ねえ、おれたちってつきあってる?
瞬くと、ラブホテルの自動清算機がチカチカと点滅していた。
45分2000円と高らかにアナウンスが流れるのを合図に、君はスタートダッシュでバスタブに湯を溜め始めた。
僕は服を着ているのが煩わしくなり、片袖を脱ぎながら脱衣所に向かう。
戻ってきた君も、もどかしそうにシャツのボタンに手を掛ける。
僕たちはお互いの服を脱がし合いながら、待ちきれないでキスをする。
途中、脱がすのが面倒になり、抱き締める。
抱き締めて、赴くままにキスをする。
キスをしながら、君は僕のベルトに手を掛けた。
☆☆☆☆☆☆☆
ベッドの上の君は別人だった。
いや、これが本性なのだろう。
そう思いながら、獣のように悶える君を見上げた。
無口、奥手、清楚ーーー。
そんな印象が似合うのに。
唐突に連絡が来て、手を引かれてやってくるのはラブホだった。
「ねえ」
放心状態の君の呼吸が整うのを待って呼び掛ける。
「俺たちって、付き合ってんのかな」
ずっと疑問に思っていたことをついに口に出してしまった。
好きな子に呼び出されるのはいつでも嬉しいものだ。
でも、会ってすぐに事に及び、済んだらバイバイばかりだと、さすがにわからなくなる。
おれは君にとっての何なのか。
答えを待っていると、セットしていたアラームが部屋に木霊した。
「時間…」
10分前の合図だった。
君は跳ね起きてシャワーに向かう。
追いかけて抱き締める。
今日こそは答えを聞きたかった。
迫る制限時間に、君は貫くような視線を返した。
「わからない」
わからないってーーー
そう言う前に、唇が塞がれた。
何も考えられなくなるほどの、激しいキス。
僕は求めるのを止め、応える事に専念せざるを得なかった。
☆☆☆☆☆☆☆
45分きっかりに精算を終え、僕たちは早足にホテルを出た。
「間に合ったね」
振り返った君は満足げに笑っていて、僕はまた、問うべき何かを見失ったのだった。