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皇太子夫妻の歪んだ結婚   作者: 夕鈴
おまけ

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14/33

皇太子夫妻の日常 1

一度完結しましたが、ありがたいことに、希望をいただいたので本編の後のお話を。


小国では仲睦まじい皇太子夫妻は有名だった。

皇太子妃のリーンは風邪のため寝込んでいた。

眠る妻の手を握り公務を放棄し傍にいると主張するルオをリーンの家臣達が部屋の外に力づくで連れ出す。リーンの家臣達は真面目なリーンがルオが公務を放棄し自分の傍にいれば心を痛めることを知っていた。その後の行動も・・。


「予定を変える。俺は一人にしないって約束した」


イナは声を荒げるルオを睨んだ。イナはルオに怒っていた。部屋から出て行ってほしいというリーンの願いを無視したルオの所為でリーンは睡眠薬で眠っている。ルオさえリーンの言う通りにすればリーンに睡眠薬はいらなかった。お腹の子にもリーンにも害のないものとはいえ、主を薬漬けにしたくなかった。そしてルオの行動を知ったリーンは体調不良を口に出さなくなる。ようやく体調の変化を正直に教えてくれるようになった主にイナは安心していた。


「姫様が殿下の愚行を知れば無理されます。今後は絶対に具合が悪いことも隠します。」

「殿下、ここにいると邪魔なんで公務に行ってください。」


ルオの護衛騎士は頭を抱える。リーンの家臣の優先順位はリーンで主の邪魔になるなら皇太子でも排除する。止められるリーンは眠っている。まずリーンがいればイナ達は私語はほとんど話さずルオに不敬な態度も絶対にとらない。リーンは自分の信頼する腹心のルオへの無礼を気付いていない。

風邪を引いた妻を心配したルオの暴走に巻き込まれた人物はもう一人いた。ただ彼だけはルオもリーンの家臣も耳を傾ける存在だった。


「リーンにこの程度はよくある。死なないよ。1週間も休めば治るだろう。時々様子を見てやるよ。」


リーンの兄王子はリーン専属医の証を授けられ、離宮の出入りを自由に許されていた。ルオが頻繁に寝込むリーンを心配し離宮に住んでほしいという懇願したが断られた。縛られることが嫌いな兄王子の妥協は定期的に様子を見に来ることだった。皇室の医務官よりも兄王子が優秀と知ったルオは毎日の診察は医務官にさせるが有事の際は兄王子を呼びに行く。医務官も荒れた皇太子の相手をしたくなかったので、兄王子に感謝していた。妃が倒れた時に皇太子から向けられる殺気や冷気に小国の医務官は耐えられない。

兄王子は妹の家臣達と睨み合う義弟に妹に免じてもう一言だけ告げることにした。ルオの予定は変更できるものではない。


「この商談は大事なものだろ?うまくいかなければうちの妹が動き出すよ」

「リーンをお願いします。」


ルオは他国の皇太子の結婚式に招待されていた。身重のリーンが同行できないと知って招待状を送った恋敵が憎かった。リーンは自身でお祝いに行き、交渉したかったが船旅の許可は出なかった。リーンを家臣とルオが宥めて、ルオが出席することになった。リーンの侍従がルオの傍に控えて交渉するが契約するのはルオである。未だにルオの外交の手腕は見習いレベルであり亀のような足並みの成長だった。

ルオは1週間も留守にしたくないが、諌められ、真っ赤な顔で眠る妻の顔を眺めて出かけることを決めた。手のかかる妹夫婦を見て兄王子は苦笑していたが素直な義弟は嫌いではなかった。


***


リーンは熱に魘されていたが気配を感じ、誰かが手を握ってくれているのがわかり目を覚ました。


「ルオ?」


ゆっくりと目を開けるとルオと同じ色の瞳が自分を見つめていた。目の前にいるのはルオでないことに気付き、起き上がろうとする肩を抑えられた。


「まだ辛いでしょ。眠ってていいのよ」


リーンは何度か瞬きをして、目の前にいる相手を確認したが、残念ながら見間違いではない。

まさか離宮に皇后陛下が足を運ぶとは思わなかった。ルオはリーンが寝込んだため、一時的に離宮の全権を皇帝に託し、皇帝はリーンのことを妻に任せた。


「申しわけありません。義母様」


リーンは平静を装い穏やかな笑みを浮かべる。


「一人は心細いでしょ。ゆっくり休んで。ついてるわ」


微笑まれても皇后の前では眠れない。


「義母様、風邪がうつりますので」

「私は丈夫なのよ。心配しないで」


リーンは頭が痛くなってきた。皇后が移り病の者を訪ねるのは大国ではありえない。ルオでさえも傍にいてほしくなかったので、1週間の視察はありがたかった。大事な御身に病を移すわけにはいかない。イナにも必要以上に近寄らないように命じていた。

もう一つ問題があった。

リーンは他人の気配があると眠れない。慈愛の笑みを浮かべる相手が自分に危害を加えるとは思えなくても慣れない気配は怖い。大国で暗殺の話はたくさん聞き、ふと義姉に聞かされた姑に殺された義娘の話が頭をよぎる。寝室は無防備な場所であり、袖口に隠された短剣で心臓を突き刺され血が飛び散るのを想像して、体がゾクリと寒気がしたが王族の仮面を被り必死に平静を装う。

大好きな夫の母親と思い込み、静かに目を閉じても頭は冴えて眠れない。夫が早く帰ってくることをリーンは願って目を閉じているしかできなかった。ずっと傍にいると言ってくれたルオを思い浮かべても隣にある気配も握られた手も恐怖でしかなかった。リーンは震えそうになる手を王族の仮面を被り平静を装うと震えが止まり、仮面が剥がれないように気合を入れて強く目を閉じた。


「ルオ」


皇后は魘されながら息子の名前を呼ぶ義娘を見て帰ってくるまで付き添うことを決めた。オルではなくルオの名前を呼び続けるリーンの手を握って優しく見つめていた。義娘は普段はルー様と呼んでいた。そういえばルオはリーンに恋していた。リーンの婚約者の選定の時にルオは寝込んでいた。オルが弟の恋を叶えるために入れ替わったことにようやく気付いた。夫が何も言わず、双子達は幸せそうなので気にしないことにした。二人が入れ替わるのを諌めるのはとうの昔に諦めていた。双子は頑固で親の言うことは聞かず、大きな問題もおこさないので見守ることにしていた。


皇后の訪問は離宮の全権を移譲されたためリーンの名では断れなかった。このまま付き添われるとリーンの体調が悪化するのは目に見えていた。何度かイナが皇后を引き離そうとしても無理だった。親心という名の理不尽な理屈を押し付けられ全く通じない。リーンのために穏便な礼節をつくした言葉で論破しても、おっとりと微笑む皇后には効果はない。

皇后陛下の仕事は視察以外はほぼリーンに引き継がれており、時間に余裕があることも運が悪かった。リーンにとっておっとりした皇后陛下は頼りにならずに、自分が仕事をしたほうが早かったので内務は全部回してもらっていた。皇后陛下の晩餐会等の接待や準備、孤児院の管理、慈善事業等はリーンには抜けも突っ込み所も多すぎた。ルオと宰相に自分のためを思うなら内務は全て回してほしいと頼んでいた。皇后の仕事を裏でリーンがしていることは宰相と皇帝、ルオしか知らない。皇后は突然視察ばかりになり、雑務が減ったことは気にしない。皇后は自分の仕事の管理をしている宰相を信頼していたので任されたことだけしていた。

小国が発展しなかった裏には野心のない現状維持に満足できる怠惰な皇族の存在があったことをリーンは知りたくなかった。このことはリーンの心の中に留めていた。幸いなことにリーンは最愛の夫も怠惰な皇族の性質を受け継いでいたことに気付いていなかった。


日に日にリーンの顔色がどんどん悪くなり、護衛騎士は唯一対処できる人物を呼びに向かった。

兄王子は研究所に護衛騎士が訪ねたのでため息をついた。事情を聞いて、当分は離宮に滞在することを決めた。拒否しても妹に心酔する護衛騎士が力づくで毎日連行することもわかっていた。


兄王子は離宮を訪ね、眠ったフリをしている妹と手を握っている皇后陛下に笑みを浮かべて挨拶をした。皇后陛下は診察すると話すと同席を希望した。兄王子は皇后にはリーンが幼女に見えているのかと思ってしまった。成人した女性は家族の診察でさえ立ち合いを恥じらうものである。


「申しわけありません。皇后陛下の前では治療することができません。結果は報告しますゆえ、退席を願います。」

「そうなの」


おっとり微笑んだ皇后陛下は退室した。兄王子は妹の目の下の隈を見て苦笑した。


「リーン、平気か?」


兄の声にリーンは目を開けて弱った顔で見つめた。


「お兄様、助けてください。全く眠れません。皇后陛下にお世話されるのは辛くて。」

「重篤で面会謝絶にするか?」

「是非お願いしたいですが、お兄様はいいんですか?」


いつもなら断るが今回は追い詰められていた。2日も付き添われ心身共に弱り果てていた。

お腹の子も心配だったので、はやく病を治したかった。そしてルオが帰ってくるまでに完治したかった。


「付き合ってやるよ。」

「ありがとうございます」


兄王子は病状が悪化し重篤な状態のため治療に専念するため面会謝絶と皇后陛下に伝えた。リーンから極秘にしてほしいと頼まれたことも。

中に入れるのはイナと兄王子だけだった。皇帝は兄王子が大国の研究者で優秀な医務官と紹介されていたため素直に要請を受け入れた。兄王子はリーン達の部屋で薬の調合するフリをして研究をはじめたので、薬草臭が離宮を包んでいた。

リーンは薬草の匂いに慣れていたので気にしなかった。

今までは皇后がいない時に、食事も全て吐き、隠れて薬湯を飲んでいた。

兄特製の薬湯を堂々と飲め怖い気配がない、なにより頼りになる兄が傍にいるおかげで安心して休めた。眠れない日が続いていたので、久しぶりに懐かしい匂いに包まれて安眠していた。

イナ達はリーンが安心して眠る様子にほっと息をついていた。


***


ルオは公務を終えて帰ると皇帝に呼ばれて絶句した。

危篤と知ればすぐに帰ってきた。報せのないことに怒りを覚えたが、後にすることにして離宮に駆けこみ、扉を開けるとベットの上で執務をしているリーンに固まった。


「ルオ、お帰りなさい」


リーンは固まる夫に笑いかけた。ルオはしばらくして動き出し1週間振りの妻を抱きしめた。


「書類が、」


ぐしゃぐしゃになった書類に慌てる妻に気が抜けたが抱きしめた体はいつもより熱かった。


「危篤って聞いて」


「重篤って伝えたはずだけど情報の行き違いかな・・。そんなに大事になってたんだ…」


笑っているリーンの感覚がズレていることを思い出した。重篤と聞いても慌てて帰ってきただろう。腕の中のリーンは1週間前よりは痩せたが顔色は良かった。

混乱しているルオにリーンはゆっくりと説明した。

ルオは皇后陛下の付き添いに緊張して休めなかったので兄の協力のもと治療に専念するために面会謝絶にしてもらったと。ルオは母親がリーンを気に入っていることは知っていたがずっと付き添おうとするとは思わなかった。


「帰ったか。俺は帰るよ。リーン、薬と薬湯は置いていくからしっかり飲めよ」


兄王子は抱き合う二人に苦笑していた。


「お兄様、ありがとうございました」

「義兄上、ありがとうございます。」

「しっかりしてくれ」


兄王子はリーンから離れて頭を下げるルオの肩を叩いて立ち去る。


「ルオ、どうだった?」


ルオはリーンに休んで欲しかった。


「うまくいったよ。執務は俺がやるからもう休んで」

「もう大丈夫だけど、完治するまでは訪ねてこないで。宮殿の部屋で過ごして」


笑顔で言われた言葉にルオは目を見張った。


「は?」

「移ったら大変。大事な御身だからもう少し自覚を持って。」

「嫌。一人にしないって約束しただろ?それに俺は頑丈だから」

「前に寝込んだでしょ?」


風邪の原因は、枝を手折ろうとして真冬の池に落ちたことはルオは墓まで持っていくつもりだった。リーンが体が弱いことを知ってからは自分の体調管理に気をつけ、離宮の家臣にも病を持ち込むなと命じていた。


「今は体調管理も気をつけてる。義兄上が傍にいて俺がいれないなんてずるいよ」


不満そうな顔をするルオにリーンは笑った。時々子供のように拗ねる姿は可愛かった。拗ねるルオを可愛いと思っているのはリーンだけだった。イナのずっと送られている冷たい視線に二人は気付かなかった。


「休ませるつもりが悪かった。無事で良かった」

「ううん。心配してくださってありがたいわ。でも起きた時に隣にいるのはルオがいい。」

「母上には悪いけど面会は控えてもらうよ。」


リーンはほっとして力の抜けた笑みを浮かべる。皇后の相手は体調が万全な時にしたかった。弱った時は隠している本音を伝えてしまいそうで怖かった。

ルオはリーンが母親を苦手にしていることを気づいていた。リーンは顔に出さず、うまく付き合っていた。ルオに気遣い母への不満は一度しか言わない。ルオはリーンの手から書類を取り、机に置いた。不思議そうな顔をするリーンを優しく抱きしめ寝かせることにした。うとうとしているリーンにイナが声を掛けた。


「姫様、先に薬湯と薬を飲んでから休んでください」


ルオはイナからコップを受け取りリーンに飲ませた。飲み終わったリーンはふんわり笑ってルオに体を預けて眠る。

ルオはリーンが眠ったので、そっとベッドを抜け出した。傍にいたくてもやるべきことがあった。

寝室を出ると冷気を出すリーンの家臣に囲まれた。


「離宮の全権を皇后陛下に委ねるなんてバカなんですか」

「殿下がいなくても問題ありません。姫様にお預けしたままでお願いします」

「何かあったら・・」

「どんなことも俺達で対処できます。今は王子殿下もいます。殿下の軽率な行動の所為で姫様は不眠になり食事も取れずに、御身を危険に晒されました。王子殿下が動いてくださったので回復したんです。」


リーンの話よりもよほど大変な状況だったらしい。リーンは緊張して疲れたと言っていた・・。ルオは自分が悪かったと反省して頭を下げた。


「悪かった。次は相談する」

「いつまでも次があるとは思わないでください」


リーンの妊娠により過保護になったのはルオだけではなかった。ルオの護衛騎士は主を助けることはできなかった。助けてくれるリーンは夢の世界である。必死に公務をこなし、急いで帰ってきたのに、家臣に必死に頭をさげる気の毒な幼馴染を見守ることしかできなかった。自分は穏やかな小国の生まれであることを感謝した。皇子を叱りつけ、皇子の力を頼りにしてないと言い切る家臣達が育った環境は過酷なものだっただろうと見当違いなことを思って見守っていた。

ルオがどんなに謝ってもイナ達は許さなかった。


***


リーンは目を覚ますと部屋に一人だったのでゆっくりと寝室を抜け出した。

最近はずっと兄が付き添っていたので無性に寂しくなった。とぼとぼと離宮を歩いていた。リーンは護衛騎士の気配は馴染んでいるため気づかない。護衛騎士は顔色の良くなったリーンの後ろを静かについて歩く。

ルオは寝室で寝ているはずのリーンを見かけたので慌てて追いかける。


「リーン、どうした?」


リーンはルオの服を掴んでじっと見つめた。ルオは何も言わないリーンを寝かせるためにリーンを抱き上げて、寝室に戻った。リーンは悩んでいた。ルオは忙しい。でも寂しかった。


「ルオ、イナの所に行く」

「え?」


ルオは別居中の恐ろしい記憶が蘇った。


「リーン、怒ってる?」

「ううん。ここで一人で寝るのは寂しいからイナと寝る。イナの部屋ならベットあるから」


大きい部屋に一人は寂しかった。

ルオはイナの部屋に住みついてしまわないか不安でたまらなかった。


「俺、もう休むよ」

「すぐいなくなる。」


リーンが一人で寝ることを嫌がるのは初めてだった。

ルオはリーンを抱き寄せた。


「どうした?」

「なんでもない」


首を横に振るリーンが話したくないことはわかった。リーンが話したくないことは、不安や不満がほとんどである。


「俺は一週間も会えなくて寂しかったよ。リーンは違った?」


リーンはルオの顔を見上げると甘い瞳に見つめられ、自分がおかしくなることがわかった。リーンは首を横に振る。自分の胸に体を預けて離さないリーンにゆっくりと声を掛ける。


「怖かった?」


「ごめんなさい。ルオのお母様なのに。怖くて。」


ルオはリーンが不眠だった話を思い出した。


「わかってても、駄目だった。ルオのお母様なのに、義姉様の話が頭から離れなくて」


リーンの姉姫達はルオの中では非常識の塊である。涙を流す妻の頭を撫でながら、話を聞いて言葉を失う。まさか義妹を心配するフリをして、侍女や姑に殺される話を教えているとは思わなかった。

生意気なリーンが姑に殺されたら民に迷惑がかかるから気を付けなさいだと?まず大国の姫を殺すなど恐ろしいことはできない。気に入らないだけで殺さない。リーンは兄王子が来るまでは恐怖と戦っていたとは…。リーンは姉姫達の悪意に気付いているかルオにはわからない。


「リーン、慣れない人間と一緒にいて緊張するのは当然だ。俺もリーンのお父様と一緒に眠れと言われたら絶対に怖くて眠れない。家族だからって無条件に信じなくていい。まずリーンは俺の兄が嫌いだろう?」


リーンはルオの言葉にきょとんとした。ルオの言うとおりオルのことは大嫌いで、ルオに好きになれと言われても無理だった。


「俺のことさえ嫌いにならなければ後はどうでもいいよ。公式の場さえうまくやってくれれば。」


リーンは真剣な顔で非常識なことを言うルオに笑う。


「どうしても、うちの家族が嫌なら一緒に逃げてもいいしな。」

「皇太子殿下の言葉ではありません」

「俺はリーンの夫でこの子の父親だ。皇太子は二の次だ。」


ルオは本気だったが、リーンは冗談だと思っていた。涙が止まり笑っているリーンを見ながら、夜は寝室に仕事を持ち込むことを決めた。残りの仕事は明日にして、一人寝を怖がる妻と一緒に眠ることにした。


「着替えてくるから待ってて」


リーンにじっと見つめられ、上着だけ脱いでそのままベッドに入る。ルオが部屋から出ていかないことに安心したリーンはルオに抱きついて目を閉じ眠りについた。


***

翌朝、リーンが目を開けるとルオが隣で眠っていた。

久々の夫の心臓の音に耳をすませ、寝顔を堪能し上機嫌だった。

ルオは目覚めていたけど、好きにさせる。

満足したリーンが離れていく腕を引き寄せ、抱きしめる。熱が下がっていることにほっと息をつき、不思議そうな顔に口づけを落とした。不意打ちに赤面している妻を見て幸せそうに笑っているルオはリーンの主食が薬湯になっている現実を知らなかった。

朝食の席で薬湯を美味しそうに飲んでいるリーンを見ながら、妻といずれ産まれる我が子の食育を頑張ろうと決意していた。

最期までお付き合いいただきありがとうございます。

不定期ですがしばらくお話が続きます。

誤字報告ありがとうございます。とても助かります。

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