表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/67

第48話:これからのこと

「日にちが、今、決まりました」


 そのカメさんの言葉に、『何の?』と聞き返そうとして、僕は喉の奥で声を止めた。


 日にち───


「……それは、いつ?」

「9月1日の朝には、()()()()()()()


 その言葉に、僕は固まった。

 今日が8月29日。



 あとたった2日………。



 僕は空を仰ぐ。


 秋がチラリと見えた空は、ただ水で薄めた青が伸びていて、この空が青くて綺麗だと思えていたのは、みんながいたからなんだ───



 だからこそ、僕の足は固まった。

 漕ぎ出せなかった。



 どうしたらいいのか、わからない───



「カケルさん、」


 カメさんの声だ。


「カケルさんの時間はもちろん、私たちの時間も進みます。なので、過去は変わりません。今まで過ごしてきたことは変えられません。だからこそ、これからをあなたは変えられるのです。ほんの少しでも、変えていけるのです」


 カメさんの口がぱかりと開いて、それが笑顔に見える。




「──さ、カケルさん、あなたは今、何がしたいですか?」




 カメさんの言葉を頭の中で反芻した。

 僕がしたいこと。

 何をしたいか。



 何をしたいか───



「みんなと、今を楽しむっ!」



 僕はそう言い切ると、4回目の青信号を待ってペダルを踏みこんだ。


「さ、ハチコ、モップ、カンタ、クマチビ隊長たちに、カメさん、今日はもちろんだけど、明日と明後日も大忙しだよっ!」


 僕の声に、ハチコとモップが顔をほころばせ、カンタは漢らしくイケボで返事を、クマチビ隊長たちは可愛く敬礼をし、カメさんは大きく頷いてくれた。それを見て僕は笑って返事をし、勢いよく自転車を進ませる。


「ね、カメさん、このことは、世界中のカメさんも知ってるんでしょ?」

「いいえ、かなり限られた亀のみです。教授の亀など、もちろん知りません」

「そっか」

「リンさんや風間さん、みなさんに言うのですか?」


 僕は首を横に振る。


「何かをさせようとか、何かをしなくちゃってなっても困るから、みんなには秘密。だから、カンタもハチコたちもみぃーんな秘密だよ、このこと」


 言うと、真面目な顔で頷いてくれたが、どういう意味かわかっているんだろうか………

 わかっていなくてもいいか。


「ハチコとモップとは、ずっと意思疎通できてたしね」


 ちらりと見ると、ハチコとモップは自信ありげに返事をする。


「あたち、カケルと仲良しなの!」

「モップも! モップも!」

「仲良しさんだから、大丈夫だもんなっ」

「「うんっ」」



 ───この声が聞こえなくなるのが、あと2日。

 しっかり動画に撮っておかなきゃ………!

 なんか、矛盾してる?

 ……けど、いいことにしよ。



 僕は考えをまとめると、坂の勢いに任せてスピードを上げる。

 涼しくなり始めた風が気持ちよくって、ハチコとモップの声が可愛くって、カメさんの喜んでる顔が面白くって、カンタの毛並みが綺麗で、クマチビ隊長たちがカゴに張り付く姿が可愛くって、僕はペダルを必死に踏みつける。


 ちょっと前がぼやけて見えづらかったけど、腕でごしごしこすったら、すぐに目の前が明るくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ