1話 ゲームスタート
一昨日にようやく家に届いた【A world that builds virtual reality】、通称【WVR】を頭に装着し、インターネットでダウンロードしておいたソフトをインストールさせ、ソフトを起動させる。
ソフトの名前は【Infinity intersects online】
俺は頭文字をとってIIOと呼んでいる。
【WVR】のプラグをコンセントに差し込み、ベッドの上で寝転がる。
瞼を閉じ、脳裏にはパソコンのような画面が映り、だが視界全てがモニターのようになっていて、自分がパソコンの中に吸い込まれていくような感覚になる。
そのモニターの中に映る、1つのアイコン、そのアイコンに意識を向け、起動させようとする。
表示されるのは今まで何回も確認してきたゲーム開始までの時間を示す四角い枠に囲まれたサービス開始の画面。
その数字は今や1桁、単位は秒、心臓の脈の速さはいつもの10倍はあるんじゃないかと思うほどドクドクし、指はゲームのログインのボタンを連打し続ける。
残りの秒数は1、そしてログインのボタンは黒っぽい灰色から青色に変わる。
指はログインのボタンが変わった後時間をコンマ1秒と立たせずに押された。
周囲の景色が変わっていく。
無機質なパソコンのような空色の背景とアイコンだけが存在する殺風景な景色。
それが自分の足元辺りから白色の空間が広がり、瞬く間に周囲を白色だけにする。
次に起こったのは自身の周りに様々な色の紐のようなものが
俺を中心にして渦のように回り始める。
回る色は様々、赤青黄や、緑紫オレンジにピンク、白黒灰色金色に銀色、厳密に分けるとすると数万色程はあるだろうその渦が、徐々に回転するスピードを落としていく。
やがて完全に止まると、足先に石の上に立つような硬い地面の感触が感じられるようになる。
そして色たちは所々にある白っぽい色たちを中心にして周囲の景色を白色へと、そしてその白色になった空間の中に、1つの金色に光る球体を残し、消えていく。
やがて周囲の景色が完全に白になると、その金色の球体に文字が表示される。
だが俺はその文字を1つも読まず、文字を下へとスクロールし、ゲームスタートのボタンを押す。
これは俺の目標の1つ、「誰よりも早くIIOの世界をみたい」
という思いがあるのだけれど、多分今設定することはほとんどあとから変えられるだろうし、最悪別垢を作れば問題ないだろうと思った。
その思いは見事に叶えられた。
ゲームスタートのボタンを押した直後、ボタンを中心にして、視界全域にヒビが入る。ヒビの隙間からは白く、だが暖かい日光のような光が差し込んでくる。
思わずそのヒビから漏れた光に手を伸ばす。
そしてヒビ割れた景色は手が触れた瞬間に白い結晶となって足元に散らばり、消えていった。
─ファァァァァ
頭の横を通り過ぎる風を、現実で感じたものよりも気持ちよく感じる。
足先に感じる硬い地面を、街中を歩いているときと違い、愛おしく思える。
心の中に、歓喜の感情が膨れ上がっていく。
思わず両手を天に上げ、大声で字にならない叫びを上げる。
だがそれを聞くものはまだ居ない。
正真正銘、最初にこの地に降り立ったのは彼で、この世界で声を上げたのは彼だ。
それだけは例え運営でも変えることが出来ないIIOの歴史に付けられた、表紙を飾る出来事だった。
1話1話を5000文字から1万文字に出来るようにするのが夢です