサ集め、子育てを行う個体もおり、各々が夕食まで何かしら仕事をしている。
日が沈むと彼らは睡眠の準備に入る。近くの川で身体を洗い、歯を磨く。葉っぱや蔓などの植物で作ったベッドを整え、柔軟体操をして床につく。つがいのハタラキモノはもちろん子作りに励む。そうして、やっと眠りにつき、彼らは一日の疲れを癒して、また明日も働くのである。
ハタラキモノのこの習性には、科学的理由があることが示唆されている。
コミュニケーションを取ったり、何か仕事を終えたりした時、彼らの脳からは特殊なホルモンが放出されているということが最近の研究で明らかとなった。そのホルモンはワーカーホルモンと呼ばれ、それが放出されると強い幸福感を感じ、それが彼らの習性に繋がっているのだ。
そんなホルモンが放出されているとすれば、幸福感を得ようと無理に働きすぎて死んでしまうといった個体が出そうなものだが、どういうわけかそのような報告は今まで一度もない。その理由について、友人の生物学者が言及している。
「彼らは“休む”という行為すら仕事の一つとして捉えている。睡眠中のワーカーホルモン放出について調べたところ、日中の活動時よりも放出量が多く、その量は性行動時に次ぐ。ゆえに彼らは、休息すら怠けることのない生物なのである」
私が思うに、ハタラキモノたちは悪夢など見ないのだ。そして、明日もまたみんなで元気に働き続けるのだろう。
──以下、ハタラキモノの鳴き声です。
午前の挨拶 「ヴェェェェ!」
午後の挨拶 「ヴェアヴェア!」
性行動時♂ 「ヴェッ……ヴェッ……ヴェヴェェェ!!」
性行動時♀ 「ヴェヴェヴェヴェヴェヴェ!」