弟子ができた
空に浮かぶ雲を赤く染めていた日が完全に隠れ、代わりに無数の星々が空を埋め尽くそうとする頃。
私達は目的地である「イワノイ」に到着しました。
「こんばんは。観光ですか?入っていいですよ」
門の前で動き安そうな鎧を身にまとい、槍を携えている門番さんからにこやかな笑顔で声をかけられました。
「ご苦労様ですー。」
「ところで、、後ろの方は大丈夫ですか?」
「はい。道中疲れて寝ちゃって…」
「あぁ、そうでしたか。では近場の宿をご案内しましょうか?」
「いいんですか?ありがとうございます。」
「では手すきの者を呼んできますね」
案内された宿は門から近く、よく旅人が利用するそうです。値段は少し高いかなと感じましたが、お財布はまだ暖かいので2人部屋を借りることにしました。
ガーベラさんを布団に寝かせた後、近くのレストランで夕食です。店内は私のように旅をしているであろう人や、仕事終わりに作業着のまま酒を口に運ぶいかついおじさんの集団やらでごった返していました。
私は一人なのでカウンター席に座りメニューを眺めていると
「ご注文はお決まりでしょうか?」
うーむ。 メニューに書いてある料理の名前や他のお客さんの前に広がる料理はどれもおいしそうで悩んでしまいます。
こーゆー時は…
「おすすめのメニューはありますか?」
「そうですね、では当店自慢の手作りケチャップを使用したナポリタンはいかがでしょう。」
「じゃあそれと、おにぎりを2つほど持ち帰りたいんですけどできます?」
部屋に戻るとちょうどガーベラさんが目を覚ましたようです。
「あ、気がついた?」
「ここは…確か盗賊に追われていたような…」
「ここはイワノイにある宿ですよ。盗賊はなんとか振りきれたから今はもう安全だと思います」
「そうでしたか、また助けられてしまいました。」
「いいですよ。困ったときはお互い様。それよりお腹空いてません?おにぎりありますけど」
「何から何まですみません…。実はお腹と背中がくっつきそうで…いただきます。」
「それと今日はこの部屋に泊まっていってください」
「えっ!?それはさすがに申し訳ないです!」
その後しばらく押し問答が続きましたが、ご飯を食べるお金も持ってない彼女を外に放り出すことはできません。
なので無理やりにでも泊まってもらうことにしました。
「そういえばガーベラさんはどこを目指して旅をしているの?」
「私は自分の生まれ故郷を探しているんです。実は私、小さい頃の記憶が無いんです。」
「記憶が?」
「はい。気がついたら知らない教会の椅子で横たわっていました。」
私は教会の椅子で目を覚ました。
自分が教会にいる、それは理解できたが自分がいったい誰なのか、ここに来るまで何をしていたのか、分からなかった。そのあとすぐ修道士に保護されいろいろ自分に関する質問を受けたが、ほとんど答えることが出来なかった。
そのあとはしばらく教会でお手伝いとして働いた。やはり道具や動物等の名前はわかるが記憶だけが無い。
ある日教会に来た医者がこう言った。
「記憶は刺激を与えれば直るかもしれない。殴ったりでもいいが、実際に見たことのある風景を見たりするのがいいと思う。そうだ、旅をして自分の故郷を探してみては?何か発見があるかもしれない。」
以来私はそのこで頭がいっぱいになった。旅に出れば自分のことが何か分かるかもしれない。
私はすぐに牧師に旅に出たいと言ったら快く承諾し、旅で役に立つであろう魔法や身を守る術を教えてくれた。
出発当日、牧師は私に旅をするのに名前が無いのは不便だろうからと赤い髪の色と同じ、ガーベラという名を貰った。
以来ひたすらまっすぐ西へ日雇いの仕事や獣ら退治で得た報酬を糧に旅をつづけてた。
しかし途中仕事が見つからず
「おなかすいた…」
財布は空、食料も水もない
「やばい‥なんかフラフラしてきた…」
だんだん高度が下がっていく。
「あっ‥…」
目の前が真っ暗になった。
直後箒に強い衝撃が走り、一瞬だけ見開いた瞳には美しい青空が広がっていた。
そして今度は全身に強い衝撃を受け目の前は再び闇に包まれた。
出発当日、牧師は私に旅をするのに名前が無いのは不便だろうからと赤い髪の色と同じ、ガーベラという名を貰った。
以来ひたすらまっすぐ西へ日雇いの仕事や獣ら退治で得た報酬を糧に旅をつづけてた。
しかし途中仕事が見つからず
「おなかすいた…」
財布は空、食料も水もない
「やばい‥なんかフラフラしてきた…」
だんだん高度が下がっていく。
「あっ‥…」
目の前が真っ暗になった。
直後箒に強い衝撃が走り、一瞬だけ見開いた瞳には美しい青空が広がっていた。
そして今度は全身に強い衝撃を受け目の前は再び闇に包まれた。
「そして、倒れているところを私に拾われたってわけですね」
「はい。そして…」
彼女は胸元から(私より大きい??)1つのペンダントを取り出しました。
「私が目を覚ましたときからつけていたもので私に残された数少ない手がかりの1つです。」
「少し見てもいいですか?」
「どうぞ」
差し出されたペンダントは淡いブルーの卵形の石。大きさは親指ぐらいでしょうか。表面には☆の模様が刻まれています。
「キレイな石ですね。それに…」
なにか少し暖かみを感じます。おそらく魔力が流れているのでしょうか。
「これ、魔力が流れていません?」
「はい。よく気づきましたね。そうなんです。少量ですが魔力が込められているそうです」
「そうです?」
「ここに来るまでに何度か、魔道具屋で見てもらったんです。最初はただの魔石じゃないかっていわれたのですが、どんな力を込めてもうんともすんともしないんです。だから何かの鍵じゃないかって言われました」
魔石とは魔法を発動するのに使う道具、例えば箒や杖に埋め込まれる石のことです。石の品質によって発揮する力の差はありますが、効果としては基本的には発動する魔法を安定させたり、増幅したりできます。
中には意思のようなものを持っている危険な石もあります。イシだけに。
まぁ、そんなものは伝説とかにしか出てきませんし、市販されてるものは大したことありません。
私は旅に出る前、師匠から頂いたちょっといいやつを使っています。
そして今回のガーベラさんのペンダント。普通の魔石ならなにかしら力を与えると反応するのですが…
「何も起きませんね…」
「はい。でも私に関係あるものかもしれませんし、失くすのは嫌なので首からさげてお守りにしてるんです」
とりあえず石をガーベラさんに還して今後のことを考えることにしよう。
それにしても自分の故郷を探す旅かぁ。私にはとくにこれといった目的はありません。だからどんなものであれ目的があるガーベラさんは羨ましいです。
「あ、あの!」
「ひゃっ!ひゃい!?」
突然ガーベラさんがベッドの上で正座はして大きな声を出すものだから変な声がでてしまいましたお恥ずかしい…
「あの、私を。私を弟子にしてくれませんか?」
「は、はい?」
「私を弟子にしてください!」
「と、唐突ですねぇ!?」
「私、もっと強くなりたいんです」
「強く、ですか?旅をするのに強さはいらないはずでは」
「今のままじゃダメなんです!魔物が倒せないとお金が稼げません。ゴブリンやスライムを倒せたとしても、貰え額はしれてます。もっと強い魔物を、倒せないと旅を続けられません。
現に私は今、お金に困っています…。
それにまた今日みたいに盗賊に襲われるかもしれません。もし今日アイリスさんが助けてくれなかったら私、今頃どうなっていたことか…。
だからせめて、故郷が見つかるまで自分の身は自分で守れるようになりたいんです!」
「ふむ…」
弟子ですか…。 今まで考えたこともありませんでした。確かにこのままアイリスさんを放っておくわけにはいきません。それに1人旅にもそろそろ飽きてきましたし、共に旅をする仲間を増やすのもありかもしれません。
「どうでしょう」
「私はあなたに魔法を教えられるほど優秀ではありませんよ?ただ私の師匠に教わったことを実戦してるだけです。だからたぶん、大したことは教えることができません。それでもいいんですか?」
「はい!一緒に旅をしてくれるだけでもこころづよいです!」
「では今日からよろしくお願いしますね、ガーベラさん」
「ガーベラと呼び捨てで、あと敬語もいりません師匠」
「ガーデンさん師匠は、」
「ガーベラと!お呼びください」
「が、ガーベラ?師匠はやめて?恥ずかしいです」
「わかりました!師匠」
やめる気ないのね…