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先遣隊


 第1軍第三大隊隊長ヘンケルは、激しい抵抗に業を煮やしていた。

 城の北東にある広場に出たところで、騎馬隊は多くの戦力を失い、歩兵にもダメージを受けた。敵の馬を必要としない荷車じどうしゃの突撃により、混乱と数十人の被害。それに続く、荷車を燃やすことによる即席の防壁により、騎馬部隊と歩兵が分断された。

 その間に、騎馬隊を現地兵が襲い、多くの被害を出してしまった。

 今は、広場も制圧し、北上すべく橋を占拠したが、橋の北側では改めて現地兵が防衛線を築き抵抗している。幾度か突撃を試みたが、敵の用いる不可視のスリングか、弓により、騎兵、槍兵に多くの被害が出ている。そのせいで仕方なく、今は、奴らの射程の外から弓を降らせている。


『ここは、弓兵と槍兵を幾ばくか残し、本体は東側から回り込む! ユング、ここの指揮をとれ!』


 本体は、東側を目指す。そう命令したところで、東側から、敵兵が使う、見えない飛び道具の乾いたパンパンという音が聞こえ始めた。


『くそっ! 先に回られたか! 死霊どもめ何をしている!』


 敵兵に先を越された苛立ちを、未だ到着しないスケルトンやゾンビに対してぶちまけた。




 第1軍第5大隊隊長ゾンネ男爵は、簡易的に設けた指揮所で、部下に指示を出していた。

 断絶の大隧道から部隊を率い、担当の北西方向への浸透を開始。敵兵の待ち伏せや、集団的な抵抗を受けることなく、出会うのは未武装の市民ばかり。その方向にあると聞いていた王都の騎士司令部並びに騎士団詰め所を目指す予定だったのだが、地図と地形が全く一致しなかった。

 目に入るのは、聞いていた王国の建築様式とは異なる見たこともない建物ばかり。地面も石でもない、コンクリートでも無さそうな物が敷き詰められていたりする。人も、王国人というよりは、東大陸の顔立ちをしており、身にまとうのは、おかしな、変わった装束。


『ここは、王国……なのか?』


 疑問が湧いてくる。そして、魔術師からは、魔法が使えない! 本部との通信魔法さえ行えないとの悲鳴のような報告。

 更には、自分たちの進軍を支え、本格的攻勢を行うアンデット部隊の異常を知らせる伝令。


『アンデットたちが、まともに動かないだと!?』


『はい! 魔素が薄すぎるとの事です』


『魔素が薄い……魔法が使えないのも、そのせいか』


『王国め、そのような技術を持っておったか』


 伝令の報告に、側近たちが舌打ちする。


『それで、クリスト卿はどうなされると?』


『とりあえず、抵抗の激しい戦線に重点を置き、作戦通り、進軍を続ける予定とのことです。しばらく待てば、アンデッドどもは幾分力を取り戻す。但し、十全の力は振るう事は叶わず、スケルトンらを捨て石と……』




『但し、十全の力は振るう事は叶わず、スケルトンらを捨て石と考えよ。各自、一旦前進を止め、拠点防御、撤退を含め検討せよ』


 紫のベルベットをまとった薄っすらとだけ皮をまとった骸骨が、人間の伝令たちに語りかける。


『この世界は、魔素が少なすぎよのう。魔法は、よほどの使い手でなければ使いこなせぬであろうて。これでは戦士たちの能力も落ちておるだろうのう』


 呼吸が不要だというのに、骸骨はため息をつく。


『また、この地は王国とは思えぬ。

 異常である。

 不測の事態に備えよ。

 積極的な前進は不要。無理をせぬように、本隊との合流も考慮に入れよ。

 そう皆に伝えよ。』


 命令を伝えると、様々な宝石のついた指輪をはめた骨の指を振り、伝令たちを走らせる。


『なぜ、このような事に……』


 死の王クリストは、黄色の炎のような光を宿した眼窩で、あまりに動きの遅い物言わぬ自らの兵たちを眺める。

 動きが鈍いために、予定通りの進軍さえできない。そのために、トンネルの出口をふさぐ形になってしまい、続く兵士たちの渋滞を巻き起こしている。

 もし、この魔素の薄い状況で戦えば、スケルトンなど簡単に破壊され、ゾンビは抵抗もできないだろう。


『このままでは、ただの足手まといじゃのう……』


 聖王国を数百年にわたり守護し続ける死の王は、人間の頃のように天を仰いだ。


『このような時が来るとは……年はとりたくないものだ』


『……老師、いかがなさいます?』


 周りに控えるのは、死してなお魔道の深淵を探求しようと不死者となった弟子たち。


『仕方あるまい、あまり使いたくはなかったが我が子らに力を分け当たる。

 しかし……ふむ。お前たちは、後続の、弟子バルトロマイたちのもとへ行け。これを持ってな』


 ベルベットのローブの懐に、骨ばった手を入れると、握りこぶし大の宝珠を取り出す。


『これを例の魔法陣へ戻しておけ』


 弟子は、恭しく宝珠を受け取る。


『それと、ついでに、あの小僧……いや、ローベルト公爵閣下へ、現状を伝えてもらおうかの。あやつめ、無駄な結界を張っておるせいで用意の連絡魔道が通じぬでな』


『かしこまりました。老師』


 背を向ける弟子たちを見送ると、クリストはゆっくりとしか動けないアンデットの群れを見やる。


『さてさて、我が子たちに力を注いでやるかのう。これでいくらかマシになってくれるかのう』

今回部分と前回部分で、ようやく敵方の登場人物が出てきました!

死の王、死霊の王、不死者、リッチ、オーバーロード?

個人的に大好き!


**********


さて、本日もお読みいただき、ありがとうございました!


昨日、投稿初日に『26PT』を頂き、


「あれ?

 これ、ローファンタジーの日間100位が22ptだから、明日100位になれるかも!?!?!?」


 →クロトワ『うだつの上がらない平民出に、やっと巡ってきた幸運か。それとも破滅の罠か』by風の谷のナウシカ


とワクワクテカテカしてたら、


今日の100位は28ptという、ね。


………

……

  クロトワ『生きてたよ。短え夢だったなあ・・・』by風の谷のナウシカ

……

………


でもね。

本日は、3つのブックマークと、1つの評価を頂きました!


なろうの流行りじゃない芸風なのに、読んでいただき、ほんまにありがとうございます。

では、また明日もよろしくお願いいたします。

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