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そのころ……

 クリストは、植栽の中で動けず、仕方なく、目を閉じる(イメージ)。眠ることは、アンデッドになって不要になった。思索にふけるか、魔道の術式の構築をイメージするか、生み出したアンデットたちの様子を探るときに、目を閉じる(イメージ)。そのため、今も、友兼に預けたデスメイルの視線が思考に流れて来る。四体のデスメイルは、素早い動きで聖王国の兵士を切り飛ばし、盾で跳ね飛ばし、機動隊員の射撃と連携しながら、兵士を寄せつけない。

 友兼の魔力を分けられた、我が子らの動きは、すこぶる好調のようだ。

 デスメイルに魔力の分け方を教える前、警察の指令センターで友兼の相談を受けた。


『クリストさんの亜空間って、液体も収納できますか?』


『問題ないぞ』


 そこから、警察本部の地下に蓄えられたタンクからガソリンを収納できるか試し、出来ることがわかると、友兼に依頼された。


『聖王国軍の陣地に撒い欲しいんですが?』


 味方である聖王国への火計を放つ手伝いをせよ、という。

 そのような事を行えば、 これまでの弟子(友兼)に行ってきた助言とは一線を画す行為となる。


(ま、構わぬが)


『ふむ。条件があるぞ』


『ボクに出来ることなら』


『わしは、聖王国を守らねばならぬ』


『はい』


『聖王国を滅ぼさぬことを誓え』


『……。それは、王家の人を処分しないという意味でしょうか? 聖王国の兵を倒してはいけないのか……』


『いや、人が生きようが死のうがどうでも良い。王家も、まあ気に入っておる者もおるが、血が残るならば責任者を処分しようとかまわん。聖王国を残せ』


『……』


 友兼は、どう答えてよいのかわからず、困った顔をしていた。


『難しい顔をするな。意味がよくわからんだと? 愚か者が……ふむ、努力義務という事で良い』


(わしが守ると約束したのは、聖王国という国であって、王家ではないからの……その辺の細かい話をすると、2刻ほどかかるの。……面倒じゃ)


『出来るだけ頑張ります……あと、何か聖王国関係で対応があるときは相談します』


『うむ、それで良い』


(まあ、約束をたがえたときは、強制的に弟子にするだけじゃ、と笑うと、奴は、「絶対、聖王国守ります!」と言っておったな)


 その後、友兼や聖女とともに、聖王国の本陣近くにまで同行。ローベルトの天幕の近くで別れた後は、ガソリンという油を振りまきながら、渡されたコンパスを見つつ、ひたすら西を目指した。

 撒く方法として、友兼に、霧状に噴射できるかと聞かれ、紙に噴霧方法を書いて教えてもらった。霧吹きの原理を、数百年生きてきて初めて知った。


(科学もまた面白いものじゃの)


 生きている頃に知っていれば、そちらの道を歩んだかもしれない。

 臭いで気づかれないかと警察官たちは心配していたが、催涙ガスを撒くことで紛らわせることになった。

 で、さんざん撒いた結果。

 クリストは吹き飛ばされて、身動きが取れない。


『早く助けにーい……』





 ローベルトは部下を率い、大手門をくぐる。しばらく直進し、左手の大阪城西の丸庭園を指さす。


『兵どもは、北の門とこの南門の間にある広場に集結させよ』


『は。閣下は?』


『我は、姫殿下のもとへご報告に上がる。お飾りとはいえ、手順は踏まんとな』


 ローベルトは、馬にまたがると、直属の兵士と幕僚を率い、大阪城天守閣を目指す。





 アンネリース聖王国第二王女は、初めて見る建築様式の城に通され、目を見張った。入ったところは、石造りの床に、天井一面が白い光を放つフロア。階段を上ると、この世界の鎧や兜らしきものが並び、展示されている様子。3階には、この城の模型があったり、その上の階にも精巧な鎧武者や軍勢などの模型が展示されていた。精巧な品々、勝手に映像が流れる空間など、驚かされるものばかり。

 最上階からは、城の周りを見渡すことが出来た。


『これは何かしら?』


 窓の外に、金色の魚のような、怪物のような顔をした置物が置かれている。


『さあ、金で出来ているのでしょうか?』


 アンネリースの見つめる金のしゃちほこを見ながら、侍女が首をかしげる。


『あ、あれはバサラの軍ね』


 北側のテラスで、ちらりと赤い鎧の集団が、木々の隙間から垣間見れた。

 それからずっと鉄の欄干に寄り添い、北西の様子を見続けた。

 王国との争いになど来たくは無かったが、自分を押す家臣たちの進言により、父王が決めたことに逆らうことも出来ない。本来であれば、第一王女である姉か、第一王子の弟が来るべき話だったが、家臣たちの政治によりアンネリースが総大将の任を任された。そして、実質的な指揮を執る役目は、第一王女派閥のローベルトが就いた。


『姫様、そろそろ戦の様子でございます』


 すでに各所で小競り合いは行われているし、北西でも、竜騎士の操る竜が炎を放つ様子を見ていた。近侍の言うのは、ローベルト率いる本陣が、敵の騎士団本部への包囲を始めたという意味だ。近侍に導かれ、西側のテラスに移る。

 その後は、驚きの連続だった。騎士団本部の辺りに白い霧が立ち込め、東の空に飛んで行った竜騎士たちが次々と撃墜。大爆発が起こり、小さな爆発と、敵兵に追われる聖王国の兵士たち。


『わ、我が軍は、だ、大丈夫なのでしょうか』


 侍女の上ずった声を聴きつつ、不安に押しつぶされそうになるが、彼女の顔色は変わらない。感情を表にあまり出すことが苦手なことが、この場では役に立った。


『聖王国には、神使さまの加護があります』


 その言葉に、周りの侍女たちも、うなずき、同意を示す。

 王女のもとには、まだ神使が奪われたという報告は届いていない。

 見ている間に、敵の騎士団本部を包囲していた兵士たちが、半分は北へ、半分はこの城の域内に移動を始める。


『一旦退き、軍勢を立て直すので御座いますな』


 いつの間にか後ろに来ていた第二王女近衛軍団騎士団長が説明する。


『ネイガウス、ここが王国でないのならば、戦う必要は無いと思うのだけど?』


 ローベルトより、このオオサカジョウ天守閣なるところを御在所として、戦況を見守っていただきたい、と言われた時にも尋ねた話ではある。


『もし我らが戦わなかった場合でも、帝国か攻める。そして、帝国が攻めているのに戦っていなければ、せっかく帝国と結ばれた和平がご破算になる、というお話でございますね。うーむ、一理ある話ではございます』


『バサラなら、どう考えるかしら?』


 アンネリースは、美しい青年将軍の姿を思い浮かべ、テラスを北西方向へと移動する。


『ねぇ、ネイガウス? あなたは、バサラと学友だったのでしょう?』


『バサラならば……バサラは、機智に富み過ぎておりますので、私のような凡人の考えの及ぶところではございません。私は、いつも、ただ見守るばかりです』


『ウフフ』


 ネイガウスの友人を思い出す困り顔に、アンネリースは、ほほえみを浮かべる。


『あら、赤い鎧……』


 北西の方角が見える位置に移動すると、ちょうど北西の広場から、一軍が南下を始めている様子が見て取れた。


『ローベルトへの援軍かしら?』


『さて、バサラは、北西の警備を任されているはずですが……片付けたか?』


 そんな時に、兵士が階段を上がってくる。近衛の白金に輝く鎧を着ている。


『殿下!』


『何用だ?』


 ネイガウスが、アンネリースに代わって問いかける。


『ローベルト公爵様より、先触れに御座います。軍情報告に参られます』


『そう』


『ご苦労。面会の用意をせよ』


 アンネリースが軽くうなずくのを見て、騎士団長が面会の用意をするべく、部下や騎士たちに命令を出す。


『ご丁寧な事』


(進軍は一人で進め、功は独り占め。後退は、同意を求め、責任は半分に)


 アンネリースは、ローベルトの考えを想像し、表情を変えずに細い溜息をこぼした。


ガソリンまいて、あんなタイミング良く爆発するか? と。

誰かがタバコ吸ってたり、かがり火あったり、金属鎧や拍車が火花飛ばしたら、その時点で爆発してますけどね……。

※この物語は、フィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。あとご都合主義です。ごめんなさい。


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