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投稿します。
流石にサボり過ぎました。
またおっさんに連れられて外に出る。さっき通って来た道を逆走している途中で向こうから青色の服を着た男が走って来た。
「おい、裏門だ。他のやつらはもう交戦中だぞっ!!」
「分かったっ!! 何体だっ⁉」
おっさんを迎えに来たんだろう。合流して一緒の方向に走り出す。
「五体だ。多分新入りの護送を偵察しに来たんだと思う」
「こいつを見られたのか。じゃあ精鋭は?」
「多分居ない。偵察だけだったんだと思う」
「良し、ならいけるな」
おっさんの言っていた敵ってやつか。話の流れから俺の偵察に来ていたのを発見したってことだろうか。それに護送という言葉。どうやらあれは俺を護衛するために来たやつらだったらしい。護衛というより連行だろって思うが、もしかして俺って実は重要な人物だったりするのだうか。
町を走り抜けた先、見晴らしのいい平地にそれは居た。
「なんだよアレは・・・」
町の男達。戦っているというのなら兵士というべきか。兵士達に囲まれているのは一言で言うなら化け物。岩のようにごつごつとしてそうな肌。毛むくじゃらの足。手足があり人と同じように立っているが右腕だけが長い。大きさだけで言えば人とそう変わらないと思うが、感じる威圧感のせいでとても大きく見える。
「~~~~」
その化け物は声にならない、なんて言っているか分からない叫び声を上げながら長い腕を振り回す。それを避ける兵士達は着かず離れずの距離をとって包囲網を維持している。化け物達も、包囲されていはいるが身を寄せ合い、兵士達を牽制しているように見える。
「三体か。他は?」
おっさんが前に出て包囲網に合流する。
「向こうで明里が相手をしている」
包囲網の兵士が答える。
「智は?」
「知るかよ。どうせ遊んでんだろ」
「・・・そうかい」
さっきと違って吐き捨てたような物言いとそれに苦々しく返すおっさん。
「じゃあ、待たせたな。後は俺がやる」
おっさんが更に前に出る。逆に兵士達は一歩二歩と下がり、包囲網のなかはおっさんと化け物達だけになる。
「お、おい。危ないんじゃないか⁉ 何でおっさんを一人にするんだよっ⁉」
化け物を見たときから動けずにいた俺だが、おっさんの状況を見て一緒に走ってきた兵士に声を上げる。
「黙って見てろ新入り。お前もそうなるんだからな」
「なっ⁉」
兵士のあんまりな物言いに言葉を失う。
「~~~~」
そのとき、化け物達が一斉におっさんに襲いかかる。先頭の化け物が振り上げた腕がおっさんを狙う。
「おっさ・・・っ!!」
ーパンッー
おっさんが持っていた棍棒でその腕を弾く。いや、弾くというよりただ当てた、という表現のほうがいいのか。おっさんはただ棍棒を振っただけ。腰も入っていない、本当にただ腕を振っただけ。軽い音も相まって間抜けなお遊戯のように見えてしまった。残りの化け物達も足を止める。
ーブチッー
呆けた一瞬のうちにおっさんの棍棒が化け物の頭を捉える。さっきよりは力が入っていそうな一撃が化け物を吹き飛ばす。何かが潰れるような音とともに吹き飛んだ化け物はそのまま動かない。そしておっさんは倒れたほうを無視して、残りの化け物達に棍棒を向ける。
「おーい、新入り」
「・・・えっ、は、はいっ!!」
おっさんが化け物達に目を向けたまま俺に言う。
「異世界へようこそ。今日はご馳走だぞ」
そう言って、おっさんは化け物に向かって駆け出した。
「・・・すげっ」
それからはただ圧倒的だった。迎え撃とうとする化け物に対しおっさんは軽い感じで棍棒を振るだけ。それだけで化け物達の攻撃を弾き、一撃で倒す。ピクリとも動かない化け物。まさか、死んでるのだろうか。とても殺せそうな威力はないと思うのだが。
全ての化け物を倒したおっさんは俺の前に歩いて来て、笑いながら話し掛けてきた。
「どうだった?」
「いや、どうって言われても・・・」
ただ凄い、としか思わない。おっさんが離れた後、兵士達が倒れた化け物を数人掛かりでどこかへ引きずっていく。
「あれ・・・死んでるんですか?」
引きずられていく化け物達は動く気配がない。
「ああ、どうだ? 凄いだろ?」
棍棒を掲げるおっさんに、凄いと返す。
「ま、俺の力じゃないんだけどな」
「えっ?」
「後で話してやるさ。向こうも終わったみたいだし、飯のときにでもな」
おっさんがクイッっと親指と顎を動かし離れた場所を指す。その先からまた兵士達が化け物を引きずって来た。そして更にその先、兵士から少し離れたところからおっさんと同じ継ぎ接ぎだらけの服を着た女が歩いてくる。
「よう、おつかれ」
おっさんが女に声を掛ける。
「別に、これくらいどうってことない」
女はぶっきらぼうに返事を返した後、俺を見る。
「こいつが? ・・・冴えないおっさん」
俺を上から下まで一瞥した後に放たれる失礼な一言。舐めた口を利きやがる。パッと見、まだ子供に見える。多分高校か大学。それくらいの歳だろう。確かにこいつよりは歳をとっていると思うが、俺はまだ三十前だ。おっさんと呼ばれるのは俺じゃなく目の前の四十越えてそうなこっちの方だろう。
「明里、そう言うなよ。そいつがおっさんなら俺はもう爺だぞ?」
「透さんは・・・そんなんじゃない」
おっさんのフォローに気まずそうに返し、俺達の前を通り過ぎる。
「先、帰ってるから」
「おう、気をつけてな」
小さく、子供扱いしないでと呟き女は歩いていった。
「悪いな、ただの人見知りだから気にしないでくれ」
「いえ、いいですよそれくらい」
あの女はどうか知らないが、俺は大人だ。俺を殺したあのクソムカつくガキ共なら我を忘れてぶん殴る自信があるが、口が悪いくらいでキレるようなものでもない。それよりも気になったことがある。
「それより、先に帰るってことは、あの娘もやっぱり?」
「俺達と同じ、転生者だな」
「てことは家も?」
「同じだな」
あの家にあった女子用の区画は、あいつのもののようだ。
「他に、転生者って何人いるんですか?」
「あと一人。智弘っていってな。このなかじゃ一番の若者だ」
「そうですか」
名前からして多分男だろう。なら俺を入れて全部で四人。四人なら、あの広さなら充分だろう。男が増えたことであの女からすると逆に住みにくくなると思うが。
「ま、帰ったら紹介してやるさ」
俺の肩を叩き、帰るぞと促してくる。いつの間にか兵士も居なくなり、俺達だけになっている。
「あれ? こういうのって最後に報告とかそういうのは・・・」
あんな警報まで鳴らすくらいなら、終わった後の事後処理的なのもがありそうなんだが。
「いいんだよ。そういうのはあっちの仕事。俺達はあいつらを蹴散らしたらすぐに退散。それがお互いのためなんだよ」
そう言うおっさんの顔には、どこか悲しそうな、諦めたような感情が浮かんでいるように見えた。
前回の投稿から10日以上空けてこの程度の文章量。息抜きがてら書いているとはいえあまりにも遅い。
こんな感じで禄に更新もできない作品ですが、良ければ読んでくれると嬉しいです。