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この話は読まなくても大丈夫です
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「おはようございます、一月三日、朝の報道です。ニュースキャスターは私、岩井賢治、解説に澤井さん、三井さん、古田川さんにお越しいただいています。」
「「「よろしくお願いします」」」
「最初のニュースです。本日発売予定のゲームソフト【Infinity intersects online】、発売開始30分前となり、ソフトを売っている店の前には多くの人が並んでいます。このゲームソフトは仮想現実機器の開発の大手、アメリカにあるLeaf社と日本のゲーム開発会社、岩波株式会社が協力して開発したもので、最新技術によって描かれるこのゲームには発売前から普段からゲームをよくする方々以外からも高い関心を向けられきました。そのゲームが今日いよいよ発売されます!いまゲームソフト販売店の前とち」
─ブツン
……朝飯を食べる時に消し忘れた自室のテレビの画面を切る。
テレビの朝のニュース規模で紹介される【Infinity intersects online】の情報などもう何十回もみたものだし、今更見直す必要も無い。
【Infinity intersects online】、通称、IIO、アメリカのVR機器を扱う大手の会社、【Leaf社】と今まで様々なジャンルのゲームを売り出してきた【岩波株式会社】が協力して開発したゲーム、全世界同時に売られ出され、今全世界でゲームというジャンルでなくとも最も注目されている出来事だ。
理由は人によって違うだろうが、大抵の人はこれだ。
【仮想現実空間、電脳空間への完全FURUDIVE】
簡単に言うならば仮想空間で現実と同じように動けて、様々な感覚も得られる技術、ということ。
近年世界中の仮想現実社会化が進み、今や生活するのに必要な必需品となっている。
今までの仮想現実というのは意識の半分を電脳世界の操作に使用し、残り半分近くは現実にある、【半仮想空間DIVE】と言われるものしかなかった。
【半仮想空間DIVE】では予めプログラムされていた動きしかできず、使えるのはせいぜい会社の会議や学校の授業など、動くことが少ない出来事の時しか使えなかった。
今注目されているiioのように、この【半仮想空間DIVE】でも一応ゲームは存在した。
したしこの【半仮想空間DIVE】でのゲームの制作はかなり難しかった。
何故ならまずひとつに動きだ、先程言ったように【半仮想空間DIVE】では予め決められた動きしかすることが出来ない、それ以外の行動を行おうとすると痛くはないのだが体が締め付けられるような感覚が体を襲い、そして連続してすると、警告が表示される。
警告が表示された後に5回また決められた動き以外をすると自動的に【半仮想空間DIVE】からシャットダウンし、数分間の間入ることが出来なくなる。
これは会議や学校の授業ならある程度する行動は予測されているため、人の手とAIによる予測プログラムによりある程度問題は解消されていた。
(この場合の予測される行動とは、座ったり、歩いたり、腕を上げ、ホワイトボードを指さしたり、チョークを持ち上げ、黒板に文字を書いたり、ノートに字を書く、欠伸をする、うつ伏せになる、等)
しかしゲームとなれば話は変わる。
元々前述していた2つの例は企業が開発したものだ、その分人手は多いし、所有しているaiも高度なものだったから様々な予測される行動を【半仮想空間DIVE】内で実際にできるよう改善していけた。
対して【半仮想空間DIVE】でのゲームはほとんど開発されなかった、それは何故か、答えは簡単。
【半仮想空間DIVE】はすぐに波が過ぎ去ることが分かっていたのだ。
もともと【半仮想空間DIVE】でゲームを制作するのは難しかった。
アクションゲームは絶対に実現不可能なレベルの難しさ、何故なら、例えば目の前の落とし穴を飛ぶ、というだけのステージを作るとしよう、ではそれにどれだけの予測される行動があるだろうか、走る、踏み込む、ジャンプする、空中の姿勢、着地時の姿勢、ぱっと考えるとこんなとこだろうか、しかし実際には違う、本当はこれ以外に数百倍近くの予測される行動というのがある。
ではこの100倍まで膨れ上がる行動とはなんなのだろうか、それは個人の個性とも言える行動、つまりは、【クセ】である。
走り出す時につま先を地面に2回突き立てる、手を振り上げる時に背中側に行くまで振り上げる、片足だけで踏み込み片足で着地する、歯に力を込めがら走り、ジャンプする、など、このような例えを出せば他にもいくつかこんなクセもあるんじゃないか?という考えが浮かんだだろう。
しかしよくよく考えて見て欲しい、わかりやすい方で言おう。
学校の授業でも個人のクセはあるだろう。
難しい問題をとこうとした時に頭をかくもの、ペン回しをするもの、ノートに形を書いて考えるもの。
ほかにも鼻にペンを乗せたり、頬を抓りながら解くものも居るだろう。
しかしそのクセは【半仮想空間DIVE】でも行うことが出来た。
何故か、それは高度なAIにより、生徒達のしたいことを読み取り、瞬時にその行動をすることが出来るプログラムを作成し、組み込むことが出来たからだ。
では先程の落とし穴をジャンプするゲームでも同じようなことができるのではないだろうか。
ここで話は先程の波がすぐ去る、という所に戻るのだ、まず【半仮想空間DIVE】のゲームでプレイヤー達、ユーザーが求めているのはその性質を生かしたその世界の中で動いたり、冒険したり、ということがまず求めている人が1番多いジャンルだ。
しかしそれを制作するためには予測される行動だけでなく視点や場所を移動する度に変わる背景、それらを実現するには時間、それと莫大なメモリと高度なAI、それらを購入し、維持するために必要な金、それらを用意出来る力が近年のゲーム業界にはなかった。
もともとゲーム自体が下火になっていたことも理由の一つだ、だが、それともうひとつ、大きな理由があった。
【半仮想空間DIVE】を行うために使用した機械、その最新機種、【Take off into the cyber world】を開発した会社、その会社がこの機械を発売した一週間後にある世間を揺るがす発表をした。
「我々は完全に仮想現実へとDIVEできる機械の開発に成功し、数年以内にはそれを誰でも使えるレベルにまで上げる」
要約するとこんな感じだ、ゲーム業界には当時ゲームの人気をあげようといくつかの会社が合同で大きな【半仮想空間DIVE】を使ったゲームが開発されようとしていた。
しかしこの発表によってその計画書は先送りになってしまった。
このゲームには各会社の集大成とも言える作品になろうとしていた。
だがしかし、今このゲームを【半仮想空間DIVE】で発売してしまっては【半仮想空間DIVE】が主流の当時ならゲームの人気を上げ、ゲーム自体の人口を増やす目的は果たすことが出来たかもしれない。
しかし新しい機器が、しかもLeaf社が大々的に告知したものなのだ、瞬きの間に【半仮想空間DIVE】は過去のものとなるに違いない。
だが、その新しい機器で今構想しているゲームを制作出来ることが不確定すぎて、この構想を作っていたチームから少しづつ会社が離れていき、やがて岩波株式会社しか残らなかったらしい。
そこから先は探してもあまり情報が見つからなかったのでもうこの企画が無くなってしまっているのだと思っていたのだが、数ヶ月前の、Leaf社の言っていた仮想現実への完全DIVE機器、名前を【A world that builds virtual reality】が発表された日に、岩波株式会社のホームページにて驚くべき発表が行われた。
それは岩波株式会社とLeaf社が協力し、ゲームを制作していることを報告するものだった。
そこから先はわざわざ情報を漁りにネットに数時間かけることなどなく、岩波株式会社の情報が出るとすぐにトップニュースのひとつとなっていた。
そして、今日、そのゲームが、
発売される。