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反撃準備   裏タイトル:ヒロイン争い?

初ブックマーク頂きました、ありがとうございます。

でも、こんなことで、う、嬉しく、嬉しくなんか……

嬉しい♪

(ノ゜д゜)ノソイヤ!゛(ノ゜д゜)ノソイヤ!゛(*'Д')bギュン!゛(*'Д')b゛ 喜びの舞


閑話休題。


「友兼先生ですよね? 国会議員の!」


「え? ええ」


 名前を呼ばれ、友兼は、知り合いかと思い、女性の顔をよく見る。


「テレビの、アナウンサーさん?」


「はい……日売テレビの、笹見です!」


 記憶を探り、見た顔だな……と思いながら答えた内容に、女性が立ち上がりながら名乗る。


(不倫報道のニュースで最近有名だから、思い出せて良かった。確か、『魔性の美人女子アナ30才の誕生日不倫デート』だっけ?)


 ニュースの見出しを思い出しなら、確かに美人だと友兼も思う。けれど、


「この状況は何なんですか!」


 立ち上がるなり、友兼は胸ぐらをつかまれた。


「人が殺されてるのよ! なんで、じっとしてるの! 国会議員でしょ、何とかしなさいよ!!」


「え、あ、ま……」


「自衛隊呼ぶなり、それが仕事でしょ!!」


「……お、落ち着こう」


「落ち着けるわけないでしょ! まだ逃げてる人もいるのよ! 助けなさいよ!」


(あれ? 映画とかだと、命がけで助けた時って恋に落ちる流れとかじゃないの?)


 ぐいぐいと鬼気迫る顔で迫ってくる笹見から、友兼は、のけぞるように身をそらす。


(あ、吐きそう。そんな顔近づけられると……気持ち悪っ……)


「人の事、荷物みたいに引きずりやがって!」


(……あれ? すごい個人的な恨みになった?)


 怒りの内容の変化に驚き、気持ちが悪いのを少し忘れてしまう。

 その時、笹見の手を掴み、二人の間に人影が割り込む。


「い、痛た!」


 小柄な体格にそぐわぬ力で腕を掴まれ、笹見は友兼から引き離される。


「落ち着きなさい!」


 大柄な女子アナと比べると頭一つ分小さな女性警官が、腕を掴みながら、笹見と友兼の間に割って入っている。


「助けてもらった相手に失礼ですよ」


「何を偉そうに!!」


 自分よりはるか年下の小娘に邪魔され、更に頭に血がのぼる。


「状況をわきまえなさい! それに、この子が怯えます!」


 小娘こと上坂栞が見る方向に目をやれば、友兼に小さな手でしがみつきながら、声を出さずに泣いている女の子がいる。


「あ……」


 冷や水をかぶせられたように血が引き、笹見は、ばつが悪そうに少女から目をそらす。


「あ、その……ごめんなさい」


 一歩後ずさり、紙で顔を隠すようにうつむきながら、一言詫びる。

 それを見て、栞は、一つうなずくと、優しい顔で女の子の頭に手を伸ばす。友兼に抱かれているので、女の子の頭には、つま先立ちでようやく手が届く。


「ごめんね。怖かったね。もう大丈夫だからね」


「ママ……」


「うん、うん。ママ、後でお姉さんが探しに行ってくるからね」


「……」


「……ここ、怖い人がいっぱいいるから、ちょっと我慢しててね。……先生、あちらへ」


 怖い人のところで、女の子がチラッと見られ、笹見はビクッと肩を震わせる。

 栞に、橋の北側への移動を促された友兼は、じっと南の方を見ている。


「友兼先生!」


 そこに、別の人物が声をかける。

 振り返ると、橋の北側から府警の礼装を身にまとった初老の男が警官を4人ほど連れて、駆けてくる。


「えー、中条部長?」


 つい先月、大阪府警本部へ訪問した際に紹介された警務部長の名前を記憶の底からどうにか呼び起こす。


「おお、先生。ご無事で何よりです。さあ、私どもが警護します。お逃げください」


 中条が部下に言葉通りの指示をしようとするのに、柔らかく笑って首を振る。


「お心遣い、ありがとうございます。でも、逃げるときは一人でとっとと逃げますので……それよりこの子をお願いします」


 友兼は礼を言いつつ、女の子を栞に渡そうとする。

 けれど、受け取ろうと手を伸ばした栞の頭の上から、手が出て、女の子がさらわれる。


「え、あ、あれ……?」


「あんたは、仕事あるんでしょう? 私が、安全なところに連れていくから。一人でも市民助けなさい!」


 笹見は、友兼から女の子を取り上げて、抱きしめる。

 泣きださないかと心配だったが、気が動転しているのか、何が起こっているのかわからないのか、女の子は笹見にしがみついている。

 栞は、一つうなずくと、突然のやり取りを理解できずにいる部長に正対し、敬礼をする。


「警務部長! あのお店に、市民がたくさん逃げ込んでいます! 救援の要請を願います」


 広場の両脇には多くの店舗がある。広場に居た市民の何割かは、店舗に逃げ込み、騎士たちから身を隠している。幸いなことに、騎士は馬を降りず、従者も含め、店舗の中までは入っていっていない。


「馬を降りては動きが鈍くなるため、お店の中に逃げた人たちは放置し、後続の歩兵に任せるようですね」


 また広場を見やりながら、友兼は、戦況を分析する。


「歩兵ですか? いや、まだテロリストども……うおおっと!?」


 友兼に対し疑問を口にしようとした途中で、飛んできた投槍が目の前をかすめ、中条は足をもつれさせる。


「あぶないです、よっと」


 戦場を楽しんでいるような微笑みを浮かべたまま、若手国会議員は続けて飛んできた槍を手で掴み取った。


(なんと豪胆な……)

 

 その様に、中条は驚きに目を見張らざるをえない。


(うっひゃー、こえーー)


 (おもて)は涼やかながら、友兼のシャツはべっとりと汗に濡れている。ただ目の前に飛んできたので、反射的に掴んだだけだ。


「それより、問題があります」


 友兼は、内心をおくびにも出さず、掴んだ槍の穂先を上げ、遠くを指し示す。騎馬が最初に飛び出してきたグラウンドの方角。そちらから新たな土ぼこりが立ち込めている。


「あれ、は……?」


 友兼以外には遠すぎてよく見えないが、広場に向けて、長い穂先を煌めかせた鎧姿の兵士の集団が行進している。


「騎兵に続いて、長槍歩兵みたいです。警棒やバール状のモノで相手するには、ちょっと厄介ですね。あと弓兵も来るんじゃないか、と心配です」


「そんな……どうすれば……」


 中条は、動悸が激しくなり無意識で胸を押さえようとし、その手が激しく震えているのに気付いた。


「本部に至急、SATと機動隊の出動要請を! 警務部長命令だ!」


 中条が慌てて、そばの警官に指示を飛ばし、懐から携帯電話を取り出し、連絡を取り合い始める。


「あたし、この子を置いてきたら、クルーと戻ってくるから! そ、それまで死なないでよ!」


 笹見は、言い置くと脱兎のごとく走り出す。


「その子を頼むね~」


 視線は南へ向けたまま、友兼は後ろ姿で手を振る。横では、中条が携帯電話に向けて怒鳴っている。


「いいから早く出動させろ! 銃の使用も躊躇する状況じゃない!」


「だいぎし~」


 中条の悲鳴に近い声が、違う方角から聞こえる少しのんびりとした感じの声と重なる。

 のんびりとした声の方、橋の北側からスーツ姿の丸々とした男が両手にビニール袋を下げ、よたよたと走ってくる。その後ろを同じようなスーツ姿の男たちが十数人、ケースに入ったビール瓶やスチールの携行缶などを持ってついてきている。


「さて、こんなので何とかなるかな~」


 楽しそうにさえ聞こえる調子で友兼がつぶやく。

 その声音に、命がけで女の子を助け出し、『すごい人かも?』と思いかけていた栞は評価を戻す。


(やっぱり、この人、変だ)


【裏タイトル:ヒロイン争い  あとがき代わりに】


「私がヒロインじゃないって、どういう事よ!!」


「……お、落ち着こう」


「落ち着けるわけないでしょ! 三十路だから、ヒロイン失格って! 世間が黙ってないわよ!」


(あれ、年齢が理由なの? 映画とかだと、ヒロイン、年とか関係ないよ? ……原因は本人じゃ? ぐえ!?)


 ぐいぐいと鬼気迫る顔で迫ってくる笹見から、友兼は、のけぞるように身をそらす。


(あ、吐きそう。そんな顔近づけられると……気持ち悪っ……)


「この時の為に、美容にどんだけお金と時間をかけたか!」


(……あれ? すごい個人的な恨みになった?)


 怒りの内容の変化に驚き、気持ちが悪いのを少し忘れてしまう。

 その時、笹見の手を掴み、二人の間に人影が割り込む。


「い、痛た! この馬鹿力!」


 小柄な体格にそぐわぬ力で腕を掴まれ、笹見は友兼から引き離される。


「落ち着きなさい! (顔も態度も)見苦しい」


 大柄な女子アナと比べると頭一つ分小さな女性警官が、腕を掴みながら、笹見と友兼の間に、華麗に踊るように割って入っている。


「ヒロインは、若いあたしってことですよ。おばさん」


「むきー。ちんちくりんが偉そうに!!」


 自分よりはるか年下の小娘に邪魔され、更に頭に血がのぼる。


「小柄で、ほどよい筋肉のつき方ですぅー! それに、()っちゃい子の前で見苦しいですよ!」


 小娘こと上坂栞が見る方向に目をやれば、友兼に小さな手でしがみつきながら、声を出さずに泣いている女の子がいる。


「あ……」


 ばつが悪そうに目をそらした笹見を見ながら、女の子は、友兼の肩に顔を埋めるようにしがみつく。


(ふふん。今は、おばさん二人で争っているがいいさ。誰が、一番、若くてカワイイか、だれが勝つのか、いずれ見せつけてあげる……)


 そして、片方の唇だけを上げて、幼女は妖しく笑った。


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