濡れないのは、傘の下
「優君、お待たせ!」
「あぁ、奏。お疲れ。」
「お疲れ様です。優君が傘を忘れるなんて珍しいですね。」
「いやー、鞄に入れてたつもりなんだけどね。まぁ、奏が持ってて良かったよ。」
「ホントですね。」
「結構降っているな。でもまぁ、そんな遠くないから大丈夫か。」
「あ、優君。私が傘持っちゃうと優君の頭に引っかかってしまうかも・・・」
「あー、そっか……」
俺は奏の全身を見て、「確かに」と思う。
「……今、私の体を見て、小っちゃいなと思いましたね。」
奏はそんな俺の様子を見て、ジトーとして目で見る。
「まぁ、確かに思ったけど、俺はそんな小っちゃい奏のことが好きだからね。って奏痛い痛い!」
奏は顔を真っ赤にさせて、俺の肩をポカポカと叩いてくる。
「なんで優君はそう言う事を不意に言ってくるの!」
「不意に思っちまったんだからしょうがないだろ!」
「むぅー……」
「まぁ、いいじゃん。帰ろうよ。」
「……そうしましょう。」
「傘は俺が持つとして、あ、そうだ。」
「?」
俺は上着を脱いで、奏に着せる。
「!?、これでは優君が冷えてしまいますよ!」
「でも、俺が傘を持ったら奏が濡れてしまうからさ。それに冷えるも何も奏から連絡が無かったら、走って帰る予定だったし。」
「……それでも、やっぱり優君が冷えて風邪ひいたりしたら嫌だから……。私にとって優君は大切だし……」
奏はいつも俺のことを考えてくれる。
だけど……
「……はぁ、奏こそ、いいから大事にされてくれよ。」
「!?」
やばい、少しかっこつけたようなことを言ってしまった。
顔が少し熱い。
ちらっと隣にいる奏の顔を見ると、奏も顔を真っ赤にさせて固まっていた。
まるで餌を待つ金魚のように口をパクパクさせながら。
「奏、大丈夫?」
「うぅぅ、大丈夫じゃないです!もう、優君は……」
「ハハハ、まぁ、帰ろうぜ。」
「……そうしましょう。」
そうして、俺らは傘をさして、雨降る中を歩いていく。
「そう言えば、優君これって相合い傘じゃ……」
「何をいまさら言ってるんすか。」
「久々だから、ちょっと照れちゃって……」
「それなら、今度から雨の時は相合い傘で行くか。」
「それいいね!そうしましょう!」
「あー、でも1つの傘に2人か。狭いな。」
「もうー、何でそういうこと言うの!」
「ああ、ごめんごめん。冗談だよ。」
「むぅ、優君は意地悪だなー。」
「でも、そんな俺のことが好きでしょ?」
「………………好き」
俺たちはそんなバカップルみたいなことを言い合いながら、帰路に就く。
たまには傘を忘れるのもいいかもしれない。
皆さんこんにちわ 御厨カイトです。
今回は「濡れないのは、傘の下」を読んでいただきありがとうございます。
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