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投稿します。


これから宜しくな。そう言った(とおる)と呼ばれた中年、見た目はかなり年上に見えるその男は俺を連れてきたやつらとは違い、どこかみすぼらしい。今までのやつらとは違って上着が青くない。それ以前に明らかに他の布地を継ぎ接ぎしたと分かるボロボロの服。これと比べれば、他の男達の服装が立派なものに思えてくる。


「よし、んじゃあ行くか」


そんなことを思っているうちに、俺を連れてきたやつらにも軽くあいさつを済ませた男はそう言ってきた。


「えっ、行くってどこに?」


「まあ、俺達の家みたいなもんさ。ちゃんと説明してやるから、今はちゃんと着いて来い」


俺を連れて来たやつらも行けと言うので仕方なく透という男に着いていく。歩きながら町並みを見ると思ったよりもしっかりとした町だと感じた。辺りの建物は木造のものもあるが、殆どがレンガでできた石造り。道もちゃんと石で舗装してあり歩きやすい。最初にこの世界に来たときは何もなかったからもっと原始的な生活を想像したのだが、意外と文明的な生活を送っているのかもしれない。

男に連れられて暫く歩く。俺を殺す気はないということだけは間違いなさそうだが、どうなることやら。他のやつらは全員どこかに行ったから今は前を歩くこいつ一人。町に入る前だったら逃げれたんだが。


(まあ、入ったからこうなってんだろうけど)


町に入る。つまり自分達の領域に入れてこの扱いということは、俺が何もしないと高を括っているのか何とでもなるという自信か。実際何も出来ないが、最初の厳重な警戒態勢とは打って変わって無防備な様を見るとなんとも言えない気持ちになってくる。


「着いたぞ、ここだ」


男が立ち止まって指を指した先には石造りの大きな家。だが、元は立派な家だったのだろうが、今は所々崩れている。外壁に穴でも空いたのだろうか。内側から木材か何かで塞いだような跡が見える。これも、男の服装と同じくみすぼらしい印象を受ける。


「ここが?」


少し前に通って来た町並みの風景とは違って、この辺りはボロボロだ。男の言った家はまだマシなほうで、少し先にある恐らく家だったであろう建物は完全に崩れて野晒しになっている。


「ああ。まあ、これでも上等なもんだろ」


後から無理矢理付けたのだろうか。入口らしき所には木で作った不格好な扉のようなものがある。男は両手で扉を引きずりながら開き、ここが玄関だ、と言った。先に男が入り、手招きされたので大人しく従ってなかに入ろうとする。


「あっ、ここでは靴は脱げよ。日本式だ」


立ち止まって男が言った。


「あんた、やっぱり転生者か」


日本人っぽい名前と容姿から疑ってはいたが今の発言で確信が持てた。


「まあな。だからもっと気楽にしてもいいんだぜ?」


気を遣われたのか油断を狙っているのか。ただ、俺としても同じ日本からの転生者なら仲良くしたい。完全に信用は出来ないという気持ちはあるが、少しは気を緩めてもいいのかもしれない。


「どうだ? 外見は悪いかもしれないが、なかは中々様になってるだろう?」


驚いた。本当に内装は思ったよりも遥かにしっかりしている。入った先は大きな一室になっていて、テーブルや安っぽい布団のようなものが敷いてある。そして何より、家のなかは床と壁が一面木造になっている。少し凸凹は残っているものの、まあまあ仕上がっている。暖炉の周りと天井だけは石造りのままだが、大きな家なので上を見なければそんなに気にならないだろう。


「そのスーツ、ベタついて気持ち悪いだろ。待ってろ、水浴びの準備してやるから」


それはありがたい。正直かなり気持ち悪いから早めに何とかしたかったところだ。男、いや、おっさんは手作り感満載のタンスから継ぎ接ぎの布切れ、恐らくは服だろうそれを取り出した。


「この仕切りみたいなのは?」


部屋のなかで不自然に区切られた一角が視界に入る。そこは木材で壁のように囲まれている。


「ああ、そこから先は男子禁制だ。あまり近付かないほうがいいぞ」


「えっ? ここに女性も住んでいるんですか?」


明らかに俺より歳上のおっさんに対し、口調を改めて話す。


「一人だけな」


「えっと、俺も、ここに住むんですよね?」


「そうだな」


それは、どうなんだろうか。いくら異世界だからといって見知らぬ男女が一緒に住むというのは。


「あんま気にしなくていいぞ。仕方ないところもあるしな」


顔に出てたのか、気にするなと声が掛けられる。仕方ないとはいったいどういうことだろうか。


「もしかしたら気付いているかもしれないが、俺達はあまり向こうからの受けが良くない」


それはなんとなく分かる。


「その理由なんだが」


 ーカーン、カーン、カーンー


話している最中に鐘の音が鳴り響き、会話が止まる。おっさんは難しい顔をして呟く。


「いや~ まいったな。こんな時に来るか・・・」


「えっと、何が?」


おっさんは服を置き、部屋の隅い置いてあった棍棒を持って俺に声を掛ける。


「ま、説明の手間が一つ省けたと思うとするか。残念だが水浴びはもう少し後になる。行くぞ」


「行くって、何処に?」


さっきから何が何だか分からない。あの鐘が緊急事態だというのはおっさんの態度から想像がつくが、何が起きているのか。


「俺達の敵に会いにだよ」




もっと早く投稿できるようになるのはいつになることやら。

ちびちびと書いていきますので、良ければ読んでくれると嬉しいです。


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